KIMONOS『Kimonos』(EMI)

|

kimonos_album.jpg This is 向井秀徳とLEO今井によるユニットKimonosのアルバム『Kimonos』は、ナンバーガールを経て現在進行形のザゼンボーイズを率いている向井秀徳のサウンドに似ていながらも、LEO今井とのコラボレーションの中で違う色が混沌として混ざり合い響くものとなっている。それら二つのバンドサウンドが好きな人はさらに楽しめるはずだし、苦手だった人はLEO今井のヴォーカルにより引き込まれるのではないだろうか。

 最初に一通り聞いて特に印象的だったのはラスト『Tokyo Lights』だった。もしもナンバーガールが続いてたらこんな曲もあったんじゃないかと思った。ナンバーガールのその向こうの景色のようなサウンドだと思った。が、もともとこの曲はLEO今井の曲でアルバム『City Folk』収録されているものだった。そして元の彼の方を聴いてみるとサウンドが全然違う。曲のテンポも雰囲気もロック調ではなかった。向井の音楽性とLEO今井の音楽性が混ざり合うとどことなく洋楽ロックテイストのようなものが孕まれていくようだ。

 文学性を持っていたナンバーガール的な歌詞に、LEO今井が持つヴォーカルと英語圏で暮らしていたその感覚からくる歌詞がお互いにしっかりと自分を殺さずにきちんと主張している音が心地いい。
 
 バンド名"Kimonos"はアートワークを大正時代の美人画(着物を着ているがピアノを弾いている女性など)を使う事から決まったという。西洋と日本が見事に調和したミックス感が自分たちの作っている音と合うと思ったことからと聞くとなるほどなあと納得してしまう。アルバムにあるのはやはりミックス感であるから。

 彼らがスタジオに入りいろんなカヴァーを試みる。その中からアルバムに収録されているのは細野晴臣「Sports Men」だが、この曲があると知らずにアルバムを聞いていて鳴りだした時には興奮した。いろんなカヴァーを聴いているしいろんなアーティストが歌っているのも知っていたが、とても前からそこにあったような当たり前の景色の様に存在していた。この二人によって演奏されているのがまるで決められていた様にアルバムに完全に溶け込んでしまっていた。

 このユニットが発表されて、ザゼン好きな僕は期待と不安が入り混ざった。彼らの狂うようなサウンドは圧倒的なカオスと正確なテクニックに裏づけられたリズムによって、シーンの中でも孤高の存在のようなものだと思っている。その中心である向井秀徳という彼のプロジェクトはどういう風に展開するのかと。

 杞憂に終わった。ずっと繰り返して聴き続けた。飽きない、聴く度に自分の中に溶け込んでいくのに新鮮な感じはなくならない。LEO今井のヴォーカルの心地よさも向井のサウンドも、ザゼンのようにいい意味で狂っていない。が、的確に今を照らしながらその中の景色をサウンドを色彩をミックスして見れなかった色や風景、聴けなかった音やその囁きを届けてくれる。

 一度でいいからこのアルバムを全曲通して聴いて欲しい。僕にはニヤリと微笑むThis is 向井秀徳とLEO今井が浮かんだ。このやられた感はとても幸福な気持ちだ。そしてまた再生してしまうのだ。

(碇本学)

*インタヴューはこちらに掲載されています。【編集部追記】

retweet