ブロンド・レッドヘッド at SHOWBOX AT THE MARKET (in SEATTLE) 2010/11/24(現地時間)

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 ヴェニュー(ライヴ会場)に入った途端、度肝を抜かされてしまった。会場全体、ステージ上だけでなくオーディエンスのスペースまでも、深いスモークに包まれているのだ。目をこらしてステージをみると、背面に多数の金色のパラボラアンテナのような反射鏡がこっちを向いており、それが天井や壁に設置されている小さな紅いライトを照らされて怪しげな色彩を会場全体にもたらしている。一般的なライヴより、幾分に濃い人工の霧と不気味に光る人工の光によって、ブロンド・レッドヘッド(Blonde Redhead)がステージに現れる前から、既に妖艶な雰囲気になっていた。

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 そんな中、何気ない顔でステージへとメンバー3人が登場する。ギターおよびドラムのパーチェ兄弟こそ普通だが(それでも異様な熱気を醸し出している)、フロントマンのカズ・マキノが、明らかに異様だ。ノースリーブのシックな洋服を着ているが、どこかの国の祭司のような無表情かつ冷淡な顔をしたお面をかぶっている。それに、醸し出す熱量があからさまに、こちらへと直接的に伝わってくる。音が鳴らされる前から既に、会場は彼らの醸すサイケデリアに酔いしれている。

 どんな曲から始まるのだろうと思っていると、始まったのは、新譜『Penny Sparkle』終盤の「Black Guitar」だ。まろやかで、それでも確かに、良い意味での薄気味悪さをもったこの曲から始まるとは。開始早々、マキノのパフォーマンスに息を呑んでしまう。奇妙なお面をかぶりながらボーカル・マイクをお面の中まで入れて、怪しげに歌っている、かと思えば、歌の無い場面では、まるで何かに取り憑かれたシャーマンであるかのように妖絶に踊って、いや、舞っている。目と心を同時に奪われているも束の間、新譜の一曲目「Here Sometimes」へと繋がれる。カズはお面を脱ぎ捨て、渾身の表情を浮かべている。相変わらず舞いは完璧だ。まるで何かの儀式じゃないか。

 続いて「Dr. Strange Love」「Spring By Summer Fall」と言った『23』からの曲、「Oslo」「Will There Be Stars」と言った新譜からの曲、「SW」(『23』収録曲)、「Spain」「My Plants Are Dead」と新譜からと言ったように、概ねこの2枚のアルバムの曲が交互に演奏される。この間で「ありがとう」と言った簡単な挨拶を除いて、どのメンバーからのMCも一切、ナシ。でも、正直に言って、僕を含めて、会場の誰もがそんな事に気付いてはいなかっただろう。それくらい、彼らの鳴らすサイケデリアに我々は耽溺していたのだ。照明が更に、惨たらしく光ったかと思うと、「Not Getting There」「Penny Sparkle」が続けてプレイされ本編は終了。

 メンバーが舞台を降りるや否や、アンコールの声が会場を包む。「ブロンド! レッドヘッド! ブロンド! レッドヘッド!」。まだまだ夢から覚めるには早いのだ。遂には、興奮し切ったオーディエンスたちが、足踏みまでしだすではないか。

 4分くらい経ってから出て来た彼らは本編と比べていくらか穏やかな表情になっていた。リラックスしているのだろうか?いや、「23」が突然鳴らされているのを見ると、どうやらそうでもないようだ。不気味な熱量はそのままに、よりこちらに歩み寄った3人が鳴らすグルーヴに、オーディエンスも舞わないはずがないだろう。まるで、(繰り返す表現になるが、それでも)何かの儀式かのように、会場がサイケデリックに酔いしれる。「Melody Of Certain Three」のあらゆる不条理を包み込んだかのような、大轟音のノイズで終演。

 1時間半に及ぶ、華麗で異様なサイケデリア。まさに大圧巻のショーだった。

セットリスト

1. Black Guitar
2. Here Sometimes
3. Dr. Strange Love
4. Spring By Summer Fall
5. Oslo
6. Will There Be Stars
7. In Particular
8. SW
9. Spain
10. Falling Man
11. My Plants Are Dead
12. Not Getting There
13. Penny Sparkle

Encore

1.23
2.Equus
3.Silently
4.Melody of Certain Three

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