アートスクール at 梅田 Shangri-La 2011/1/7

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「artワンマンはパンクバンドばりに曲数が多い」。開演前にギターの戸高はTwitterにて、こうツイートしていた。確かに、そうだ。ART-SCHOOLのワンマンでは、20曲を超えることはほとんどで、時には30曲以上演奏することすらある。しかも、この時は10周年記念ライヴのセミ・ファイナルであり、フロントマンの木下のホームタウンでもある大阪公演だ。下記にセットリストを掲載したが、結果的には新旧織り交ぜた27曲がプレイされる長丁場となった。しかし、最終曲「ロリータキルズミー」まで確かな熱量を伴ったライヴだった。

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 新年1週目の週末の外気はとても寒い。梅田シャングリラ前の歩道を、何人ものファンがART-SCHOOLの一つの節目となるであろうツアーのファイナル・イヴを見届けようと長い列を形作っていた。

 開演時間の19時ちょうどくらいに、客席が暗転し、彼らのお決まりのSEが流れ出す。エイフェックス・ツイン「Girl/Boy Song」だ。メンバー4人がステージに現れると歓声があがる。が、いつもは曲の中程で止まるSEがほぼ全て流される。少し遅れて演奏された幕開けを飾る曲は、意外にも、新譜『Anesthesia』のタイトルトラックだ。鈴木の淡々した機械的なドラムから始まり、サビで一気に加速する。オープニング早々、戸高の鋭利なギターが心地良いが、本人は至って自然体でプレイしているようだ。MCを挟まずに「水の中のナイフ」「アイリス」と第1期の曲が続き、新譜からの「Siva」がプレイされる。しかし、どうやら、この時点では木下のボーカルがどこか不安定だ。この曲が終わった後に、MCからその真相が明かされる。「レッドブルを飲み過ぎて正直、気持ち悪いんですよ」と戸高が言うと、「俺さっき3杯飲んじゃったからね...」と木下。レッドブルの効用が仇に出たのか、少しスロースターター気味になってしまっていたようだ。

「久し振りに演る曲です」との戸高の言葉と共にプレイされたのは、「ガラスの墓標」。続けて「Diva」「サッドマシーン」がプレイされると、木下の声も温まり出し、どんどん勢いを増す。それに呼応するように、「Black Sunshine」「Outsider」などでは、前列のオーディエンスたちも腕を振り上げる。
 木下が「新年早々、こんな暗いバンド観に来ちゃっていいんですか...本当、暗い新年になっちゃいますよ...」と皮肉交じりのMCを炸裂すると会場も和やかに。相変わらず、10周年でもこういうところは変わらないバンドである。また、「ここ大阪は、あんまりイメージ無いと思うけど俺の地元で、住んでいた高校生の時までは一刻も早く抜け出したかった。鬱屈した生活を送っていて、東京に出て来れてせいせいしたけど、最近は丸くなってきて...。悪いところばっかでもないかなって...」とホームタウン公演特有の心境が吐露される。個人的な話で恐縮だが、僕も木下氏と同じく、大阪生まれの人間で、大阪や生まれ育った京都が苦手で、出て行きたい節が常にあったので、特に共感してしまった。「そんな過去の自分を想いつつ、ここからは憂鬱な曲が4曲続きますが...楽しんでください...」という言葉の後に演奏されたのは「僕が君だったら」「Lost Again」「into the void」「Loved」。特に「Loved」は、その静端な曲調が相まって、この日の陰のクライマックスと呼べるような雰囲気を醸し出していた。

 陰鬱メドレーの後に「爆笑MC何かしてよ」とふられても、リアクションに困る宇野を横目に「めっちゃおもんないやん!このシューゲイザー野郎!」と、宇野の着ている(シューゲイザーの文字と靴がプリントされた)オフィシャル・グッズをネタにしながら、地元だけあって関西弁を披露する場面も。本編クライマックスでは「ecole」でディアーハンター譲りといったようなニューゲイザー勢を彷彿させる甘美な轟音に酔ったと思いきや、「スカーレット」での鋭利なギターに切り裂かれ、「Under My Skin」の衝動が襲った。特に「あと10秒で」は、ラスト定番の曲ではあるが、今まで以上に確かな熱量に覆われており、この日の陽のクライマックスと呼べるような雰囲気を醸し出していた。

「Fade To Black」を終え、ステージを去ったメンバーをアンコールの拍手が追う。数分おいて、再び現れたメンバーは、戸高がビーズの物まねをしたり、それに対抗した木下が、適当にフジファブリック「バームクーヘン」を歌ったりと本編では出さなかった茶目っ気を披露したかと思うと、木下が忽然に「この会場で今、睡眠薬を持っている人はいないかな」とオーディエンスに問いかけ、所持しているファンを挙手させる。「眠れなくて...こういった部分も今年は全面に押し出そうと思ってて。。医者に予約した時が一番心が休まるんですよね...」と赤裸裸に吐露し、戸高も「『錠剤をくれよ』って歌詞あるもんね」と間の手を入れる。僕もマイスリーという入眠剤などを携帯していたが、ハルシオン(ディアーハンターの新譜、『ハルシオン・ダイジェスト』をもちろん想起するだろう)などを所持するファンに焦点が向いた。一連のMCの後にプレイされたのは、第1期からの選曲では珍しい「I hate myself」。かの流れの後だけあって、なんて皮肉なんだろう。「車輪の下」でメンバーがステージを後にしても、まだアンコールを求める声は止まない。

 ダブルアンコールにして最後の1曲として演奏されたのは、「ロリータキルズミー」。たどたどしいイントロで始まりはしたものの、この日一番の喚起と熱をもって演奏された。

 10周年を迎えたART-SCHOOL。彼らは自他ともに認めるライヴ・バンドであるが、この熱の収まるところはまだ訪れはしないだろう。


セットリスト

1. Anesthesia
2. 水の中のナイフ
3. アイリス
4. Siva
5. ガラスの墓標
6. Diva
7. サッドマシーン
8. Black Sunshine
9. Outsider
10. ウィノナライダーアンドロイド
11. イディオット
12. 欲望の翼
13. 羽根
14. Butterfly Kiss
15. 僕が君だったら
16. Lost Again
17. into the void
18. Loved
19. ecole
20. スカーレット
21. あと10秒で
22. Under My Skin
23. Fade To Black

Encore.1
1. I hate myself
2. Boy Meets Girl
3. 車輪の下

Encore.2
1. ロリータキルズミー

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