モグワイ

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MOGWAI

いろんな意味で、変化する時期にあったんだと思うよ

モグワイのニュー・アルバム『Hardcore Will Never Die, But You Will』が素晴らしい。彼らは今も類い稀なるインスト・バンドだが、ここ数枚は歌入りの曲もあって、徐々に親しみやすさを増していた。今回もそう。無理をしているとかは全然感じない範疇で、ポップとさえ言えるアルバムとなっている。モグワイが? いや、本当なんです(笑)。もちろん彼ら独特の「人間的なヘヴィーさ」は存分に発揮されている。でもいい意味でライトな部分もある。明らかに最高傑作、と思う。

2月初頭の来日ライヴから数週間前、モグワイの中心人物である、おなじみの禿男ことスチュアート・ブレイスウェイトに電話をかけて、ショート・インタヴューを試みた。

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 今回のアルバムは、一聴してそうとわかるモグワイならではの音楽でありながら、これまでの作品とかなり違ったものになっている。モグワイの新しい出発点となるような作品と言えるのではないか?

「そうだね。できあがりには満足しているよ。たくさんレコードを作ったあとで、それまでと変化したものを採りいれることができたのはよかったと思ってる。違いを生みだせて、うれしいよ」

 このアルバムに関しては"モグワイの音楽はノイジーである"といった表現が適さないのではないかとも思う。もちろん、ノイジーなギターや奇妙なサウンドもたくさん使われてはいるが、全体の印象として、よりクリアーである気が...。

「そういう変化は、自然に起こったことだった。音楽を書くこと自体、自然に行われていることだし、それがたまたまメロディーのある曲に仕上がっていった、ってこと。そういうメロディーをクリアーに表現したいと思っただけだし、出てきた曲が自分でそうなっていっただけ、とも言える」

 こう言ってしまうのは簡単だ。しかし、彼らはそれを完全に"実行"している。それが"モグワイならではの音楽"を生みだしているのだろう。

 彼らは昨年ライブCD+DVD作品『Burning / Special Moves』を発表している。それを出して、ふっきれた。それで新しい段階に進んだ、という部分はあるのだろうか? 今回は"レコーディング作品"として、これまでで最も丁寧に作られている気がする。

「そうかもしれないね。自分たちでしみじみそういうことを考えていたわけじゃないけど、実際、同じような場所にずっと長くいつづけてしまった、って感じてたところはあったかもしれない。そういうライヴ作品を作っていた過程で、何か新しいものをやりたい、って無意識に思うようになっていったところはあったかな」

 プレス・リリース(日本盤ライナーノーツとしても使用されている。実に適確な文章だ)に、スチュアートのこんな発言が載っていた。

「これまでのアルバムとは全然違ったから、今回のアルバムの制作は、わりとトントン拍子に進んだな。ジョンとバリーはもうスコットランドを離れているから(それぞれニューヨーク、ベルリンに移住)、作曲に関しては部屋でいっしょにプレイするというスタイルじゃなくて、デモでやり取りする方法を取った。そのせいもあって他のアルバムとは違った雰囲気が生まれたと思う」

 かつては常にみんなでいっしょにプレイしつつ作曲していたのだろうか?

「まあ例外もあるかとは思うけど...(注:あまり、ちゃんと憶えていないようだ)。でも確かに今回は、スタジオに入っても、よりオーガナイズされてたかもしれないね。どういうものをやるというのが、ある程度見えた状態でスタジオに入ったから」

 なるほど。以前は"みんなで一緒に作りあげていく"部分が多かったということだろう。そして今回は分業が多かった。それが完全にいい効果を生んでいる。

「みんな別の国に住んでるからね。一緒に集まるのは、前ほど楽なことじゃないよ。状況の違いが、曲作りの違いにも結びついた部分はある。それが確実に変化につながった。いろんな意味で、変化する時期にあったんだと思うよ」

 グレイト!

「そうしたいとかしたくないというよりも、状況の変化からその変化に対応しただけ、っていうか(笑)」

 この素直さが、またグレイト(笑)!


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 今回は1997年にリリースされたファースト・アルバム『Young Team』以来、ポール・サヴェージがプロデュースを担当している。久々に彼と組んでの作業はどうだったのだろう?

「おもしろかったね。彼が最初にレコードをプロデュースしてくれてからは、ずいぶん時間が経っていて、バンドも彼も、いろんなところで大きく変化した。ポールもその間、いろんな経験を積んだから、古い友達と、まったく新しい仕事の関係を築くことができて、面白かったよ。...13年前だからね」

 その新しい関係とは、どんな雰囲気だった?

