ディーヴォ『サムシング・フォー・エヴリバディ』(Warner Bros / Warner)

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 ぼくの場合、昨年のトップはザ・ドラムスのファースト・アルバム。LCDサウンドシステムのサードとMGMTのセカンドが、それにつづく感じ。このあたりは(ぼくにとっては)順当なセレクションと思える一方、愛聴度ってことで言えばライトスピード・チャンピオンのセカンド、そしてこのディーヴォによる20年ぶりのニュー・アルバムも絶対はずせない(これで、すでに5枚が決まってしまった:笑)。

 00年代におけるポスト・パンク・リヴァイヴァルの風にのって再結成して来日も果たした彼らだが、その時期には新譜をリリースしなかった。でもって、この『サムシング・フォー・エヴリバディ』、まさに「満を持して」と言える作品となっている。ディーヴォといえば、ひとを食ったセンスに関して「冷笑的」などと評されることも(彼らがデビューした70年代後半には)少なくなかった。たしかに、彼らのブラック・ユーモアの「黒さ」は並大抵じゃない。「人類の進化」といったコンセプトにつばを吐きかけるバンド名(evolutionの反対語としてのdevolutionの略)からして、明らかに「いいひと」の対極にある批評性を含有していることは間違いないのだが、その音楽は最高にポップ。ライヴは見事な(痙攣した、もしくはひきつった)ロックンロール。『あらゆるひとのための、なにか』というアルバム・タイトルどおりだ。

 彼らはこのアルバムに先駆け、彼ら自身のウェブ・サイトで収録予定曲を全部ファンに試聴してもらい、どれをアルバムに入れるべきか投票してほしいと呼びかけていた。アーティスト至上主義の放棄? インターネット時代にふさわしいポップ・バンドの在り方? どちらにしても、すごくディーヴォっぽい行為だと思う。

 その初期において、自主制作ショート・ムーヴィーも積極的に制作していた。MTVが全米を席巻する何年も前の話だ。1979年の初来日ライヴでは、演奏の前にそれが上映され、当時高校生になったばかりのぼくは完全に度肝を抜かれてしまった(ちなみに、ぼくが初めて見た外国人アーティストのライヴだった:笑)。徹頭徹尾ブラック・ユーモアに貫かれたショート・ムーヴィーの内容もさることながら、音楽とその他のメディアを同等にとらえる姿勢に、完全にぶっとばされた(それに影響されて高校時代には中学のときに始めたバンドを辞め8ミリ映画制作に没頭してしまった:笑)。インターネットというメディアの使い方ひとつをとっても、彼らの感覚が一切にぶっていないことがよくわかる。インターネットの発達は人間にとって「evolution」なのか、それとも「devolution」なのか、という問いかけも含めて(そう考えると、『サムシング・フォー・エヴリバディ』などというタイトルもブラック・ユーモアっぽく見えてきてしまう:笑)。

 音楽/ソニック的にも、今の時代にふさわしい、ジャストなものとなっている。00年代には、もう本当に(ぼくなどには)ディーヴォを思いださせる素晴らしいレコードが次から次へとリリースされていた(そのピークはLCDサウンドシステムの『Sound Of Silver』だったかも)。クラブDJをするとき、それらと並べてディーヴォをときどきかけてみたのだが、どうもしっくりこない。70~80年代のものなので多少古びた感じがするというか、当時を知らないひとには盛りあがれないという雰囲気がどうしてもこびりついていた。リマスターされたCDでも同じこと。そこに染みこんだ時代性は消せない、ということだったのだろう。しかし、このアルバムは全然大丈夫だ。ソウルワックスやダフト・パンクやLCDサウンドシステムと、実に心地よくつながる。

 実際、最初はLCDサウンドシステム(ジェームズ・マーフィー)やファットボーイ・スリム(ノーマン・クック)もプロデューサー候補に挙がっていたらしい。しかし、それをやらなくてよかったと思う。彼らは(とりわけジェームズは)おそらくディーヴォが好きすぎる(笑)。それでは自家中毒を起こしてしまうかもしれない。このアルバムには、そうではない客観的視点もある。

 メイン・プロデューサーはグレッグ・カースティン。ザ・バード・アンド・ザ・ビーの頭脳としても知られている彼だが、5歳のときにドゥイージル・ザッパ(もちろん、フランク・ザッパの息子)のバンド・メンバーとしてデビューしたL.A.オルタナティヴ音楽業界の鬼っ子である彼であれば、いくら若くともディーヴォを前にしておじけづいてしまうようなことは決してないだろうし、実際そうだったと思える。ほかにも、サンティゴールドことサンティ・ホワイトおよび彼女と組んで素敵な作品を残してきたジョン・ヒル、ザ・ダスト・ブラザーズ(ケミカル・ブラザーズじゃなくて、ビースティーとかの仲間だったほう。ぼくは彼らのほうがより好きだった)のジョン・キング、さらにマニー・マークことマーク・ニシタらが絡んでいる。

 今回からエナジー・ドーム(日本人には巻きグソのようにも見える帽子)の色が赤から青に変わったことを「彼らって、昔からイメージ先行だよね」とか冷笑的に語るひともいるようだが、もともとエナジー・ドームなんてものを彼らが導入する前からのファンとしては、そっちのほうがむしろこざかしいとしか言いようがない。彼らはイメージも音楽も最高なんだよ! 「我々は人間ではないのか? 我々はディーヴォ!」と昔から叫んでいたぼくのような人間...いやディーヴォはもとより、そうでないひと...エヴリバディに是非とも聴いておいてほしい1枚だ。リリースから数ヶ月たっているが、その程度では(当然ながら)古びることはない。

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