ガールズ「ブロークン・ドリームス・クラブ」EP(True Panther Sounds / Yoshimoto R and C)

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girls.jpg 昨年リリースのデビュー作『Album』は様々なメディアで2009年の年間ベストを総ナメにし、待望の来日公演には多くのファンが殺到、会場となった原宿アストロホールがギュウ詰めになった。あのステージではフロントマン=クリストファー・オーウェンの憂いに満ちた表情と、人の心を掴んで話さないメロディ、そして郷愁をかきたてるような爆音のホワイト・ノイズを直に感じる――それはまさに白昼夢のような、はかなくも甘美な体験だった。だがその一方で、演奏は危なっかしく、リズム隊のプレイが安定していなかったら見て入れたものではなかっただろう。しかも、ステージで披露された新曲(この「Broken Dreams Club」収録曲)も『Album』収録曲と同じく、直線的なメロディでこれまでの彼らとあまり代わり映えがしない印象。このバンドにこれから後はないのでは?、僕はそう感じてしまった。

 しかし、彼らから届けられたEP「Broken Dreams Club」を聴いて、考えを改めざるを得なくなった。確かに、クリストファーの切ない歌声やビーチ・ボーイズ直系のメロディ、女の子について歌うリリックのスタイルはそのまま。聴けばすぐにガールズと分かるはずだ。しかし、今回もプロデュースを手がけている、メンバーのチェット・Jr.・ホワイトの手腕は見事で、『Album』とは異なるベクトルが感じられる内容になっている。『Album』ではジザメリ風のギターが前面に押し出されていたが、「Broken Dreams Club」にはそれが一切なく、メランコリックなスパニッシュ風のギターや、新たに取り入れられたホーン、ドリーミーなフレーズを鳴らすキーボードなどで描き出されたのは、フリートウッド・マックから譲り受けたような華やかさだった。

 哀愁を漂わせるオープニングの「Oh So Protective One」や、美しい男女コーラスと大胆に変化するメロディが印象的な「Alright」など、リラックスしつつも新たな挑戦が感じられるが、特に注目すべきはそして、ラストの7分の大作「Carolina」。天上に上り詰めるような至福のイントロといい、ユニークなコーラスや電子音を導入した実験性といい、そしてビタースウィートなメロディといい、この作品を象徴するトラックといえるだろう。

たった6曲ながら、新たな境地に踏み込んだこのEPで、まだまだサン・フランシスコの空気を伝えてくれるワン&オンリーなバンドであることを証明したガールズ。次はどんな作品を届けてくれるかに期待したい。

(角田仁志)

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