February 2011アーカイブ

たびけん

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VAMPIRE WEEKEND『CONTRA』
VIOLENS『Amoral』
THE RADIO DEPT.『Clinging To A Scheme』
LETTING UP DESPITE GREAT FAULTS『Letting Up Despite Great Faults』
TWO DOOR CINEMA CLUB『Tourist History』
THE NOVEMBERS『Misstopia』
BLOODTHIRSTY BUTCHERS『NO ALBAM 無題』
SUPERCHUNK『MAJESTY SHREDDING』*画像
ASIAN KUNG-FU GENERATION『マジックディスク』
ANDYMORI『ファンファーレと熱狂』





 2010年は自分にとっては音楽をよく聴いた年であり、多くの素晴らしい音楽に出会えた年でした。

 まず、ブルックリンを中心としたUSインディー・シーンの盛り上がりは、新しい音楽に触れる切っ掛けとなりました。アニマル・コレクティヴ、ヴァンパイア・ウィークエンドらに続き、新世紀のサイケデリアを鳴らすもの、音楽の楽しさをポップ・ソングとして自然体で届けてくれるもの、アフロビートやトロピカルなサウンドを聴かせるもの、60s的サーフ・ポップに回帰するものなど多様な音楽が現れました。すべてを追えているわけではなく、聴いたのはごくわずかですが、80sの音楽を解釈したポップ・ミュージックを届けてくれたヴァイオレンズやマット&キムには非常に好感を覚えました。

 そして、数年前には「死んだジャンル」として揶揄すらされていた「シューゲイザー」を自らの音楽的要素として、また武器として参照しているバンドも活発な動きを見せてくれています。ディアハンターやノー・エイジが新作をドロップしましたが、個人的にはザ・レディオ・デプトとレッティング・アップ・デスパイト・グレート・フォールツのサウンドが本当に心地よく感じ、よく聴きました。

 このブルックリン発の音楽や、シューゲイザー・リバイバル的な音は、結局は何年後かには流行り・一時の潮流として片付けられるかもしれませんし、どうなるかまだまだ未知数です。しかし、00年代の海外ロック・シーンに上手く乗りきれなかった自分としては、非常に「当たり」が多い新鮮で刺激的なシーンだと感じているので、この辺りのインディー・ロックを2011年も追っていきたいと思っています。

 しかしですが、この爆発的なインディー・ロック隆盛の中で散見される音楽として、古き良きロック/ポップスへ回帰しただただ過去の音楽世界に逃避してしまう音、チルアウト的な音、ある意味享楽的で、だらだらと気持ち良さに浸るだけの音楽も見受けられたかと思います(そういうのも好きですが)。一時期、そんなサウンドに飽き気味だった頃、90sのオルタナティヴ・ロックの血を残し、しっかりとした骨格のあるサウンドで感傷を振り切りながらかき鳴らすギター・ロック・バンドが良作を次々と出したことに、ロック・ファンの血がたぎったことも事実であります。

 ノーベンバーズ(The Novembers)は若いながらもニルヴァーナやスマパン、マイブラやライドなどの音を飲み込んだ傑作を上梓し、ブラッドサースティー・ブッチャーズはベテランらしい貫禄っぷりと、ある意味ベテランらしからぬ衝動性に満ちたオルタナ・サウンドを見せてくれたし、スーパーチャンクも、オルタナテイブでキャリアの長いバンドだからこそできる切なくキレのある演奏で、爽快なパワーポップアルバムを届けてくれました。あとはリストには挙げていませんがヴァセリンズも見事な21年ぶりの2NDアルバム(!)を作ってくれました。2010年は自分が(最早意味をなさなくなった言葉だとしても)「オルタナティヴ・ロック」が好きで、骨格のある「ギター・ロック」(そしてそこにメランコリアが内包されていればなお良い)が好きなのだと改めて認識させられた年でもありました。

 あと特筆にすべきことは、この繰り返しの生活、ただ同じことの繰り返しであるクソみたいな日常に、ほんの少しだけ光を垂らしてくれる、生活に寄り添った音楽を自分は求めているのだなと感じたことです。

 マクロの視点で言えば「社会」や「世界」、ミクロの視点で言えば「生活」「日常」。両者とも迷路のように絡まり、先は見えず、新鮮な予見も展望もない。そんな今現在から目をそむけず、それでもこの腐りきった場所で生きていく。何もない日常の繰り返しを、ささやかな喜びや美しさに思い馳せることでちょっぴり肯定する。そんな音楽の代表格はアジアン・カンフー・ジェネレーションの『マジックディスク』とandymoriの『ファンファーレと熱狂』だったかなと思います。僕らの生活の中には、常に音楽が在った。だから今も此処に居るし、これからもたぶんそう。そんなことを教えてくれた作品でした。

 テン年代のスタートとしては、平凡ないちロックリスナーとして(ツイッターでの情報交換などもあり)かなり良いスタートを切った、音楽にたくさん触れた一年でした。これがいつまで続くかはわかりませんけど、生活に寄り添う音楽をこれからも見つけていきたいなと。

(たびけん)
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ジンボユウキ

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まつきあゆむ『1億年レコード』*画像
放課後ティータイム『放課後ティータイムⅡ』
KIMONOS『Kimonos』
七尾旅人『Billion Voices』
トクマルシューゴ『ポート・エントロピー』
THE NOVEMBERS『Misstopia』
WASHED OUT『Life Of Leisure』
レミ街『MusicaMusica』
TEASI『Sando』
雅 -MIYAVI-『What's My Name?』






 私的なベストアルバム10選を、と書かれていたので「きっとみなさんこんなアルバムを選ぶだろうな」というあれこれを考えずに選んだら9枚が邦楽になってしまった。ライヴに関してはペイヴメント、ウィルコ、フレーミング・リップス、ルーファス・ウェインライトにヴァン・ダイク・パークスといったUSものばっかり行ってました。

