リンゴ・デススター『カラー・トリップ』(Club AC30 / Vinyl Junkie)

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 マイブラ、ジザメリ...夥しいほど引き合いに出されてきた単語を目にして、何度も聞いた文句だと思いつつも、やっぱりその謳い文句に惹かれて音源をチェックしてしまう。例えそれが先人達の焼き直しであったとしても...。きっといるはず。僕もそんなひとりです。そしてそんな僕等の誰よりもど真ん中を射ち抜く 、更にシューゲイザーの文脈に興味がない人にも1つの良質なポップ・アルバムとして薦めたいアルバムをリンゴ・デススターが作り上げた。2009年に発表された『Sparkler』に続くファースト・フル・アルバム。
 
 ギター、ヴォーカルを務めるエリオット・フレーザーの声は間違いなくジザメリを想起させるし、ベースの紅一点、アレックスはビリンダだろうか?基本的な音もまさにシューゲイザーのイメージそのものである。ちなみに12曲目「Tilt-A-Whirl」はまさにマイブラの「(When You Wake)You're Still In A Dream」で、思わず2つを聴き比べたほど。14曲目の「Candy Paint」にブラインド・ミスター・ジョーンズの「Lonesome Boatman」を想い出させて悦に入ってしまったのは勘繰り過ぎの産物だろうか...? 勿論それだけではなく、3曲目「So High」のメロディにはネオアコや、ヘヴンリィなどのツイー・ポップバンドと共通するものを感じることができるなど、随所に様々な音楽性を見せつつ、一辺倒に聴こえないのもまた魅力である。
 
 しかし何と言っても、曲が良い。1曲それぞれ、単独で成立できるクオリティの高さがあるため、単純に、通して聴いて飽きない。何度も聴けてしまう。ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートにも近い感想を抱くが、ミックスの妙か、リンゴ・デススターの今作は彼らよりも全体を取り巻く音がカラっと乾いていて、音抜けがよくとてもクリアに聴こえる。ジャケットよろしく、太陽の下でノイズを浴びているような感覚に陥る。それがたまらなく心地いい。「Two Girls」「Chloe」なんかまさにそうだと思う。
 
 ここまで陽性なノイズを撒き散らしておきながら、しかもその1つ1つが強い光を放っている。数多いこのシーンで、マイブラ、ジザメリを引き継ぐ正統派と呼ばれながらも、実はこんなバンド、ありそうでほとんどいないと言っていいのでは。そんなバンドだけに、音楽的文脈を知らない、興味がない人にこそ聴いて欲し いと思ってしまう。このくだり、2度目ですが。2011年早々にして傑作。
 

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