VAMPILLIA『Alchemic Heart』(Important)

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 全2曲で約50分、ノンビート。アンダーグラウンドなシーンの中でも異端とされる存在であるVampilliaの最新作。1曲目の「sea」ではスワンズの女帝ジャーボウが美しい音像の中、ヴォーカルやポエトリー・リーディングで参加している(このアルバム・タイトルの名付け親でもある)。禍々しいオーラに満ちた彼らのヴィジュアルや音楽に触れた事がある人の中には意外と呆気にとられるかもしれないアンビエンスで幕開ける。正に楽曲タイトルを想起させ、壮大な空間を演出するストリングスを用いた美しい情景。ピアノが齎すセンシティヴでしっとりとした音が寄り添いながら、確実に生命の息吹を感じさせ原始的とすら感覚出来る時間。やがてピアノの独奏が中盤支配しこれからの暗黒展開を予見させるかの如く冷ややかな空気が張り詰め、その予感が的中。後半一転してへヴィなギターが畳み掛けてドローン・メタルな展開へと派生するが、冒頭のアンビエント・パートで披露した美麗な旋律は輪郭を暈したまま引き継いでいる。決して安らかなる幻想のみで終わることのない厳格な超自然を感覚させられ、悲哀を帯びた厳しさにただ蹲るだろう。"叙情的な"という形容もシチュエーション次第で当て嵌まるかも知れないが、この音楽そのものに「"都合の良い"物語性」は感じられない。荘厳なフィードバック・ノイズの中で舞うオペラ・ヴォイスや、鳴りやまぬ鍵盤の高らかな響きは、ドゥームやドローン、ノイズ音楽と称される類として聴けばメロディアスな要素を多分に含んでいて、ノンビートものはちょっと苦手という食わず嫌いなリスナーにも体感して欲しい。

 2曲目「Land」は、1曲目「sea」の録音時に使用した膨大な素材を元にメルツバウが自身のノイズを交えてミキシングした楽曲で、「sea」とは対照的に現代音楽のアプローチをもって心身に沁み込んで来る。ギシギシと軋む狂気を孕んだ抽象的なコラージュに脳内がジワジワと冒されて...やがて気が付くのは冒頭の「sea」と同じく2部構成というデジャヴ。後半はギターの轟音がドゥーミーに沈み、散り散りになった細かいノイズの欠片と共に夢の底へと堕ちていく...。ブラックメタルの持つダークネスは確りとルーツの一部として抱き、上っ面の流行やシーンとは一切迎合しない独自の姿勢と同時に、普遍的な美を追求した音楽を作り上げようとする志が窺えるからこそ目指している高みが他とは違うのだろうと感覚出来るのだ。メルツバウやアシッド・マザーズ・テンプルなど、数々のアンダーグラウンドシーンに於ける重要アーティストのリリースを引き受けるアメリカのImportantから全世界への発信となる今作。勿論世界での反応も気になる所だが、こういう問題作(話題性が強いという意味でも)になるべき作品を先ず日本国内がどういうリアクションを返すのだろう?という試金石でもあると感じる。つまりは、非常に素晴らしい作品を前にして真摯に受け入れられる"シーン"であるかどうか。

「よう考えたら最近居らんで、こんなマジなん」という自分のファースト・インプレッションは4回リピートした後の今も変わる事はない。今後の活動も益々精力的な大所帯な彼らは最早、数々の大物との共演を重ねた過去を武器にせずとも十二分に飛躍してみせるに違いない。ポストロックやシューゲイザ―ともリンクするサウンドは更に確信を突き、これを「マニアック」だなんて片付けていては、いよいよ日本も終わりだろう。

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