 思い返せば、2009年は『Remix』や『Studio Voice』の休刊に代表されるような、終わりのムードが色濃く覆っていたような気がする。それぞれの活動の、なんらかの事情による終焉(の連続)を、まるで世界の終わりのように感じてしまうこと。あるいは、そう感じたくなってしまうこと。むりやり社会情勢にこじつけていえば、「失われた10年」がいつの間にか「失われた20年」に更新されてしまったような、国全体の無意識が終わりをゆるやかに志向し続ける、ある種の破滅願望のようなものを抱いているからかもしれない。

 とはいえ"終わりの終わり"なんてそう簡単にやってきてくれるはずもなく、打って変わって2010年は覚えているだけでも
・まつきあゆむが『1億年レコード』のリリースを直接配信のみというスタンスで行い成功を収める
・dommune開局
・ネットレーベルのマルチネレコーズがコンピレーションCD『MP3 Killed The CD Star』をリリース
・『nau』や『DIY Stars』といったアーティスト寄りの配信サイトが開設
といった"何かのはじまり"を予感させるトピックが多かった。上で挙げたアルバムの半分ぐらいは関係ない状況論をこれから少し長く続けるけれど、例えばこれまで多くて数百人規模の会場でライヴを行っていた七尾旅人がdommuneに出演すると、2000人以上の観客がそれを観ている。今となっては常識レベルの話ではあるけれど、それが日常になるなんて去年までは思いもよらなかったし、重要なトピックかつ希望として受け入れられていたことは記録として記しておきたいのである。

 これらはすべてインターネットを媒介とした活動であり、インディ音楽シーンでも(であるからこそ?)利用可能なあらゆるリソースを駆使して活動を行う、総力戦のような状況に移行したのではないだろうか。相変わらず既存メディアでは、テレビをつければAKB48やK-Popグループが映り、雑誌を開けば神聖かまってちゃんのインタビューが載っているような、いつもの焼き畑農業のような光景があった。けれどひとたびインターネットに接続すれば、今日もどこかでTwitter上の討論やUstream・ニコニコ生放送の配信が飛び交い、リアル現場でもおもしろいトークイベントやライヴも開催されている。それは多様性の増幅というより情報過多な傾向がますますヒートアップしたといえなくもない。あるいは小さなタコツボが増えただけだよ、とあなたは捉えているかもしれない。というかみなさんは一体どうやってこの状況と日常生活の折り合いをつけているんだろうか。365日朝から晩までおもしろイベント尽くしで心身共にへとへとになってませんか?ぼくは行けない・見られないのが悔しすぎるので、自分に入ってくる情報を少しシャットダウンするきらいもありました。どうせ後で誰かがtsudaりをtogetterに載せておいてくれてるでしょ? みたいな。うーむ。実際に雑誌を読む、リアル現場に行くといった機会が激減した1年だったような気もする。

 多様性の増幅といえば、2010年はアニメ『けいおん!!』の劇中歌アルバムとしてスーパーカー『スリーアウトチェンジ』以来と言っても過言ではないほどみずみずしいギター・ポップ作品をリリースした放課後ティータイムや、54-71のドラマーであるBOBOをサポートに招き、ブランキー・ジェット・シティを彷彿とさせるロックアルバムを作り上げた雅-MIYAVI-がとてもよかった。アニメソングとビジュアル系。未だに音楽雑誌、あるいは"音楽ファン"の半分ぐらいから無視され続けるこの2ジャンルにおいて、既存のポップス・ロックと売上だけでなく内容でも十二分に渡りあえる作品が出現した、そして今後も出現するであろうことは、もっと意識されてもいいんじゃないか。歓迎すべき変革ないしはじまりは、既に知らない場所で起こっているのかもしれない。これは2010年に限った話ではないけど、少なくとも「レディ・ガガに勝てない日本のロック」(『Snoozer』2010年6月号)だなんてグチをこぼしている場合ではない。ぼくらがその気になれば、いつだって・どこだってそれにアクセスできる。

 また、ZEPP東京の巨大スクリーンに投影された、初音ミクによるライヴが3000人を熱狂させた「Project DIVA presents 初音ミク・ソロコンサート~こんばんは、初音ミクです。~」や、渋谷のライヴハウス「WWW」のこけら落とし公演であり、スペースシャワーTV、dommune、ニコニコ生放送で同時中継された神聖かまってちゃんのライヴなど、リアルとネットの空間差がより曖昧になるパフォーマンス手法が確立してきたのもこの年のできごとだ。移り気なリスナーの注目を集め続けるために、彼(女)らはあらゆるメディア上に登場し、その痕跡を残していく。正直なところ、追いかけるぼくらもたいへんである。けれど、やっぱりそれは喜ぶべきことだ。

 2010年を振り返ってみると、この文章がそうであったように、特定のコンテンツ=作品よりも、文脈=状況であるコンテキストについて語る・語られることが多かったようにおもう。めまぐるしく移り変わる文脈・状況を押さえるのは大事だけれど、それをつくりだす個々の作品論がより重要になる(状況を読み解くのではなく、文脈をつくる側に立つということ)のではないか。すでに色々な人が指摘していることではあるけれど、それができなかった自分への課題設定として。

 というわけで最後に、上で触れられなかったアルバム評を。dip、ブラッドサースティブッチャーズの流れを組む正統派オルタナ・ギター・バンド、ノーベンバーズ(THE NOVEMBERS)はUK/USオルタナ要素の個性的なミックスぶりがさらに進化を遂げてディアハンターに対抗できる国内バンドは彼らだけでしょとおもうし、トクマルシューゴは次回作で一体なにするんすかと余計な心配をしたくなるほどのキャリア最高傑作を生み出し、空気公団 meets ハー・スペース・ホリデイとでもいうべきレミ街や、時間軸を自在にあやつりますます無音の比率が増える魔術師集団、TEASIといった地方インディ勢も目が離せない。キモノズはニューウェーブの硬質ビートと日本語・英語のちゃんぽん歌詞が織りなす無国籍感がすばらしかったし、七尾旅人のポップスへの帰還とポップアイコンたらんとする姿勢を自ら背負いこもうとする覚悟は感動的だったし、年末によく聴いたGlo-Fi系から選んだウォッシュト・アウトは、音楽という芸術表現はほとんど"半径5メートルのセカイ"からの想像力でしか強度を持ち得ないという個人的な諦めというか「それは音楽でなくてはいけないのだろうか?」という疑問もあり、退行と言われようが引きこもりと言われようが「あえて抵抗しない」(ゆらゆら帝国)戦術で踊らせてくれること、またその場所を提供してくれることが第一の役割だとぼくは考えているので肯定したい。表現手法は音楽だけではないし、膨大な選択肢からアーティストたちが何を放つのか。"総力戦時代"の幕開けが2010年だったとすれば、今年はそのリアクション、つまり個別の(作品)論が問われる年になるとおもう。

