草野虹

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THE ARCADE FIRE『The Suburbs』
VAMPIRE WEEKEND『Contra』
SLEIGH BELLS『Treats』
FOALS『Total Life Forever』
MYSTERY JETS『Serotonin』
9MM PARABELLUM BULLET『The Revolutonary』
ANDYMORI『ファンファーレと熱狂』
SCHOOL FOOD PUNISHMENT『Amp-reflection』
THE BACK HORN『アサイラム』
GIRLS DEAD MONSTER『Keep The Beats』*画像






 批評的な側面もある程度加味しつつ、自分がよく聴いた・心震えた・考えさせられたアルバムを、洋邦含め10枚選んだ。

 こうやって2010年のベスト10枚を決めてみると、この年が僕にとって大きなタームを含んだ年だったと感じる。洋楽に関してはそれまであまりアメリカのインディー・バンドに興味を示さない、UKロックが好きな人間だったのだが、2010年はアメリカのインディー・ロック勢が熱い! という宣伝に惹かれ、色々と聴いてみるとすっかりその虜になってしまった。その結果USインディーから3枚選ぶことにした。

 ヴァンパイア・ウィークエンドは「California English」、スレイ・ベルズは「Tell'em」、アーケイド・ファイアは「The Suburbs」がお気に入りの一曲。ヴァンパイア・ウィークエンドの『Contra』は、この時代のインディー・バンドとして優雅にアフロ・ポップとワールド・ミュージックを奏で、インディー精神やDIY精神の大元になった80'sニューウェーヴ的な「自由な発想」が市民権を得た姿だ、と大げさに書きたくなるほどに聴いた。アーケイド・ファイア『The Suburbs』の彼ららしいノスタルジアやあの喪失感は、歌詞をよく読んでもいない郊外に住む僕の心を鮮やかに捉えたアルバムだった。多種にのぼる楽器であのノスタルジアを突き詰めんとする音像が、あまりにも僕に響いて仕方なかった。

 ディアハンターやザ・ドラムスのような、暗鬱さや喪失感が蠢く内省的世界観に逃避・夢想・耽美さ・甘美さといった要素を詰め込んだのが2010年のUSインディー・バンドの特徴的な点だろう。だが、スレイ・ベルズのアッパーかつ図々しいサウンドはそういった奴らに対して「メソメソしてんじゃねーぞ!」と言ってるように思えて仕方がないし、たった一歩で胸倉を掴んでくるようなヒリヒリしている、この緊張感と爆発力こそロックだ! と思った。
 
 UKからは2組、フォールズとミステリー・ジェッツのアルバムを選んだ。某巨大CD店の視聴機で聴いた新人UKバンドが僕の胸にあまり響かず、「ジャケットが良かったから聴いてみた」この2枚がかなり良かった。

 ミステリー・ジェッツのアルバム、しっかりとしたバンド演奏に、チープなシンセの音が煌びやかさを感じさせ、肩の力が抜けた気楽さが加わり、ちょっとセンチメンタルなメロディーが高らかに響く。こう書くと80年代っぽいサウンドと思われるけど、どの曲もバンド・サウンドを意識していてキッチュというほどじゃないし。あくまでメロディーに重きを置かれたアルバム。そんなソングライティングの良さからか、ちょっとだけオアシスっぽさを感じた。フォールズはアルバム・ジャケット通り、海に浮かんでたゆたうようなボーカルとメロディー・ラインがすごく印象的で、それを掴みにかかるようなバンド・アンサンブルと楽器の音色も心地よい。ミステリー・ジェッツとフォールズ、UKバンドらしくメロディーの良さを売りにしたバンドが心に残った。

 日本のバンドからは4枚を選んだ。9mm Parabellum Bullet、andymori、School Food Punishment、The Back Horn、文字通り2010年によく聴いた邦楽ロックだ。

 9mm Parabellum Bulletのアルバム『Revolutionary』は今までの彼ららしく、パンクやメタルがハードコアになったサウンドと歌謡曲的なメロディーが組み合わさったアルバムだ。しかし今までとは違い、おそろしく音が整理されていてしっかりと各パート(特にボーカル)が聴けるアルバムだ。そして自分達が「ロック」を奏でる人間だと言わんばかりに、テレビによく出演しているし、この国の人間の心に革命を起こさんとしている。School Food Punishmentはこのアルバムでメジャー・デビューしたとは思えないほどの完成度で、ダウナーな失望感から抜け出してキラキラとした希望へと走り出す、その瞬間を瑞々しくも鮮やかに描いたアルバムだ。The Back Hornのアルバムは、長い作曲期間で作られたこともあってサウンド・アプローチが多彩で、生死を深く見つめ肯定的なメッセージを放つ彼らの歌詞を、より深淵さを感じさせてくれる。andymoriはフォークのような軽快さをサウンドにもボーカルにも感じたし、何より1曲目の「1984」がアーケイド・ファイアの「The Suburbs」とダブって聴こえたときは、日本にも郊外に住む人間の哀愁を感じさせるバンドが出てきたのかとすごく感動してしまった。

 そして最後の1枚には、ある種のカウンターとしてGirl Dead Monsterのアルバムを選んだ。知っている人もいるだろうが、このバンドは地上波アニメ番組『Angel Beats』の中に登場するロック・バンドだ。アニメの内容は「箱庭世界からの脱却」というテーゼが内包されたものなのだが、このアルバムも「脱却」や「希望」を根幹にしたメッセージ性があり、J-Pop的な初々しくも分かりやすいロック・ソングが多い。同時期に「けいおん!!」の楽曲が人気も博し、そちらはアニメらしい「楽天性」や「非現実性」を売りにしていたのが人気の理由なのだが、それとは真反対に近いテーゼを持ったGirls Dead Monsterのアルバムが同じように売れたのは、逆説的に「希望」や「脱却」といったものが求められているという答えじゃないだろうか。

 この邦楽から選んだ5枚のアルバムは、実のところ「現実との戦い」を下地にしたアルバムだと思う。USインディー勢であるディアハンターやザ・ドラムスやベスト・コーストなどは、自分にとって新しく感じて心地よく聴いていたが、彼らのおかげで自分が好きなのは「力強さ」や「希望」を見失わずに奏でてくれる音楽だと再認識させてくれた、そんな2010年だった。

(草野虹)
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