マニック・ストリート・プリーチャーズ at 新木場スタジオコースト 2010.11.26

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photo by Mitch Ikeda

MANIC STREET PREACHERS


俺達はみんなが聴きたい曲をやる
というのが基本的な姿勢だよ


 ナノムゲンでの来日キャンセルから3年余りしか経ってないのに、「待望の」と言いたくなるのは何故だろうか? それは、マニック・ストリート・プリーチャーズというバンドが、常に批評精神を持って行動しているからだと思うし、だからこそファンも熱心に追いかける。ひとつひとつの言葉には必ず意味があり、耳を傾けると彼らの熱いソウルが伝わってくるから、根強い人気があるのだ。そしてマニックスは、そんなファンに対して全力で応えてくれる。それが例え矛盾に満ちていようが、正直で嘘偽りない言葉だからこそ感動してしまう。ライヴ当日に行ったインタビューで、オーストラリアでのライヴについて訊いたとき(オーストラリアは来日の前に回っていたところ)ジェイムスはこう答えてくれた。

「オーストラリアの場合は、99年か2000年以降行ってなかったし、"享楽都市の孤独"すら聴いたことがない人も居たりする。そういう意味では、良いとこ取りなセットリストになっているのも事実だけど、俺達はレディオヘッドが"Creep"を封印するような変な真似はしないし(笑)、そのせいで観客に媚びていると見られるかも知れない。でも、俺達はみんなが聴きたい曲をやるというのが基本的な姿勢だよ」

 この発言からも、マニックスがファンをリスペクトしている姿が窺い知れるはずだ。

 この日はスペシャルゲストとしてカール・バラーがマニックスのライヴ前に登場したんだけど、前述したインタビューでカールをゲストに迎えることになった経緯を訊いてみた。

「カールのことは、リバティーンズがヴァインズの前座をしていたときから知っているんだけど、初めて観たとき『こいつらめちゃくちゃロックンロールじゃねえか!』と思った。イギリスのスタジオでも何度か顔を合わせたりしているし。でも、リバティーンズというよりも、カールのソロアルバムが好きで、特に『So Long My Love』『Carve My Name』『Run With The Boys』が好きなんだ」

 これに関してはまったくその通りで、僕もカールのソロのほうが好き。そしてライヴもまさに「ロックンロールじゃねえか!」と納得してしまうものだった。でも同時に、音を聴かせることに重点を置いたライヴだったと思う。カールも、酒場の歌手みたいに練り歩いて歌声を聴かせてくれた。ライヴ中も笑顔が多く見られたし、リバのナンバーから「Don't Look Back Into The Sun」を披露したように、精神的にかなりポジティヴな状態だったのだろう。最後のほうになるとマニックス待ちな客が多くなってしまったのは残念だけど、僕はカールの元気な姿を見れて素直に嬉しかった。

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photo by Mitch Ikeda

 そしていよいよマニックスである。SEでオアシスやラーズが流れると歓声をあげる人も居て、かなり興奮度が高まっていた。エコー・アンド・ザ・バニーメン「Silver」をバックにメンバーが登場すると、空気が揺れるくらいの歓声が巻き起こった。オープニングの「You Love Us」で歓声は怒号に近いものに変わり、観客はモッシュと共に大合唱。曲が終わって、「ジェイムス!」「ニッキー!」と呼びかける声が観客から上がると、二人ともニヤリと笑みを浮かべたのが印象的だった(なぜかショーンは呼ばれず)。そのあとの「Your Love Alone Is Not Enough」「Motorcycle Emptiness」でも観客とマニックスの大合唱は続き、正直「飛ばしすぎじゃない?」と思ったけど、その止まらない熱というのがすごく祝祭感に満ちていて微笑ましくもあった。「Motorcycle Emptiness」が終わると、『Postcards From A Young Man』からの「(It's Not War) Just The End Of Love」が披露されたんだけど、正直この曲はオープニングのほうがよかった気がする。この日、『Postcards From A Young Man』からは3曲セットリストに入っていて、その全てがマニックスのライヴにおいてアンセムである曲の前に演奏されていたということもあってか、観客のノリにブレーキがかかったような印象もあった。これはバンド側に問題があったというよりも(演奏そのものは素晴らしかった)、この日来ていた観客の多くがまだ『Postcards From A Young Man』を消化しきれていなかったからだと思う。