 そんなこんなで、今年も良い音楽にたくさん出会えますように!

(ジンボユウキ)
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財津奈保子

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JONSI『Go』
RUFUS WAINWRIGHT『All Days Are Nights: Songs For Lulu』
PASCAL PINON『Pascal Pinon』
DEERHUNTER『Halcyon Digest』
FANFARLO『Reservoir』
JEFRE CANTU-LEDESMA『Love Is A Stream』*画像
GHOST SOCIETY『The Back Of His Hands,Then The Palms』
OF MONTREAL『False Priest』
SEA BEAR「While The Fire Die」EP
THE CORAL『Butterfly House』






 11年前2000年問題で世間が騒いでいた当時、私はバイトで生計を建てながら高校に通う貧乏な17歳でした。10代前半からMTVを毎日チェックし、CDショップに通い詰め、盛んだった90年代ミュージック・シーンをリアルに体感したと思います。その記憶が強すぎるのと、10代後半からはバイト仕事三昧、20歳に結婚そのまま出産、私生活が慌ただしく過ぎゆく中でずっと好きな90年代の音楽を聞いていました。この私の止まった時間を進めてくれたのは、2008年2月のビョーク12年ぶり単独来日公演だと思います。1人目の離乳が少しづつ始まり、少しだけなら離れられる事と、会場がわりかし近隣だった為、私は背中を押されるように足を運んだのですが、生で聞くビョークの歌声は圧巻で、今まで何度も聞いてるのに、初めて聞いた歌の様な感覚に陥って、今この瞬間にしかない歌声なんだ、と思い、アーティストと同じ時を生きてる事にすごく感銘を受けました。一生でどれだけこんな体験ができるのだろう? と思い改り、その後細々と音楽雑誌とCDショップを頼りに、止まった時間の回収作業に入り始めました。インターネットには、若干アンチテーゼな気分だったのですが、ベックの『Record Club』が聞きたかったので去年からパソコンにも挑戦しています。

 パソコンを始めると共にTwitterなんかも意味も分からないまま、始めてみたけど、私の世界は確実に広がったなぁ、と恩恵を感じます。90年代に自分が読んでた記事のライターさんとやりとりなんて当時の私からすると夢の様な事だし、US、UK以外の国や民族音楽の発掘は、まだまだこれからも素晴らしい音楽に出会える喜びを示唆している、と思っています。インターネットに恩恵を受け可能性も信じつつ、ショップに足を運び、ジャケ買いしたりする作業がCDを買う時の楽しみの一つでもある私は、ネットで音楽を買うのは最小限にして、リストアップしてからショップで買います。一曲だけで購入する事も可能ですが、アルバムの曲順や流れも大事だと思うので、CDという媒体もこれからも重要であって欲しいなぁ、と願います。

 そして事象もなにも関係なしで、CDで購入した中から選んだ完全に個人的ベストな10枚です。ヨンシー(Jonsi)とルーファスについては一生追っていきたいアクトです。シガー・ロスというバンドも胎児が育っていくように成長しているのかなぁ、と感じていましたが、このソロアルバムでは生きる事の哀しみも感じつつ、それ以上に生きる事の歓びを感じます。聞いてるととても元気になります。ドレスを纏って歌うルーファスの公演一部はちょっとしんどいなぁ...と正直思ったものの、二部ではぺちゃくちゃおしゃべりしながら軽やかに歌いあげるルーファスに、やっぱりこの人のしなやかな強さやソングライティングの美しさは好きだなぁ、と思いました。そしてTwitterから知ったパスカル・ピノン(Pascal Pinon)。私が知る限りでは国内盤は出てないと思うのですが、とにかくメロディが素晴らしいです。アレンジも素朴ですが、温かみがあって生活のBGMとしても寄り添ってくれる音楽です。賛否両論あったと思うディアハンターの今作ですが、確かに暗い、でも向いている方向は前だと思うのです。私は昨年体調を崩す事が多く、その時にこのアルバムを聞いて救われていました。諦観した気分になれるからかも知れません。今は4ADのライブが楽しみです!

 ファンファーロ(Fanfarlo)はずっと気になっていてサマソニで初見しました。シンフォニックかと思いきや、エレポップっぽかったり、メンバーが曲ごとにマルチに楽器を使いこなしていくのも新鮮でこのバンドの世界観が出来ていたと思います。うっとりしながら身体を揺らしている人がいたのが印象的です。ジャンルで一括りにするのが難しいとは思いますが、雑多な雰囲気ではありません。国内盤はメンバーによる曲ごとの解説なんかも載っていて、歌詞もミステリアスで面白いのでお薦めです。ジェフリー・キャントゥ=レデスマ(Jefre Cantu-Ledesma)『Love Is Stream』は実は昨日ショップで試聴して心奪われたアルバムです。Twitterで年末に呟いた中には当然入ってなかったのですが、これからどんどん聞くであろうと思いますし、クレジットが2010だったので割り込ませてここに入れました。ジャケットやタイトルからレジェント的アルバム『Loveless』を連想して聞いてみたら、やっぱり全体的にシューゲイザーでした。オマージュなんでしょうか? ショップではニューミュージック他、の棚にあって確かにシガー・ロスにも通じるアンビエントでもあると思います。ドローンというジャンルにも分けられてるようですが、とにかく私は大好きです。詳しく知っている方がいれば教えて欲しいです。ゴースト・ソサエティも全体的に軽やかなシューゲイズサウンドですが、曲の転調加減が大好きなミューを彷彿します。派手さはないですが、寒い日に歩きながら聞くのが好きです。

