VARIOUS ARTISTS『コンゴトロニクス世界選手権』(Crammed Disc / Plankton)

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 CDショップで見つけてからプレーヤーのトレイに載せるまで、こんなにワクワクしたアルバムは本当に久しぶり。そしてスタートボタンを押してから聞こえてきた音楽は、想像以上にカッコよくて、楽しくて、自由だった。つまり最高だってこと! タイトルは『コンゴトロニクス世界選手権』。その名のとおり、世界各国からインディ・ロック、テクノ、ハウス、現代音楽などの気鋭アーティスト26組が"コンゴトロニクス"のもとに大集結。以前、僕が紹介させてもらったコノノNo.1やキンシャサ在住で25人ものメンバーを擁するカサイ・オールスターズの楽曲を独自のセンスと手腕でカヴァー/リミックスしている。コンゴトロニクスは自分たちを「トラディ・モダン=伝統的かつ現代的」と位置づけ、26組の参加アーティストたちを"ROCKERS"と呼ぶ。オリジナル・タイトルは『TRADI-MODS VS ROCKERS』。国内盤の解説でも言及されているとおり、元ネタは映画『さらば青春の光』にも描かれていたモッズとロッカーズの対立。今や時代は10年代。音楽の真剣勝負はルール無用で、楽しくて、僕たちの耳と心をとことん刺激する。

 2枚組アルバムの冒頭を飾るのはディアフーフ。どうやって演奏しているのかさえ謎だと思われるカサイ・オールスターズのカヴァーに挑戦! 親指ピアノ(リケンベ)やパーカッションのパートを従来のバンド・フォーマットに置き換えるアプローチとサトミさんのメロディーが素敵。そう言えば、彼らの新作は『Deerhoof Vs. Evil』だったっけ。対TRADI-MODS戦も大健闘でしょう! インディー/オルタナティヴ・ロックからは、ディアフーフの他にもアニマル・コレクティヴやアンドリュー・バード、ウィルコのグレン・コッチェ、ボアダムスの山塚アイなどが参加。どれも自分たちのカラーを残しながらも、コンゴトロニクスが大放出するグルーヴの渦の中で自由に暴れている。遊んでいる。アンドリュー・バードの口笛は、いつになく楽しそう! 山塚アイのトラックは、リケンベを増幅させた極太ベース・ラインが最高にカッコいい! 

 このアルバムを企画したクラムド・ディスクスのマーク・オランデルのセンスにも注目しよう。81年、ポスト・パンク黎明期から現在まで多国籍な音楽を発信してきたクラムド・ディスクス。最近ではやはり、この"コンゴトロニクス"と呼ばれるコノノNo.1やカサイ・オールスターズを熱心にリリースし続けてきたことは特筆に値する。グラミー賞にまでノミネートされるようになった彼らの音楽には、普段からリミックスの依頼が絶えないという。それでも彼は、それを断り続けてきた。このアルバムに参加できたのは、レーベル側から"選ばれた"アーティストだけ。コンゴトロニクスへの愛着と理解こそが、そのオファーの理由だという。

 先述のインディー/オルタナティヴ・ロック勢に加え、90年代にベーシック・チャンネル名義でミニマル・ダブを定義したマーク・アーネスタス、現在のクラブ・シーンで大きな注目を集めるシャックルトン、そして初めて耳にする現代音楽のアーティストまでが名を連ねるこのアルバムには、マークの目論見どおり"コンゴトロニクス"への愛情がいっぱい。2枚組なのに1枚分の値段(税込2,520円!)で買える国内盤にも愛を感じる。自動車やラジオの廃品から生み出されたグルーヴは、新しいイマジネーションとアイデアを得て、どこまでも自由に広がってゆく。国境も、音楽のジャンルも飛び越えて。

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