シャロン・ヴァン・エッテン『エピック』(Ba Da Bing / Pastel Records)

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sharon_van_etten.jpg ニューヨーク発のSSW、シャロン・ヴァン・エッテン(Sharon Van Etten)によるセカンド・フルアルバムがBa Da Bingからリリース。前作はヴァシュティ・バニヤン辺りのトラッドなブリティッシュ・フォークを彷彿させる、アコースティック・ギターの弾き語りが主軸となっていた。本盤は転じて、アコースティック・ギターが中心なのはそのままに、周囲をピアノやリズム隊で囲んだバンドスタイルへと変貌した。ブリティッシュ・フォークからポップなフォークロックへと、編成がまるで違うため、前作のファンと今作のファンとでは温度差が生じるかもしれないが、文句なく本盤には名盤の太鼓判を押せる。
 
 励ましになるようなエモーションさとか、力強さとかは別に感じない。上の空というか、能天気でポップだ。ある意味、サッドな前作よりも、彼女の人間味が滲み出ていて人懐っこい。明るみが増したわけではないが、もう寄り添う友情のような音楽ではない。「かわいそうね」と慰めていたのが「まぁ、もっと苦労してる人もいるわよ」と少し突き放すような友情に変化したとでもいうか。
 
 閉塞的で内省的なスタイルが、少しだけ開放的になってきた兆候を見せている。途中経過を示すアルバムかもしれない。ただ散々ポップになったと言いつつ、本盤内のキラーチューン「Love More」は、まだどこかサッドだ。自身のあるべき姿勢に対して揺れ動いているような気がしてならない。揺れ動いているからこそ、人懐っこいのかもしれない。12月の初来日に備えて黙々と聴いているが、やはり素晴らしい...。

(楓屋)

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