 オブ・モントリオールのこのアルバムはまずアートワークに惹かれました。聞いてみたらアートワーク同様すごく楽しいアルバムで、これ以前のアルバムも集めていきたいと思っています。PVもうちの子供はなぜか嫌がるんですがすごく秀逸でこのまま突き進んでいてほしいです。こちらのベストではEPも可、との事でまた年末のTwitterのベストとは順位が変わってしまったのですがシー・ベアー『We Built A fire』の限定盤に付いてるEP「While The Fire Dies」を入れました。エキゾチックで陽気な民族音楽が好きな人は気に入ると思います。こちらのバンドもパスカル・ピノン同様、アイスランド出身です。国内盤は残念ながら出ていないようですが、もし購入を考えているなら絶対EP付きがお薦めです。そして多様になって広がって行ったミュージックシーンを逆回転で追いかけて行った私にとってザ・コーラルの男臭くて無骨なようなこのアルバムはすごくホッと出来るアルバムでした。特に「Walking In The Winter」は哀愁的だけど、ギターラインが美しくて、昨年自嘲的になってしまう時によく聞いて助けられたと思います。

 そして2011年一リスナーとしての自分ですが、ずっと素晴らしい音楽が排出し続ける事を願っています。無料で聞けてしまう環境も勿論悪いですし、私も正直YouTubeで聞いてしまって購入に至っていない音源もあります。しかし、素晴らしい音楽が自分の生活を豊かにしていてくれてるのは確実ですし、素晴らしい音楽が聞けなくなってしまう事がとても怖いです。作り手であるミュージシャン達(それに携わる方々)にも当たり前ですが生活があります。不況下に課題は山積みだと思いますが、それにしても対価はきっちり支払われるべきだと考えますし、リスナーがその気持ちを忘れたら終わりだと私は思います。2010年はネットを始めた事や、様々な人との出逢いがあり、私にとってはとっても重要で濃密な一年でした。全体的に自分語りになってしまい申し訳なく思いますが、自分の力量ではどれも省けなくてこうなりました。ネットでなければ出会えなかったアルバムもたくさんあります。只、ジェフリー・キャントゥの様に店頭で思わず出会った時の快感も忘れ難いものです。なので、今年はiTSに挑戦したいなぁ、と思っているのですが、ショップにも引き続き通って行きたいです。ミュージシャンや教えて下さった方々にこれからも感謝しつつ広がっていけたらいいなぁ、と思います。

(財津奈保子)
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小出雄司

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NO AGE『Everything In Between』*画像
DEERHUNTER『Halcyon Digest』
THE TAMBORINES『Camera & Tremor』
SAD DAY FOR PUPPETS『Pale Silver & Shiny Gold』
CROCODILES『Sleep Forever』
MICHAEL JACKSON『Michael』
BUBBLEGUM LEMONADE「Caroline's Radio」EP
The VASELINES『Sex With An X』
エレファントカシマシ『悪魔のささやき〜そして、心に火を灯す旅〜』
フラワーカンパニーズ『チェスト!チェスト!チェスト!』





 大学を卒業して、2年間勤めていた会社を一身上の都合で退社。僕の2010年の幕開けはこのようにして始まった。一度、何もかもを失ってしまったとも言える状況で、立ち寄った本屋で目に飛び込んできたのは「さようなら2000年代」という言葉。自分が唯一リアルタイムで通過し、様々な思想や経験を得たひとつの時代(One Decade)が終わりを告げていた。その見出しに衝撃を受けると共に、新しい時代の訪れに期待に胸が膨らんでいたのもまた事実。僕はその雑誌を手に取り、しばらく与えられた余暇を2000年代の遺産を再度学習することに費やした。

 そんな中、「これぞ2010年代を牽引するサウンドだ!」と感じるものが耳に飛び込んできた。「Glitter」である。ノー・エイジがホームページ上で、無料ダウンロードで提供していたこの曲。重ためのビートに被さるように、幾重にも重なるノイズギター。言葉にすると単なる2000年代後半以降の常套手段なのかもしれない。ただこの曲には色彩を感じる。単純に景色が鮮明に浮かぶというだけではなく、新しい夜明けを華やかに色付けている。胸騒ぎにも似てる印象的なドラムビートに、未知なる可能性を感じた。

 ベテランの底力を改めて感じる機会も多かった。まずはマイケル・ジャクソンの『Michael』には心底驚かされた。亡くなった後の、ある種未発表曲の寄せ集め的なアルバムと言っていい今作には「マイケルが本当に歌っているのか」という疑惑の声が上がったらしいが、一聴すれば僕にとってそれは蛇足なものに思えた。マイケルが歌っているのかどうかの事実は僕にはわからないが、残された人々のマイケルに対する愛を充分に感じることができる。亡くなっても未だ影響力を放つことのできるマイケルの存在に感動すら覚えた。

 日本のアーティストも負けてはいない。エレファントカシマシ、フラワーカンパニーズ、次点にはなるが、斉藤和義、the pillows等、40代を迎えているアーティストの活躍から目が離せない。一度は不遇とも言える時期を乗り越え(しかもマイペースに)、独自のポジションを確立していく彼等。まさに「継続は力なり」という言葉を体現しているだけに、言葉ひとつひとつに説得力があって、ストレートに勇気づけられることも非常に多い。これからも彼等の活躍の場が増えることを祈るばかりだ。

 個人的に2010年で密かに再結成ブームは終焉を迎えるんじゃないかと思っている。音楽史は20年周期で巡っているという自論を基に考察すれば、90年代に活躍したアーティストの再結成は、2010年代の音楽基盤の構築に過ぎないとすら思える。ここからまたどんな音が鳴らされて、どんな場所で響くことになるのか。新しい歴史の目撃者に、僕はなりたい。

