シーロウ『ザ・レディ・キラー』(Warner / Warner)

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 小さな小さなサブジャンルの好みには的確に対応していくが、広範囲にわたってリスナーを引き付けるアクトが少なくなったインターネット時代の現在。あえてそれに一番近い存在といえば、レディー・ガガなのだろうが、根っからのインディー・リスナーからは強烈な拒否反応を食らっている(元々はNYのアンダーグラウンド出なんだけどなあ)。

 まあ、それはいいとして、やっぱりどんな人でも共有できるポップ・ソングが欲しい。とみに昨今そう感じる。そこへきて、2010年のシーロウ(Cee-lo Green)は圧倒的なまでの存在感を放っていた。

 先行シングル「F**k You!」のPVがネットにアップされるやいなやウェブメディアやブロガーの話題をかっさらい、UKチャートではNo.1を獲得(USでは最高17位)。いやいや、それにも納得の楽曲なのだから。伸びやかでソウルフルな歌声が素晴らしいのはこれまでのキャリアで既に証明済みだが、スウィートなコーラスや明るくファンキーな曲調は2010年屈指のクオリティのポップ・ソング。そして何より、悲しくもコミカルなコンプレックスをぶちまけたリリックには抱腹絶倒しつつも世の男性の多くが共感したはずだ。

 そして、ついに届けられたアルバム『The Lady Killer』は頂点まで達した期待を一切裏切ることは無かった。オープニングの「The Lady Killer Theme(Intro)」から、007を気取ってみるものの、結果としては小芝居的(笑)。だが、それがこの上なくいい。コメディアン的な気安さがリスナーへの敷居をぐっと引き下げることに成功し、アルバムのイントロとしてはこれ以上なくリスナーを引き付けるものだ。なぜなら、彼のソロとして3作目となるこのアルバムは、クラシックなブラック・ミュージックのエッセンスを濃縮還元したようなロマンスと内容だったのだから。往年のモータウンの名曲や、レイ・チャールズにカーティス・メイフィールド、スモーキー・ロビンソン、オーティス・レディング、更にはアース・ウィンド・アンド・ファイアやマイケル・ジャクソンまでを彷彿させるキャッチーさには、もはや無条件で身を委ねるしかなくなるはずだ。

 プロダクションにおいても豪華なメンツを揃えているのだが、今をときめくR&Bのプロデューサー陣のみならず、ブロック・パーティーやフローレンス・アンド・ザ・マシーンなどを起用するところがインディ・リスナーとしては注目ポイントだろう。

 タイトル通り一貫してラヴ・ソングを集めているが、あくまでも自身の三枚目キャラを前面に出していて全くキメ切れていない(当然確信犯なんだろうけど)ところが現代的で痛快。ナールズ・バークレイ「Crazy」の特大ヒットはあったものの、グッディ・モブ時代から付きまとっていた影が一気に消え去ったこのアルバムで、シーロウはギークだけのものから世界のポップ・シーンを席巻するスターになったのだ(三枚目だけど)。

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