「リラックスしたものではあったけどね(笑)。昔に比べて、自分たちがやってることに確信を持てていたし、より年を取って、もしかしたら、より賢くなれた(笑)」

 ポールはプロデューサーとして大活躍中だが、元はデルガドズ(The Delgados)のドラマー。これまでモグワイとデルガドズの音楽はまったく違うというか似てもに似つかぬものだったような...。でも新作では、彼らの音楽との比較もなりたつ気がする。

「いいコメントだね。彼らはいつだって、いいバンドだったし。ぼくらのバンドとはずいぶん違うけど、そう言ってもらえるのはうれしいな」

 2曲目「Mexican Grand Prix」、7曲目「Geroge Square Thatcher Death Party」では、少しノイ(Neu)を思いだした。

「ぼくらはノイの大ファンなんだ。実際、レコーディング中に、ミヒャエル・ローサーのライヴを見にいったんだよ。すごくいいコンサートだった。ノイは元々、ぼくらにとっては大きな影響源だからね」

 ところで、先ほど曲名を挙げた「Geroge Square Thatcher Death Party」というタイトルを見たとき"ジョージ・ブッシュと、マーガレット・サッチャーの死のパーティー? "と思ったのだが、スクエアというのが誰かわからなかった...というか、こんな解釈で正しいのだろうか(笑)?

「ジョージ・スクエアっていうのは、グラスゴーにある場所の名前。スコットランドの人たちがみんな嫌ってるマーガレット・サッチャーが死んだら、そこであの苦しかったマーガレット・サッチャー時代の終焉を祝うパーティーをするって話だよ」

 またもやグレイト(笑)!

 彼らは、いつだって言葉の使い方もおもしろい。アルバム・タイトル『Hardcore Will Never Die, But You Will』も最高だ。先ほどと同じくプレス・リリースから、スチュアートが語るその由来を引用しておこう。

「アルバム・タイトルは、未成年にアルコールは売れないって店員に断られたガキが言い放ったセリフから取った(注:この場合、ハードコアというのは重度のアル中を指すと考えられる)。エラーズのジェームズ・ハミルトンから聞いた話さ。『Ten Rapid』『Mogwai Young Team』『Come On Die Young』に続く、若者ベースのタイトルだね。ちょっと真剣味に欠けたタイトルと攻撃的でシリアスな音楽の組合せは、俺らのオハコでもある。どんな意味なのか、聴いた人みんなが全く違った意見を持つ...そんなところが気に入っている」

 なるほど! このエピソードを見る前には、最初かなり"字義どおり"にとらえていた。「ハードコア・パンクは永遠だが、ほかの腐った音楽はすぐ死ぬ」みたいな感じで(笑)。

「それもいいね! ぼく自身、パンク・ミュージックは大好きだし」

 もともと、そういうメタファーはなかった?

「ないね(笑)」

 そうか...。ぼくの解釈からすると(日本盤ボーナス・トラックを除く)ラスト曲のタイトル「You're Lionel Ritchie」は、"死ぬべきもの"の代表を示したタイトルかと思った。しかし、プレス・リリースにあったこんなスチュアートの発言を見て吹きだした。

「ヒースローでライオネル・リッチー本人に遭遇したんだ! でも、俺ってばバルセロナでDJした後でまだ酔っ払ってて、『You're Lionel Ritchie(あんた、ライオネル・リッチーじゃん)』しか言えなかった...メンバー全員、大爆笑さ...」

 ヒースローで、本当は彼になんと言いたかった(笑)?

「ハロー、かな(笑)」

 (笑)"死ぬべきもの"の代表ではなかったのか...。

「それは考えすぎだよ(笑)」

 日本盤の初回限定盤スペシャル・パッケージには、ギター・ピックが封入されている。モグワイは"演奏する者"もしくは、そうしたいと思っている者にシンパシーを抱いているのだろう。ぼくもかつては真剣にバンドをやっていた。当時の話を少し...。

 アシュ・ラ・テンプル(Ash Ra Tempel)というバンドが、「Flowers Must Die」という曲をやっていた。ぼくはこれをヒッピーに対する揶揄ととらえ、かつて自分がやっていたバンドで、"パンクは死なない"という意味をこめつつそれを"引用"して「Flowers Must Die (But We Don't)」という曲を作った(80年代前半のこと。自主制作カセットでしかリリースできなかった:笑)。『Hardcore Will Never Die, But You Will』というアルバム・タイトルを見て、それを思いだした(笑)...。スチュアートは、実に楽しそうに笑いながら、こう言ってくれた。

「それ、いいタイトルだね。聴いてみたいよ(笑)」

 うれしい...。ぼくも久々にバンドやりたくなってきた...けど、そんな時間がない(笑)。

 だから、その代わり、思いっきり彼らの音楽を聴く!


2011年1月
質問作成、文/伊藤英嗣
取材、翻訳/中谷ななみ


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モグワイ
『ハードコア・ウィル・ネヴァー・ダイ・バット・ユー・ウィル』
(Rock Action / Hostess)

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