(小出雄司)
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くぼーでぃお

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ASIAN KUNG-FU GENERATION『マジックディスク』*画像
FACT『In The Blink Of An Eye』
ねごと「Hello! ''Z"」EP
HiGE『サンシャイン』
QUATTRO『Where Is The Coconut? ...Ha? 』
VELTPUNCH『Black Album』
LINKIN PARK『A Thousand Suns』
THE COURTEENERS『Falcon』
TWO DOOR CINEMA CLUB『Tourist History』
LOSTPROPHETS『The Betrayed』





 ジャンルも精神性もまったく異なる10枚。この10枚に共通するのは、「過小評価」されているというところ。アジカンやリンキンに今さら過小評価も何も...と思う人もいるだろうが、音楽メディア(特にSnoozer、Rocking Onなど)においてそれを感じるので、少しアンチな精神も込めてこの10枚にした。

 アジカンは間違いなく今までで最高傑作のアルバムを作ったし、FACTは日本で数少ない世界水準に達しているバンドだ。ねごとは2010年最大のルーキー(かまってちゃん、世界の終わりなどは昨年から台頭していたので)だし、HiGEの変化、Quattroの進化は目を見張るものがある。Veltpunchは多分この中で一番で過小評価されているが、こんなに毒と愛が満ち溢れたギター・ロックはなかなかいない。リンキン・パークはこの音楽不況自体に喧嘩を売るようなアーティスト魂のある傑作を作ったし、コーティナーズをもっと評価しないとUKロックは衰退すると思う。ツードアもそこそこの新人扱いで終えるバンドじゃないし、ロストプロフェッツなんてジャンル的に評価されにくい立場にいる。

 メディアが評価しないと、リスナーの耳には届かない。玄人ぶってモーニング・ベンダーズとかディアハンター、ノー・エイジにナショナルズやキングス・オブ・レオンを聴いてる業界人。もっとミーハーに、伝わりやすい、でも本当に素晴らしい音楽を届けてよ、な10枚です。

(くぼーでぃお)
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草野虹

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THE ARCADE FIRE『The Suburbs』
VAMPIRE WEEKEND『Contra』
SLEIGH BELLS『Treats』
FOALS『Total Life Forever』
MYSTERY JETS『Serotonin』
9MM PARABELLUM BULLET『The Revolutonary』
ANDYMORI『ファンファーレと熱狂』
SCHOOL FOOD PUNISHMENT『Amp-reflection』
THE BACK HORN『アサイラム』
GIRLS DEAD MONSTER『Keep The Beats』*画像






 批評的な側面もある程度加味しつつ、自分がよく聴いた・心震えた・考えさせられたアルバムを、洋邦含め10枚選んだ。

 こうやって2010年のベスト10枚を決めてみると、この年が僕にとって大きなタームを含んだ年だったと感じる。洋楽に関してはそれまであまりアメリカのインディー・バンドに興味を示さない、UKロックが好きな人間だったのだが、2010年はアメリカのインディー・ロック勢が熱い! という宣伝に惹かれ、色々と聴いてみるとすっかりその虜になってしまった。その結果USインディーから3枚選ぶことにした。

 ヴァンパイア・ウィークエンドは「California English」、スレイ・ベルズは「Tell'em」、アーケイド・ファイアは「The Suburbs」がお気に入りの一曲。ヴァンパイア・ウィークエンドの『Contra』は、この時代のインディー・バンドとして優雅にアフロ・ポップとワールド・ミュージックを奏で、インディー精神やDIY精神の大元になった80'sニューウェーヴ的な「自由な発想」が市民権を得た姿だ、と大げさに書きたくなるほどに聴いた。アーケイド・ファイア『The Suburbs』の彼ららしいノスタルジアやあの喪失感は、歌詞をよく読んでもいない郊外に住む僕の心を鮮やかに捉えたアルバムだった。多種にのぼる楽器であのノスタルジアを突き詰めんとする音像が、あまりにも僕に響いて仕方なかった。

 ディアハンターやザ・ドラムスのような、暗鬱さや喪失感が蠢く内省的世界観に逃避・夢想・耽美さ・甘美さといった要素を詰め込んだのが2010年のUSインディー・バンドの特徴的な点だろう。だが、スレイ・ベルズのアッパーかつ図々しいサウンドはそういった奴らに対して「メソメソしてんじゃねーぞ!」と言ってるように思えて仕方がないし、たった一歩で胸倉を掴んでくるようなヒリヒリしている、この緊張感と爆発力こそロックだ! と思った。
 
 UKからは2組、フォールズとミステリー・ジェッツのアルバムを選んだ。某巨大CD店の視聴機で聴いた新人UKバンドが僕の胸にあまり響かず、「ジャケットが良かったから聴いてみた」この2枚がかなり良かった。

 ミステリー・ジェッツのアルバム、しっかりとしたバンド演奏に、チープなシンセの音が煌びやかさを感じさせ、肩の力が抜けた気楽さが加わり、ちょっとセンチメンタルなメロディーが高らかに響く。こう書くと80年代っぽいサウンドと思われるけど、どの曲もバンド・サウンドを意識していてキッチュというほどじゃないし。あくまでメロディーに重きを置かれたアルバム。そんなソングライティングの良さからか、ちょっとだけオアシスっぽさを感じた。フォールズはアルバム・ジャケット通り、海に浮かんでたゆたうようなボーカルとメロディー・ラインがすごく印象的で、それを掴みにかかるようなバンド・アンサンブルと楽器の音色も心地よい。ミステリー・ジェッツとフォールズ、UKバンドらしくメロディーの良さを売りにしたバンドが心に残った。

 日本のバンドからは4枚を選んだ。9mm Parabellum Bullet、andymori、School Food Punishment、The Back Horn、文字通り2010年によく聴いた邦楽ロックだ。

