掛川秀之

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MGMT『Congratulations』
THE NATIONAL『High Violet』
THE FALL『Your Future Our Clutter』
ARCADE FIRE『The Suburbs』
VAMPIRE WEEKEND『Contra』
WINTERSLEEP『New Inheritors』*画像
ORIGINAL SOUNDTRACK『Rubber』
SWANS『My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky』
BRANDON FLOWERS『Flamingo』
BEACH HOUSE『Teen Dream』
 





 明けましておめでとうございます。2010年は色々目まぐるしく動いた割には、最終的には残っているモノが少なかった年でした...。志半ばにして断念せざるを得なかった物事、インターネットの怖さ、匿名性故の心無い行為に悩まされたりもしたりして...。

 口を酸っぱくして警鐘を鳴らし続けた、YouTubeやマイスペの台頭が著しくて自分と時代のズレを感じることも多かったですね。両者共に非常に便利だけど、試聴を超えた使い方=見た・聴いただけでまるで手に入れたかのように錯覚してる人々が多くて...。

「僕:そうそう、アレえりゃー良かったよね?」
「彼:うん、スゲー良かったね!大好き。」
「僕:7〜8曲目の流れとかサイコーだった」
「彼:え?」
「僕:アルバムの」
「彼:あ、マイスペとYoutubeで聴いたんだよ。ブログに貼ってたから。めちゃ好き!」
「僕:ふうん...」

 こんなやり取りが多く発生中なのは音楽業界の危険要素...。試聴して良かったら買えよ! もっとアルバム聴けよ! ジャケットとか手にして、歌詞も書いてあったら読めよ! がんばって聴き取りしてアーティストからのメッセージを理解しようと努力しようよ...。これじゃ益々CD買う人は減るよなあ...。これが時代ってもんですか? でも僕はパッケージ・ソフトを買い続けるのです。最低10回は聴いて良し悪し(てか好き嫌い)を判断するという信念(スルメアルバムとか1回で聴いて判断出来るの? マイスペで分かるの?)も一笑に付されて否定されたりして。一般世間と自身の音楽観のズレを痛感して、そういったものが蔓延する音楽界自体に対して不信状態な時期もありましたね、実際。

 ですが、こうやって10枚を選んでみると、色々と収穫&嬉しい出会いがあったと実感できるから不思議ですね。やっぱり、好きな音楽にだけは心を開いていきたいものです。こんな小さな幸せを音楽から得ながら、少しずつ前進していきたいものです。Sometimes Soon She Said!
 
 MGMTは、デジタル・ポップからロック・バンドへと格段に進化を見せましたね。あの2008年サマーソニック、拙いバンド編成でのステージングの意味が分かった気がする。フリッドマン・マジックも凄かったけど、ソニック・ブーム・マジックもやはり凄し。若手が成長する一方で、苦節10年の齢40近くのオッサン集団が遂に大きく開花した! と言えばやはり、美しくドラマティックでダウナーで緻密なサウンド、切なくも温かくメロディと渋みを増した男っぽいヴォイスの具合が堪らなく愛しかったザ・ナショナル! こんな世知辛い世の中ですが、セールス的にも成功した様で嬉しい驚きでした! 結構USやUKはモノホンが受け入れられる良い方向に進んできた気がします。でも日本はやはりイマイチ(残念)。自分内にあるであろう「Little Faith」を糧にしながら生きていこうと再確認した重要作でしたね。更に長い長い30年以上のキャリア、通算28枚目のオリジナル・アルバムをぶちまけたのはザ・フォール。細かい事を気にして落ち込んだりした時、そんな事は意に介さずにひたすら俺道を突き進むマーク・Eの姿は、は素晴らしくヨレてヒネていながらも堪らなく前向きで、パーソナルな助けになりました。"関係ねぇだよ、俺は俺"的なスタンスが共感の嵐!『Bend Sinister』 〜『The Frenz Experiment』〜『I Am Kurious Oranj 』期の粗さとストイックなクールネスとニヒルな毒を吐き出しつつ、バンドの"イマ"を感じさせる奇跡のアルバムでした。本当にスゲーんだけど...絶対過少評価されてるって!

