ミシュー『カルドナ』(Green & Gold Music / Thistime)

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michou.jpg 現在、最も注目すべきエモ/インディ・ロック・バンドを一組挙げろ、と言われたら、僕は何の迷いも無く、このカナダはオンタリオ州ウィンザー出身のミシュー(Michou)を挙げるだろう。

 彼らのmyspaceのバイオグラフィーには、「未来の科学者が1974年にタイムスリップし、ある実験を行った。それは1人の男性に別々の4人の女性を妊娠させ、4人の子どもを産ませるといったものだ。4人はそれぞれ男の子として産まれ、彼らの父親の跡を追っていく内に、深内部のある街に辿り着き、カウボーイになりギャング行為を行い、人々から恐れられるようになった。市民はギャングたちが現れる時に叫ぶ『ミシュー』というコールに怯えながら街を歩くこととなった。科学者は4人のギャングを2010年に呼び起こす。そこで彼らは、ポップ・センスに満ちた未来のインディ・ミュージックを生み出し始めた。そして、自分たちのバンド名を昔の合い言葉から取り『ミシュー』と名付けた」というストーリーが載せられている。幻想的なのかSF的なのか、何だかよく分からないが、凝ったヒストリーだ。

 さて、そんな彼らが今年、世界的にリリースするこの『カルドナ』は、まさに、先のバイオグラフィーにも書かれていた通り、極上のポップ・センスによるインディ・ロック、エモの新たな指針になることは、まず間違いないだろう。ここでは、僕たちの日常に寄り添う鼓動、歓喜と憂愁を包み込んだ躍動が奇跡的なバランスをもって鳴らされている。
 
 本国カナダでは既に2010年2月にiTunesでリリースされており、2010年度の新人賞を総なめ。"カナダのデス・キャブ・フォー・キューティー"という異名すら獲得している。
 
 しかし、僕は彼らを、「カナダのデス・キャブ・フォー・キューティー」という枠組みだけで見るのは、あまりに矮小すぎるように感じるというのが本音だ。もちろん、言うまでもなく、デス・キャブ・フォー・キューティーは素晴らしいバンドであるし、彼らのフォロワーとして捉えられることも、もちろん光栄なことだろう。それでも、このアルバムは、例えば、ミューのもつメランコリックながら包み込まれるような耽美さ、エリオット・スミスのもっていたフラジャイルながら突き刺さるような切実さ、ムームやシーベアーといったアイスランディック・アーティストのもつ素朴な温かみ、そういったものも多くみられる。そして、それらのテイストを取り入れながら、独自のポップ・センスを磨き上げたサウンド、それがミシューというバンドであるのだ。
 
 この端麗なメロディ、儚くも強かなボーカルが見せてくれる世界は僕たちの日常そのものでありながら、それを更に切なく、優しく、キラキラした世界に変えてくれる。2011年早くも素晴らしいインディ・ロック・アルバムが登場してしまった。

(青野圭祐)

*日本盤は3月9日リリース予定です。【編集部追記】

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