ザ・ディア・トラックス『ジ・アーチャー・トリロジー・パートワン』(Vinyl Junkie)

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 昨年、2010年の春に、大阪でフリーティング・ジョイズ、ディア・トラックス、レディオ・デプトの3組の来日公演を観る機会に恵まれたのだが、その夜のハイライトは大方が、ディア・トラックスの「Yes This Is My Broken Shield」を挙げるのではないだろうか。打ち込みを楽曲の中心に据えるバンドは、ことライブにおいてダイナミクスを損なってしまうリスクも背負っているが(その日観たレディオ・デプトに若干のそれを感じてしまったので...)、彼らの音は1つ1つに緩急のついた表情を感じさせる、多幸感に満ちたものだった。ラストの 「Yes~」の音の洪水には思わず涙がこぼれた。
 
 音源でもそれは窺い知ることができる。ひとくちに生楽器を組み合わせたエレクトロ・ミュージックといっても、とりわけ彼らの音は立体的かつ有機的だ。それは、聴き手の感情を想起させる余地を多分に含んでいると言い換えてもいい。温度を感じさせるという意味では、ラリ・プナを初めて聴いたときにも似たような印 象を受けた。が、それよりももっとスケールの大きい、まさしく北欧をイメージさせるような、澄んだ空気のなかで鳴らされている世界観がそこにはある。 
 
 彼らの日本盤としては2作目にあたるこのディア・トラックスの『THE ARCHER TRILOGY PT.1』は、基本的に前作の流れの延長線上にあり、前作で確立させた世界観をより推し進めた内容である。より光が濃くなった感じだろうか。まるで白昼夢をみているかのような、とにかく美しい...。「RAM RAM」「MIO」は高揚感が否応なしに掻き立てられる名曲。ライブでのまばゆい光景が浮かんでくるよう。後者はシガーロスをも思わせたりもする。タイトルからするに3部作の1作目ということで、今後の音源が早くも気になる。何故だかそんな期待は裏切られないだろうという確信がある。北欧ときて反応するような人はぜひ。
 

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