キングス・オブ・レオン『カム・アラウンド・サンダウン』(RCA / SMJ)

|

kings_of_leon.jpg かつてアメリカの片田舎から鳴らされたプリミティヴなロックが、10年も経たないうちに世界を制覇する直前まで上り詰めるなど、誰が予想できただろうか。ましてやデビュー当時、彼らはけっしてシーンのエース的存在ではなかった。異端児といっても過言ではなかったが、これがドカンといきなり大ヒットしてしまうイギリスという国は、まあ不思議だよね。肝心のアメリカではほとんどスルーだったが、4枚目となる前作でいよいよ本格的にスターダムにのし上がった。老若男女共通のアンセムとして「Use Somebody」が幅を利かせ、「Sex On Fire」というド直球の名曲に全員が悶えた。日本ではセカンドからのシングル「The Bucket」がラジオでヘヴィー・ローテーションされたが、それ以降日本と英米の温度差は酷くなる一方だった。つまり、彼らは日本以外では理想的なキャリアでバンドとしての地位を高め、いまやほとんど唯一のエレポップ勢やR&Bにチャートで対抗できるギター・バンドである。他にいたとしてもキラーズとか、コールドプレイくらいか。

 成功の代償が小さいわけはない。初期の土にまみれたようなサウンドを愛するファンはKOLの現状に理不尽なまでに腹を立て、あとからついてきたファンと一緒にはなりたくないといわんばかりに、もはや彼らのファンではないことを宣言してまわった。ギター・サウンドが空間的な広がりを持った途端、「セル・アウトだ」と糾弾した。一方で音楽を日常のBGM程度にしか考えないKOLのリスナーは激増した。その環境に1番苛立っていたのは、ほかでもないメンバーたちである。盛り上がりの悪いフェスの観客にケチをつけ、バッシングをくらったこともあった。アンセム詰め込み放題の4枚目から新作でどのような変化を遂げるのかが注目された。初期のシンプルで粗野なプロダクションに戻すのか。それとも第二の「Sex On Fire」を書くのか。

 正解は後者だった。先行で解禁になったシングル「Radioactive」は「Sex on fire」の勢いそのままに「Use somebody」の雄大さが加わって、しかも祝祭感溢れるゴスペル風のコーラスまで聴こえてくる圧勝のアンセム。その前の冒頭曲、「The End」では彼らのいまの姿勢を表すかのように、どっしりとした迷いのないビートがリスナーの期待を煽る。

 さあ、これからどんな風景を見せてくれるんだ? 私は全曲聴いて大声で「最強だぜ、お前ら!」と叫びたくなったぞ。小細工や媚びは一切なし。ファースト原理主義者はこれで完全に置いてけぼりをくらうぜ。彼ら以上のギター・サウンドが世界中にひとつも存在しなかったという意味で逆にアンセム欠乏症に陥らせた前作よりも、はるかにアンセミックな怪物作。きっと売れ売れです。日本でもいよいよ本腰入れて売ろうよ。これで興奮しないなんて嘘だ。「Mary」は多くの野朗どもの涙を誘うだろう。「Back down south」でカントリー・ミュージックの偉大さを噛み締めるだろう。ピンと来ない奴も多いだろうな。でも楽しんだほうがいいに決まってる。インディ・ミュージックはここまで来られる可能性を秘めているから刺激的だ。王座揺るがず。

(長畑宏明)

*日本盤は11月24日リリース予定です。【編集部追記】

retweet