フランキー・アンド・ザ・ハートストリングス『ハンガー』(Pop Sex / Yoshimoto R and C)

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frankie.jpg 彼らの何が素晴らしいって、まずはEPからジャケットに使い続けているモノクロの写真。今回はいかにもやんちゃそうなガキどもがカメラに向かって無邪気な笑顔を浮かべたり、ぜんぜん無邪気じゃない笑顔を浮かべたり、憂いのある表情を浮かべたりしている。これを見ただけで「2011年は楽しくなりそうだ」という気がしてくる。2010年後半に彼らがデビューして、イギリスではいよいよバンド・サウンドの復権が叫ばれるようになった。といってもヴァクシーンズやブラザーのようなラッディズムとはすこし違って、彼らの場合(特にヴォーカルのフランキーは)根はノーブルだ。フランキーのステージでの動きを見て真っ先に連想したのはモリッシーだが、週末のパブで野朗が大合唱していそうな曲の大衆性もまた、彼らを積極的にプッシュしたくなる理由のひとつである。
 
 そしてリリック。もう女々しくて、ウジウジしてて、後悔してて、開き直ってて、ほんま最高。自分から別れを切り出した相手に向かって、「なぜそんなことを言ったのか、自分でも分からない。君を取り戻したい」とか。恋人との倦怠期に「これはただの肉欲なのか」とか。「お前が泣こうがわめこうが、ちっとも気にならない」とか。全部同じ1人の相手に向けられているのではないか、というほどリアルで、勝手にセンチメンタルで、情けない。だって、どれもこれも恋愛においてぜったいに優位に立てない男の話でしょ。恋人がいないとまともに生きて行けない究極の寂しがり屋でしょ。それを男4人のバンドで思いっきり歌い上げることで、また人生の同じところをグルグルまわるんでしょ。
 
 今回リリースされたファースト・フル・アルバム「Hunger」はEPからとくにサウンド面での変化はなく、いかにも彼ららしい強烈なフックを持った「ど」キャッチーな楽曲が並ぶ。構成もメロディの運び方も、どうやら彼らはぶれない芯をひとつすでに持っているようだ。今回もプロデューサーは元オレンジ・ジュースのエドウィン・コリンズ。ちなみに「Want You Back」のアレンジが変わって、もっと名曲になった(「Ungrateful」を除く既発曲はすべて再レコーディングされている)は全てアルバム用に再レコーディング)。良いアルバムだ。空前のリリース・ラッシュですこし埋もれてしまった感のあるこのアルバムだけど、たぶん7作目くらいで「相変わらず良いね」と言われるようなバンドになると思う。

(長畑宏明)

*昨年来日時のインタヴューはこちらに掲載されています。【編集部追記】

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