 9mm Parabellum Bulletのアルバム『Revolutionary』は今までの彼ららしく、パンクやメタルがハードコアになったサウンドと歌謡曲的なメロディーが組み合わさったアルバムだ。しかし今までとは違い、おそろしく音が整理されていてしっかりと各パート(特にボーカル)が聴けるアルバムだ。そして自分達が「ロック」を奏でる人間だと言わんばかりに、テレビによく出演しているし、この国の人間の心に革命を起こさんとしている。School Food Punishmentはこのアルバムでメジャー・デビューしたとは思えないほどの完成度で、ダウナーな失望感から抜け出してキラキラとした希望へと走り出す、その瞬間を瑞々しくも鮮やかに描いたアルバムだ。The Back Hornのアルバムは、長い作曲期間で作られたこともあってサウンド・アプローチが多彩で、生死を深く見つめ肯定的なメッセージを放つ彼らの歌詞を、より深淵さを感じさせてくれる。andymoriはフォークのような軽快さをサウンドにもボーカルにも感じたし、何より1曲目の「1984」がアーケイド・ファイアの「The Suburbs」とダブって聴こえたときは、日本にも郊外に住む人間の哀愁を感じさせるバンドが出てきたのかとすごく感動してしまった。

 そして最後の1枚には、ある種のカウンターとしてGirl Dead Monsterのアルバムを選んだ。知っている人もいるだろうが、このバンドは地上波アニメ番組『Angel Beats』の中に登場するロック・バンドだ。アニメの内容は「箱庭世界からの脱却」というテーゼが内包されたものなのだが、このアルバムも「脱却」や「希望」を根幹にしたメッセージ性があり、J-Pop的な初々しくも分かりやすいロック・ソングが多い。同時期に「けいおん!!」の楽曲が人気も博し、そちらはアニメらしい「楽天性」や「非現実性」を売りにしていたのが人気の理由なのだが、それとは真反対に近いテーゼを持ったGirls Dead Monsterのアルバムが同じように売れたのは、逆説的に「希望」や「脱却」といったものが求められているという答えじゃないだろうか。

 この邦楽から選んだ5枚のアルバムは、実のところ「現実との戦い」を下地にしたアルバムだと思う。USインディー勢であるディアハンターやザ・ドラムスやベスト・コーストなどは、自分にとって新しく感じて心地よく聴いていたが、彼らのおかげで自分が好きなのは「力強さ」や「希望」を見失わずに奏でてくれる音楽だと再認識させてくれた、そんな2010年だった。

(草野虹)
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韓奈侑

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THE NEW PORNOGRAPHERS『Together』*画像
SHE & HIM『Volume Two』
PREDAWN『手の中の鳥』
STARS『Five Ghosts』
BEST COAST『Best Coast』
DEERHUNTER『Halcyon  Digest』
ARIEL PINK'S HAUNTED GRAFFITI『Before Today』
SERENA MANEESH『No 2: Abyss in B Minor』
THE ALBUM LEAF『Chorus of Storytellers』
MARCHING BAND 『Pop Cycle』





 2010年における私の音楽生活は正直なところ充実とは程遠いもので、年の明けた現在でもMGMT『Congratulations』やザ・ナショナル『High Violet』等は未だ聴きたいのに聴けていない為、ランキングにも未練が残りますが、ひとまず、上記の様に緩やか/穏やかなものを好んで聴いていました。

 なかでもザ・ニュー・ポルノグラファーズ『Together』はお気に入りで、疲れた帰路で私を励ましてくれる「ご褒美」盤となっています。『Together』は、例えば大好きなファウンテインズ・オブ・ウェインの『Welcome Interstate Managers』の様にトップの3〜4曲が特にキラー・チューンで、自分がポップ・ソング好きという好み的にも魅かれることは必然の作品でした。シー・アンド・ヒム『Volume Two』は今後暫く飽きずに聴ける、またふと聴きたくなる作品だと思います。また、2010年に観ることのできたライブの数も実に少なかったのですが、唯一よく見に行けたのはプリドーン。どんなに憂いでいる日でも、凛とした彼女の生演奏には一瞬で心奪われてしまい、雑念が全て取り祓われるくらい、聴き入っていました。2011年も見に行く予定ですし、次のアルバムが待ち遠しいです。

 朝起きてから通勤までの間にはシー・アンド・ヒムやベスト・コースト等で、ちょっぴり気だるいナチュラル・ハイを気取りながら、お昼の小休止時にスターズやアリエル・ピンクズ・ホーンテッド・グラフィティを聴き、夕暮れ時にはザ・ニュー・ポルノグラファーズやセレナ・マニッシュ、晩ご飯と共にディアハンター、布団に入りながらプリドーンやザ・アルバム・リーフ、という毎日でした。勿論、そのなかにお気に入りの旧譜も挟みつつではありましたが、テレビのないマイ・ルームで日々を飽きずに過ごせたのは、これらの新譜のお陰です。

 また、パッション・ピットやエヴリシング・エヴリシング等のエレクトロ勢が流行した年だったようにも感じます。個人的にはインディー・ロックを流すDJイベントにもよく遊びに行ったので、これらのキラー・チューンにはすっかり虜でした。

 ちなみに、私の「Private Top News Of 2010」が「ぺイヴメント再結成」だったのですが、折角の再結成ライブには都合上止むを得ず行けなかったので、一生悔やみそうです...。どうか、2020年くらいに再結成&来日してくれませんでしょうか。

(韓奈侑)
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川原広 a.k.a. K腹

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UNDERWORLD『Barking』
THE CHARLATANS『Who We Touch』
DELPHIC『Acolyte』
MGMT『Congratulations』
VAMPIRE WEEKEND『Contra』
MY WAY MY LOVE『New Mars』
KING BROTHERS『The First Rays Of The New Rising Sun』
KIMONOS『Kimonos』
日本マドンナ『卒業制作』*画像
FAM × EVERYDAY NEW DARE『心弦』






