モグワイ at Hoxton Square Bar & Kitchen(in LONDON)2011/2/9(現地時間)

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 ロンドンの中心街から地下鉄で20分ほど北東へ向かった「Old Street」駅より徒歩10分くらいのところに、今回の会場「Hoxton Square Bar & Kitchen」はある。いわゆるイヴェント・スペースで、カフェ&レストラン、ギャラリー、小さめのライヴハウスなどが一緒になった、日本で言えば「渋谷アップリンク」のような場所だ。今夜はここで、モグワイのライヴが行なわれる。言うまでもなくモグワイはUKを代表するインストゥルメンタル・ロック・バンドであり、日本でも「恵比寿Liquid Room」や「新木場Studio Coast」を満員にしてしまうほどの人気と実力を誇っている。そんな彼らが、200人も入ればギチギチになってしまうようなハコに出演するのだ。

 実はこれ、2月中旬からベルファストの「Mandela Hall」を皮切りにスタートする彼らのUKツアーに先駆けた、言わば「リハーサル・ギグ」のようなもの。All Tomorrow's Partiesの粋なはからいによって実現したこの滅多にないチャンスにロンドンでは壮絶なチケット争奪戦が巻き起こり、あっという間に完売となったようだ(そりゃそうだろう)。地元に住む友人たちにも羨ましがられたこの一夜限りのショウを、幸運にも筆者は観戦することが出来た。

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 会場に足を踏み入れ、その小ささに改めて驚かされる。「渋谷O-Nest」をひと回りほど大きくした程度だろうか。客もまだまばらだったため、あっという間に最前列まで来てしまった。ちょうどステージでは、オープニング・アクトのリメンバー・リメンバーがバンド編成でライヴを行なっている。彼らの背後には既にモグワイ用のドラムやアンプがセッティングされており、床には無数のペダル・エフェクターが雑然と置かれて足の踏み場もない。ステージの高さは1.5メートルほどで、手を伸ばせばメンバーに触れることすら出来そうだ。
 
 リメンバー・リメンバーのライヴが終わり、気付けばフロアは超満員。転換BGMには暗黒ドゥーム系やインダストリアルなヒップホップがガンガンかかりまくっている。そして21時半を少し回った頃に客電が消え、大歓声の中メンバー5人が現れた。
 
 まずは今年リリースされた最新作『Hardcore Will Never Die, But You Will』から「White Noise」。淡々とリズムをキープし続けるドラムのマーティン・ブロック、以前とはまるで別人のようにスマートになったギターのスチュワート・ブレイスウェイト(彼はファズ・エフェクター<Big Muff>のデザインをモチーフにしたマッドハニーTシャツを着ていた)、そして、巧みにルート音を避けながら黙々とベースを弾くドミニク・アイチソンの三人が、時おり笑顔で顔を見合わせながら幾何学的でミニマルなフレーズを積み重ねていく。スチュワートと同様、このバンドのサウンドに於ける"要"であるにも関わらず、常に飄々としていて感情の読めないバリー・バーンズと、相変わらず寡黙に自分の"持ち場"をこなす職人ジョン・カミングスの2人も、もちろん健在。一見バラバラな性格/性質に思える5人だが、いざステージに立って楽曲を紡ぎ出すと、そこには目に見えない絆をハッキリと感じ取ることが出来る。
 
 曲間でのオーディエンスとのやり取りも、日本で観るモグワイよりも気さくでフレンドリー(母国語でコミュニケーションが出来るというのも大きいだろう)。オーディエンスから「日本はどうだった?(How was Japan?)」と呼びかけられ、「素晴らしかったよ(It was great!)」と答えたり、その直後の曲の終わりでは「アリガトウ!」と日本語で挨拶したり。そんな思いもかけぬ「日本トーク」が繰り広げられ、アウェーな場所で観戦している我々にとっては(筆者の他にも数人の日本人がいたようだ)、思わずグッと来てしまう場面もあった。
 
 セットリストは、前の週に「恵比寿Liquid Room」で観た2回のライヴと同様、新曲を中心に過去の名曲を織り交ぜたもの。かなり被っている曲も多かったが、昨年のメタモルフォーゼに行けなかった筆者には、「Ithica 27 Ø 9」が嬉しかった。ちなみに新作の中でライヴ映えしていたのは、やはり歌メロがポップな8ビート・ナンバー「George Square Thatcher Death Party」や、シングル・カットされた「Rano Pano」あたり。特に今回、「Rano Pano」から始まる終盤の流れは圧巻で、「2 Rights Make 1 Wrong」の後半では津波のようなフィードバックに窒息しそうになるし、本編ラストの「Bat Cat」では、気づいたときには白痴のように頭を降り続けている自分がいた。
 
 極めつけは、アンコール最後の「My Father My King」。不吉だが懐かしくもある不思議なギターリフの繰り返しに、理由が分からぬまま涙が止まらなくなってしまった。そんな混乱した意識で後半の凶暴ノイズに晒されていると、次第に自分の中のダーク・サイドがズルズルと引きずり出されていくような感覚に陥ってくる。前日の昼間、ピカデリー・サーカス近くの映画館でダーレン・アノロフスキーの映画『ブラック・スワン』(*日本でも5月13日より全国ロードショー)を観ていたこともあり、「これぞブラック・スワンの誕生!」と思わず叫びそうになった(ヘンなモノは服用しておりません・笑)。
 
 それはともかく、至近距離で浴びるモグワイは、昨年「ATP NEW YORK 2010」で観たSUNN 0))) AND BORISの「Alter」ライヴ同様に魅惑的かつ危険な、言わば"宗教のような体験"であった。
 

*モグワイのインタヴューはこちらになります。【編集部追記】

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