 説明不要のアーケイド・ファイアは、バンドを取り巻く状況が変わっても自然体なスタンスは変えずに、常に疑問符の皆無な100%共感の嵐的なサウンドを作り続けてます。彼らのアメリカでの躍進は、地味なれど独自の道を行く後輩(いや、先輩もかなり...)バンド達の道標となっていくのでしょう。彼らの支持率は変わりませんしね。ギャング・オブ・フォーあたりのポスト・パンクからの影響をはじめて表出した瞬間は感動モノでした! 同じくヴァンパイア・ウィークエンドも共感の嵐! 2010年のベスト・ライヴ・アクト(フジロックの方)はこの人たち! ライヴの楽しさをそのまま詰め込んだかのようなアルバムは前作とは比較にならないくらい良い! アフロとかトロピカリズムな部分が取り沙汰されますが、バンド・サウンドの根っこにある天然なロックでポップでパンクな部分が好き! 祝全米大ヒット!
 
 もっともっと注目して欲しいのが、カナダの5人組ウィンタースリープだ! だ! だ! 通算4作目なんだけど過小評価されすぎ。オルタナ世代の残響音? 1990年代アメリカン・オルタナティヴを彷彿とさせるダークでザラっとしたサウンドとヴォーカル(マイケル・スタイプやエド・コワルチック似!?)がダウン・トゥ・デイトなのか、不遇な扱いを受けているバンドですが、大傑作だった前作を超えるドラマチックな展開と深みを持った壮大なサウンドが痛切なまでに胸を打つ大傑作! USオルタナとUKニュー・ウェイヴの影響を咀嚼したオリジナルなネオ・ネオ・ポスト・パンク〜ネオ・オルタナティヴ・サウンドが素晴らしいのです。えらく感動しちゃったので。続いて最高の嬉しい驚き&拾いモノは、全盛期に比べるとかなり落ち着いた感のあるフレンチ・エレクトロからの痛恨の1撃が。タイヤが人を襲うという内容(らしい)のネオ・カルト映画『Rubber』のサウンドトラックは、ミスター・オワゾ&ジャスティスのギャスパールによるものですが、お約束&お邪魔になりそなジャスティス系サウンドは1曲に抑え、チープな鍵盤楽器と不穏なサンプリングによるクールでキッチュな音響作品集! 1970年代カルトっぽい雰囲気もイイですが、架空のサントラとしても機能する位に映像的な雰囲気を持った傑作でした。

 一方、実に14年ぶりにSwans Are Not Deadとばかりに雄々しく復活したNYアンダーグラウンド暗黒大魔王=スワンズが再降臨! 暗黒で重厚な世界観は活かしつつ、時折顔を出す咆哮の如きエモーションが深い。ジャーボーの不参加は残念至極! 彼女のコーラスがあったら...(それは言わないお約束?)。来日公演をすっぽかしまくるザ・キラーズのブランドンのソロは、あらゆるところで無視されていますが、バンドと同様のベクトルを感じる、バンドの活動がしたくても出来ない事情のジレンマと、溢れ出る彼の才能の受け皿として機能するであろう作品で、これ重要。オクラ入りにしないで、世に出た事を喜ぼうじゃないか! 未来はここにあるのだから。今度は本当に来日してね! んで、イマイチピンと来なかったドリーム・ポップって言葉がはじめて完結したのがビーチ・ハウス。繊細で幻想的、映像的で夢見心地な、正にドリミーィなサイデリック・ポップが味わい深し。快作ですね!
 
 次点は新鮮な驚きを与えてくれたクロコダイルズとベスト・コースト、フリッドマン・マジックと良曲が驚きの味わいだったブランドン・ボイドのソロ、貫禄のスプーン、開花間近? のレ・サヴィ・ファヴ、ウォーペイント、ソフト・パック、ヴァイオレンズあたりでした。長くなっちゃいましたかね?

(掛川秀之)

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