 どうも暗くなりがちな世間にあって、振り返ってみると、ベテラン勢については、本当にフレッシュな気持ちで取り組んでいることが伝わってくるもの、新しい世代については、瑞々しい自分たちの力を見せつけるようなアルバムをよく聴いたと思う。

 ベテラン勢については、何といってもアンダーワールド。どうも一般の評価はイマイチだが、カール・ハイドが本当に楽しそうに歌っていた来日公演に見られたように、本当に彼らが楽しみながら作ったことがうかがえる。ベテラン日本勢では、My Way My Loveはこれぞオルタナ、と言いたくなる、"次"を目指したものを作ってくれた。そこに倦怠感は一切ない。ベース加入後初アルバムとなったKing Brothersの好調さも嬉しい発見であった。

 新世代としては日本マドンナに注目したい。勢いで作ったような印象がありながらも、しっかりと彼女たちの心が込められていると思う。今年、さらに羽ばたいてほしい。

 最後に、私の地元千葉からfam × Everyday New Dareのスプリット盤を。3曲ずつのシングルとも言え、ここでは対象外なのかもしれないが、ベースが両バンド掛け持ちしており、また、famのボーカルがEveryday New Dareの曲に参加していたりと、fam × Everyday New Dareとしての6曲入りミニアルバムとして、ここにあることをお許し願いたい。エモバンドであるfamが日本語で、そしてしっとりと歌を聴かせた新機軸、と思いきや、今春で解散を発表した。最後の光だったのか、苦悩の徴だったのか、いずれにせよ、2010年の印象に残った作品であった。

(川原広 a.k.a. K腹)
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加藤巧

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ANIKA『Anika』
CHARLOTTE GAINSBOURG『IRM』
DEMONTRÉ『Masculin / Féminin』
DER VENTILATOR「White」EP
DUM DUM GIRLS『I Will Be』
FACTORY FLOOR『Untitled』
RED DRAPES『Ep.1』
SALEM『King Night』
SERENA MANEESH『No 2: Abyss In B Minor』
THESE NEW PURITANS『Hidden』*画像






 少し申し訳無いような話なのですが、クッキーシーンにほぼ毎号書かせていただいていた10年くらい? の間よりも、最近は自分の中の音楽熱が高いような気がします。こういうの選ぶのも楽しいですし。なお、順番はアルファベット順です。

 今回選んでみた中で特筆すべきは、デモントレイ(Demontré)とヴェンティラトール(Der Ventilator)の録音とミックスを手がけたディスク・エラー主宰のジェームス(James Aparicio)のウォール・オブ・ノイズ・ギター音響構築のセンス、パッケージまで完全手作りのCDRなのに大物感のあるレッド・ドレイプスの80年代ネオ・サイケ的翳りの美意識だったり、セーラム(Salem)と、彼らに触発されたウィッチ・ハウス(Witch House)と呼ばれる人たち‥oOoOO、ホワイト・リングの登場とかでしょうか。
 
 ダブをベースにした音作りがヴィヴィアン・ゴールドマンなどポスト・パンク期を彷彿させるアニカ、60sポップ解釈の感覚がラモーンズ〜ジーザス・アンド・メリーチェイン直系と思えるダム・ダム・ガールズ。ファクトリー・フロアはリミックス盤も含めて孤高の存在感がありました。

 シャルロットとピューリタンズは本当によく聴いたし、何よりライヴが素晴らしかった。その2組以外にもホラーズ、The XXを観られてライヴは充実していました。ただ、どれも名古屋には来なかったのですが‥。あとはセレーナ・マニーシュが観たかった。映像で観るかぎり、60年代のストーンズとヴェルヴェッツを混ぜたみたいで、ロック・バンドとはこうあるべき、と思います。

 最後に、レーベル(Knew Noise)でもお店(File-Under)でも刺激的な音楽を紹介してくださっている山田さんと、バー(Absentee)を始めた新川くんのおいしいカレーにリスペクトを。

(加藤巧)
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掛川秀之

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MGMT『Congratulations』
THE NATIONAL『High Violet』
THE FALL『Your Future Our Clutter』
ARCADE FIRE『The Suburbs』
VAMPIRE WEEKEND『Contra』
WINTERSLEEP『New Inheritors』*画像
ORIGINAL SOUNDTRACK『Rubber』
SWANS『My Father Will Guide Me Up A Rope To The Sky』
BRANDON FLOWERS『Flamingo』
BEACH HOUSE『Teen Dream』
 





 明けましておめでとうございます。2010年は色々目まぐるしく動いた割には、最終的には残っているモノが少なかった年でした...。志半ばにして断念せざるを得なかった物事、インターネットの怖さ、匿名性故の心無い行為に悩まされたりもしたりして...。

 口を酸っぱくして警鐘を鳴らし続けた、YouTubeやマイスペの台頭が著しくて自分と時代のズレを感じることも多かったですね。両者共に非常に便利だけど、試聴を超えた使い方=見た・聴いただけでまるで手に入れたかのように錯覚してる人々が多くて...。

「僕:そうそう、アレえりゃー良かったよね?」
「彼:うん、スゲー良かったね!大好き。」
「僕:7〜8曲目の流れとかサイコーだった」
「彼:え?」
「僕:アルバムの」
「彼:あ、マイスペとYoutubeで聴いたんだよ。ブログに貼ってたから。めちゃ好き!」
「僕:ふうん...」

 こんなやり取りが多く発生中なのは音楽業界の危険要素...。試聴して良かったら買えよ! もっとアルバム聴けよ! ジャケットとか手にして、歌詞も書いてあったら読めよ! がんばって聴き取りしてアーティストからのメッセージを理解しようと努力しようよ...。これじゃ益々CD買う人は減るよなあ...。これが時代ってもんですか? でも僕はパッケージ・ソフトを買い続けるのです。最低10回は聴いて良し悪し(てか好き嫌い)を判断するという信念(スルメアルバムとか1回で聴いて判断出来るの? マイスペで分かるの?)も一笑に付されて否定されたりして。一般世間と自身の音楽観のズレを痛感して、そういったものが蔓延する音楽界自体に対して不信状態な時期もありましたね、実際。

 ですが、こうやって10枚を選んでみると、色々と収穫&嬉しい出会いがあったと実感できるから不思議ですね。やっぱり、好きな音楽にだけは心を開いていきたいものです。こんな小さな幸せを音楽から得ながら、少しずつ前進していきたいものです。Sometimes Soon She Said!
 