 僕にとってのハイライトは、「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」。この曲が1番バンドが持つグルーヴの凄さを音像化していたと思う。ショーンのドラムプレイが光っていた曲でもあるし。この曲は、マニックスが歳を重ねる度に良くなっている。冒頭で引用したインタビューでの発言通り、今回の来日はオールタイム・ベスト的なものになっていて、新木場と横浜で違うところといえば、新木場では「Stay Beautiful」がアコースティックで披露されたのに対し、横浜 Bay Hallでは「The Everlasting」が披露され、「Autumn Song」が追加されたくらいだ。ほぼすべての曲で理想的なコール・アンド・レスポンスがあったし、文字通り「ライヴの魅力」というのが詰まっていた。

photo by Mitch Ikeda
manics_1011_live_3.jpg しかし、終演後にエコー・アンド・ザ・バニーメン「Killing Moon」が流れると、僕の中でひとつの疑問が沸いてきた。その疑問とは、「なぜそこまでして"Motown Junk"をやるのか?」ということだ。「そこまでして」というのは、もちろんジョン・レノンに関するあの一節のことだ。現在のマニックスは、「Motown Junk」を披露する際「ジョン・レノンが死んだときは嘲笑ってやった」という箇所を歌わない。それでも「Motown Junk」を演り続けるのは、ジェイムス曰く「俺達はレディオヘッドが"Creep"を封印するような変な真似はしない」からかも知れないし、ベスト・アルバム『Forever Delayed』の曲解説でジェイムスが言うように、「俺達がこの歌を演らなくなったときこそ、俺達が自分自身に対して完全な嘘つきになったとき」だからかも知れない。この言葉には、「俺達に嘘はない」というメッセージが込められていると思うし、先に述べたようにマニックスは正直なバンドだ。でも僕には、ライヴで「Motown Junk」を披露するマニックスの姿に「嘘」が見えてしまうときがある。もし、「リッチーを含めた4人の絆や人生を象徴する曲だから」だとしたら、『Journal For Plague Lovers』はいらなかったはず。『Journal For Plague Lovers』という作品は、リッチーとの友情や才能を祝うアルバムであると同時に、本当の意味で「これから俺達は3人で歩んでいくんだ」という認識をしたアルバムだと思うから(でなければ、次作として『Postcards From A Young Man』という貪欲でメジャー志向なアルバムは生まれなかったはず)。じゃあ自分達の原点を忘れないためかというと、それも違う気がする。「だったら歌詞はすべて歌えばいい」と思ってしまう。「ジョン・レノンが死んだときは嘲笑ってやった」という一節にこそ、初期マニックスの傲慢さが詰まっているからだ。もし原点を忘れないためだというなら、傲慢だった自分たちを忘れるべきではないし、そういう意味で尚更すべて歌えばいいと思う。つまり、「今」の「Motown Junk」には、ライヴで披露すべき確固たる意味がないのだ。唯一あるとしたら、「みんなが聴きたがっているから」だと思うのだが、どうだろうか? こんなことを、僕は帰りの京葉線で考えていた。

 でも、もし「みんなが聴きたがっているから」という理由だとしても、「それでいいかな」と思えそうな僕がいる。そもそも、マニックスが歩んできた人生からすれば、みんなが聴きたがっている曲が存在していること自体が奇跡だと思う。マニックスは完璧じゃないし、他のロック・バンドと違ってすごく泥臭い。カッコつけてもどこかズレていて、初期の頃はジョン・サヴェージの著作『イングランズ・ドリーミング』からまんま出てきたような感じだった。それが今じゃみんなに愛され、大歓声を受けて迎えられている。マニックスは特別なんかじゃない。彼らは「マニック・ストリート・プリーチャーズ」という物語を生きてきただけ。だから、僕達は「自分」という物語を生きればいい。マニックスが20年近くかけて我々に教えてくれたことは、「生きろ」ということだと思う。僕は「生きろ」というのがオリジナル・パンクのメッセージだと思うのだけど、マニックスも忠実にそれを受け継いでいる。「Motown Junk」の矛盾とかいろいろあるけど、そうやって矛盾を抱えながらも進んできたのがマニックスというバンドだし、それをこの先死ぬまで続けていくんだと思う。そして、そんな姿を圧倒的な存在感と演奏で見せられると、「やっぱり僕はマニックスが好きなんだな」と実感するのである。

 この日のライヴでは、「伝えたい」という気持ちがいつも以上に強く感じられて(MCでリッチーに言及することが多かったのもそのためではないだろうか?)、それは2010年9月におこなわれたクッキーシーンのインタビューでも語っていた憤りが関係しているのかも知れない。

《まだ俺は生きてるって証明するためだけに
/毎日おまえに絵葉書を送ってやるよ》(「Postcards From A Young Man」より)

 この言葉のような決意表明が、音として鳴っていた夜だった。

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photo by Mitch Ikeda


セットリスト

1. You Love Us
2. Your Love Alone Is Not Enough
3. Motorcycle Emptiness
4. (It's Not War) Just The End Of Love
5. Jackie Collins Existential Question Time
6. Roses In The Hospital
7. This Is Yesterday
8. Everything Must Go
9. Some Kind Of Nothingness
10. You Stole The Sun From My Heart
11. Ocean Spray
12. La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)
13. Suicide Is Painless
14. Motown Junk
15. If You Tolerate This Your Children Will Be Next
16. Stay Beautiful(Acoustic)
17. Faster
18. No Surface All Feeling
19. Golden Platitudes
20. Tsunami
21. A Design For Life


2010年11月
取材、文/近藤真弥

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