ャズ 『ランニング・ウィズ・ザ・ビースト』(Anti / Moorworks)

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zzz.jpg zZzって...。オランダのアムステルダム出身のこの2人組は、その名もzZz。日本語にすると、イビキでもトリプル・ゼットでもズズズでもなく、「ャズ」という。国内盤の帯にはご丁寧にも※印付きで、"日本語表記の「ャズ」は、「Jazz(ジャズ)」の「Ja」を抜かした発音です。"って書いてある。でも、うまく発音できない...。意地悪なユーモアなのか?月並みなコミュニケーションに中指を立てるパンク・スピリットなのか? それとも、本当に眠いだけなのか? とにかく一筋縄では行かない感じが、バンド名からも伝わってくる。そんな彼らが2008年に発表した2ndアルバム『ランニング・ウィズ・ザ・ビースト』が、ようやく国内盤としてリリースされた。

 ブックレットをペラペラめくってみると、そこには思いがけない発見が! アルバムのコンセプトをビジュアルで表現するのは当たり前だけど、このブックレットではその制作過程も見ることができる。なんて愉快なアクション・ペインティング! ストーン・ローゼス(ジョン・スクワイア画伯)に丸パクリされたジャクソン・ポロックも、これなら天国で微笑んでるに違いない。親切な連続写真も笑える。このアルバムはデータじゃなくって、絶対にCDかアナログで手に入れるべき。最後のページで完成作を手に(ドヤ顔で!)仁王立ちする2人も頼もしい。ャズの正体は、ミニマムなアートを愛するロック・バカだってことが判明。最高でしょ。

 ドラム&ヴォーカルのBjörn Ottenheimが叩き出すビートは、タイトでシンプル。リヴァーブ深めで翳りのある歌声もカッコいい。Daan Schinkelが奏でるシンセサウンドは、極彩色のサイケデリックと薄暗い蛍光灯が揺れるガレージを行ったり来たり。時折聞こえるオルガンはモッズっぽいし、サウンドの奥底ではブルースも鳴っている。JSBXやスーサイドと比較されることが多いらしいけれど、このアルバムはまるでブラック・キーズがジョイ・ディヴィジョンをトリビュートしているみたい。ブルースやソウルに対する自由な解釈とニュー・ウェーヴにも通じるダンサブルなアプローチ。ギター&ベースレスとは思えない多彩なアイデアとアレンジが、僕の耳を奪う。

 すでに海外では、このアルバムに収録されている「Grip」のPVが大きな話題に。彼らと同じくアムステルダムを拠点に活動する映像作家 Roel Woutersによる斬新なアイデアは、一見の価値あり。"欽ちゃんの仮装大賞"どころか、ヨーロッパではいくつものビデオ・アウォードを受賞し、挙げ句の果てにフィアットのTVCMに担ぎ出される騒ぎにまで発展。これにはYouTubeの覇者 OK GOもビックリしたとか、しないとか。その後もフランツ・フェルディナンドやゴシップとツアーを巡り、人気も評価も急上昇中だ。2〜3年周期でのリリース・タイミングを考えると、今年は新作が期待できるかな。このアルバムがみんなの耳に届けば、次作はもっと早く国内盤が出るかもしれない。そして一日も早く、人力グルーヴが渦巻くサウンドをライヴで体験できますように。では、おやすみなさい。zZz...zZz...。

(犬飼一郎)

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