 MGMTは、デジタル・ポップからロック・バンドへと格段に進化を見せましたね。あの2008年サマーソニック、拙いバンド編成でのステージングの意味が分かった気がする。フリッドマン・マジックも凄かったけど、ソニック・ブーム・マジックもやはり凄し。若手が成長する一方で、苦節10年の齢40近くのオッサン集団が遂に大きく開花した! と言えばやはり、美しくドラマティックでダウナーで緻密なサウンド、切なくも温かくメロディと渋みを増した男っぽいヴォイスの具合が堪らなく愛しかったザ・ナショナル! こんな世知辛い世の中ですが、セールス的にも成功した様で嬉しい驚きでした! 結構USやUKはモノホンが受け入れられる良い方向に進んできた気がします。でも日本はやはりイマイチ(残念)。自分内にあるであろう「Little Faith」を糧にしながら生きていこうと再確認した重要作でしたね。更に長い長い30年以上のキャリア、通算28枚目のオリジナル・アルバムをぶちまけたのはザ・フォール。細かい事を気にして落ち込んだりした時、そんな事は意に介さずにひたすら俺道を突き進むマーク・Eの姿は、は素晴らしくヨレてヒネていながらも堪らなく前向きで、パーソナルな助けになりました。"関係ねぇだよ、俺は俺"的なスタンスが共感の嵐!『Bend Sinister』 〜『The Frenz Experiment』〜『I Am Kurious Oranj 』期の粗さとストイックなクールネスとニヒルな毒を吐き出しつつ、バンドの"イマ"を感じさせる奇跡のアルバムでした。本当にスゲーんだけど...絶対過少評価されてるって!

 説明不要のアーケイド・ファイアは、バンドを取り巻く状況が変わっても自然体なスタンスは変えずに、常に疑問符の皆無な100%共感の嵐的なサウンドを作り続けてます。彼らのアメリカでの躍進は、地味なれど独自の道を行く後輩(いや、先輩もかなり...)バンド達の道標となっていくのでしょう。彼らの支持率は変わりませんしね。ギャング・オブ・フォーあたりのポスト・パンクからの影響をはじめて表出した瞬間は感動モノでした! 同じくヴァンパイア・ウィークエンドも共感の嵐! 2010年のベスト・ライヴ・アクト(フジロックの方)はこの人たち! ライヴの楽しさをそのまま詰め込んだかのようなアルバムは前作とは比較にならないくらい良い! アフロとかトロピカリズムな部分が取り沙汰されますが、バンド・サウンドの根っこにある天然なロックでポップでパンクな部分が好き! 祝全米大ヒット!
 
 もっともっと注目して欲しいのが、カナダの5人組ウィンタースリープだ! だ! だ! 通算4作目なんだけど過小評価されすぎ。オルタナ世代の残響音? 1990年代アメリカン・オルタナティヴを彷彿とさせるダークでザラっとしたサウンドとヴォーカル(マイケル・スタイプやエド・コワルチック似!?)がダウン・トゥ・デイトなのか、不遇な扱いを受けているバンドですが、大傑作だった前作を超えるドラマチックな展開と深みを持った壮大なサウンドが痛切なまでに胸を打つ大傑作! USオルタナとUKニュー・ウェイヴの影響を咀嚼したオリジナルなネオ・ネオ・ポスト・パンク〜ネオ・オルタナティヴ・サウンドが素晴らしいのです。えらく感動しちゃったので。続いて最高の嬉しい驚き&拾いモノは、全盛期に比べるとかなり落ち着いた感のあるフレンチ・エレクトロからの痛恨の1撃が。タイヤが人を襲うという内容(らしい)のネオ・カルト映画『Rubber』のサウンドトラックは、ミスター・オワゾ&ジャスティスのギャスパールによるものですが、お約束&お邪魔になりそなジャスティス系サウンドは1曲に抑え、チープな鍵盤楽器と不穏なサンプリングによるクールでキッチュな音響作品集! 1970年代カルトっぽい雰囲気もイイですが、架空のサントラとしても機能する位に映像的な雰囲気を持った傑作でした。

 一方、実に14年ぶりにSwans Are Not Deadとばかりに雄々しく復活したNYアンダーグラウンド暗黒大魔王=スワンズが再降臨! 暗黒で重厚な世界観は活かしつつ、時折顔を出す咆哮の如きエモーションが深い。ジャーボーの不参加は残念至極! 彼女のコーラスがあったら...(それは言わないお約束?)。来日公演をすっぽかしまくるザ・キラーズのブランドンのソロは、あらゆるところで無視されていますが、バンドと同様のベクトルを感じる、バンドの活動がしたくても出来ない事情のジレンマと、溢れ出る彼の才能の受け皿として機能するであろう作品で、これ重要。オクラ入りにしないで、世に出た事を喜ぼうじゃないか! 未来はここにあるのだから。今度は本当に来日してね! んで、イマイチピンと来なかったドリーム・ポップって言葉がはじめて完結したのがビーチ・ハウス。繊細で幻想的、映像的で夢見心地な、正にドリミーィなサイデリック・ポップが味わい深し。快作ですね!
 
 次点は新鮮な驚きを与えてくれたクロコダイルズとベスト・コースト、フリッドマン・マジックと良曲が驚きの味わいだったブランドン・ボイドのソロ、貫禄のスプーン、開花間近? のレ・サヴィ・ファヴ、ウォーペイント、ソフト・パック、ヴァイオレンズあたりでした。長くなっちゃいましたかね?

(掛川秀之)
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