ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート at THE VERA PROJECT (in SEATTLE) 2010/11/05(現地時間)

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つい先日、ピッチフォーク・メディアから、ニュー・シングル「Heart In Your Heartbreak」のリリースを発表した、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート。ニュー・アルバムのリリースは来年の2月前後ということも発表されており、それに際しての来日公演(は行われるのかはまだまだ不明だが、是非とも期待しておきたいところだ)に先駆けて、その「Heart In Your Heartbreak」や、今年、2月に行われた来日公演の後にリリースされた現時点での最も新しいシングル曲、「Say No To Love」をライヴで聴くことができた。

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 この日のライヴが行われた、ザ・ヴェラ・プロジェクトは、シアトルの画期的なヴェニューとして名高い。なぜなら、ライヴ鑑賞の年齢制限が非常に厳しい(アルコールを「常時」提供するようなハコでは、飲酒の認められていない20歳以下のキッズは鑑賞不可となる場合が多い)ここ米国のライヴ文化において、そのまさに飲酒の認められていないティーンズたちが経営するヴェニューであるからだ。経営者の若きティーンズたちが、会場内からアルコールを一切排除(もちろん酒気帯びも不可)することでクリーンなままに、全年齢のファンが音楽を楽しめるという画期的なヴェニューであるのだ。各種イベント(ここはライヴ・スペースであるだけでなく、ギャラリーも兼ねており、様々なアートが楽しめる空間なのだ)のキュレーターもそのティーンズが兼ねていることが多く、このザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートのライヴも今風の若者カップルが呼び寄せたような感じだった。

 しかし、オーディエンスはそんなキッズたちから、ヒップスター風のニヒルな若者、アート気取りのインテリ集団、子ども連れながらラッシュのバンTを着込んできたシューゲイザー玄人のようなお父さんまで幅広い層が来ていた。

 そんなオーディエンスも、ペインズが登場すると、ステージに釘付けに。フロントマンのキップ・ベルマンは、ベル・アンド・セバスチャンの『天使のため息』期のバンTを着ている。

「This Love Is Fucking Right!」から始まり、「103」、「Young Adult Fiction」と続く、半年以上前の来日公演の時の、セットリストと似た曲順ながら、彼らの演奏技術の上達ぶりに驚かされる。今年初旬よりも、格段にバンド全体のまとまりがしっかりしており、個々のプレイアビリティの若干の差もあり、少しバラバラにも感じた彼らのグルーヴは、よりタイトにかたまっている。全体の楽器のボリュームのバランスなども最適だ。「すごい進化だ!」なんて思いながら観ていると、先述の「Say No To Love」がプレイされる。このシングル曲がライヴでは化けた。音源で聴くと、良い意味で、マイルドなまろやかさももった温もりのあるサウンド(PVはより秋の暖かみに満ちているので是非、チェックしてほしい)だったが、ライヴではその温もりはそのままに、キップの轟音ノイジーなギター・ワークにシューゲイジングなプレイ・スタイルに「Say No To Love」と淡々と歌われる歌詞も相まって、残酷さをも表現していた。

 この曲が終わると、先のキューレーターを務めたのであろうカップルが、「この日のこの曲を待ちこがれた!」と言った感じで、最前列で完全に二人の世界に陥る。それを観たペインズがプレイしたのは「A Teenager In Love」!なんて素敵な空間だったんだろう。もちろん、キュレーター・カップルも二人の世界とペインズの世界の狭間で踊り狂っていた。

 その後は、「Come Saturday」(金曜の夜=Friday Nightのライヴだけあって、妙な説得力すらあった)、「Higher Than Stars」と立て続けにキラー・チューンがプレイされた後に、先の「Heart In Your Heartbreak」だ。まだ、音源がリリースされていないので、深い考察をしすぎるのは避けたいが、個人的にはタイトルで想像していたのと最近の彼らのシングル・ワークの流れから想像していたサウンドとは、だいぶん違って、「彼ららしさ」をだんだんと掴みかけていることが、如実に分かるタイトな曲だった。この曲がシングルやアルバム、そしてその後のライヴの中で、どう化けていくのか期待が高まる。

 そして、必殺のヒット・チューン、「Everything With You」、彼らのバンド名を冠した「The Pains Of Being Pure At Heart」がプレイされ本編は幕を閉じた。

 アンコールは、キップがオーディエンス、特にキュレーター・カップルに礼を言った後に、「この曲をシアトルでプレイできることを心から光栄に思う。君たちの郷土のスターであり、僕のヒーローでもある人に向けて」とのMCの後にプレイされたのが、「Kurt Cobain's Cardigan」! これにはシアトルのキッズ達も驚き、喜ぶほかは無い。最後は「Gentles Sons」で終了。

 キュレーターのキッズたちの努力と愛に溢れた素晴らしいショーだった。

 しかし、僕は蛇足ながら、あえて一つだけ突っ込みたい。

 近親相姦を思わせる歌詞(「This Love Is Fucking Right!」)を書き、歪んだ同性愛の関係を思わせるPV(「Everything With You」)を撮り、そして「ティーン・エイジャーの愛は神とヘロインとともに」(「A Teenager In Love」)なんて歌うバンドを、このヴェラ・プロジェクトが呼んでいいのか(もちろん、褒め言葉)! と。

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