エヴリシング・エヴリシング

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EVERYTHING EVERYTHING

ポップへの愛は抱きつつ、つい惹かれちゃうんだよね
ストレンジな要素を入れちゃうことに


忙しなく跳ねまわるメロディとファルセット・ヴォイス、マス・ロック的な複雑な構成を魅せるバンド・サウンド。コーラス・ハーモニーは奇妙さも内包しながら神々しい響きもときおり魅せるが、唄われる歌詞にも二重三重の知己に富んだ意味が委ねられ、その音はファンクともソウルフルともプログレッシブとも形容しうるし、そのうえポップでキャッチーなところも兼ね備えていて...。

マンチェスター出身のニューカマー、エヴリシング・エヴリシングは、目新しさという点で長年低迷と目されている英国ロック界のなかで圧倒的な存在感と貴重なオリジナリティをもった、まさしく待望のバンドと位置付けることができるだろう。いい意味でのヒネくれ方に、演奏力も表現力も新人離れしている。

最高のタイミングで日本限定リリースされたミニアルバム「Schoolin'」と、楽曲の複雑さはそのままに激しくエモーショナルに鳴らされたサマーソニックでのパフォーマンスで、"英国らしさ"にうるさい日本の音楽ファンの心も一気に鷲掴みにした彼ら。少し遅れての掲載となってしまったが、サマーソニックの翌日、渋谷Duo Music Exchangeでのライブ直前にヴォーカル/キーボードのジョナサンと、ベース/キーボードのジェレミーに話を聞いた。


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まずはサマーソニックでのライブ、お疲れ様でした。とても大きなインパクトを日本のファンに与えたようですけど、演奏していてどうでしたか?

ジェレミー(以下JE):楽しかったよ。思った以上にみんなが僕たちの曲を知ってくれていたことが嬉しかったな。

ジョナサン(以下JO):本当にたくさんの観客が観に来てくれて驚いたよ。

音源を聴いたときも驚いたし、ライブでもそうなんですけど、複雑でテクニカルな楽曲が多いですよね。どんな練習を積み重ねているんですか?

JO:いつも頑張ってるよ(笑)。レコーディングでもライブでも、あまりにたくさんの要素を詰め込みたくなっちゃうし自分でもちょっとクレイジーだなって思うんだけど、そういう気持ちを抑えることなく、できるかぎりシンプルにまとめることは意識しているね。

JE:(バンド活動は)長年やっているから多少難しいことも自然とできちゃうというか、これこそが僕たちのあるべき姿で、そういう今の自分たちをどう表現するかが勝負になってくるかと思っている。

長年、と仰ってましたがバンドを結成してどれくらいになるんですか?

JE:10代のころから楽器は触ってるから、音楽自体はたぶん10年以上は続けているね。

JO:今のバンドはまだ2年ぐらいだけど。

JE:僕ら、それまでは各々ほかのバンドもいろいろやっていたから。

イギリス出身で、曲展開が複雑で歌詞もちょっと捻くれていて...となると、日本の音楽ファンはすぐにXTCを連想してしまうんです。実際、日本のメディアがあなた達のことを紹介する際にも、彼らの名前が比較対象としてよく挙がっています。そのことについてはどう思いますか?

JE:前から少しくらいは聴いていたけど、別にそこまで熱心に入れ込んでいたわけではないんだよ。

JO:イギリスでも僕らについての話になるとよく名前が出てくるのもあって、今は好きだし多少のシンパシーも抱いて聴くようになったけどね。いい音楽だし。

JE:若いころは彼らのレコードもぜんぜん持ってなかったけど、今はそれなりに、かな。

ちなみに彼らのどの曲がお気に入りですか?

JE:「Helicopter」に...

JO:「Senses Working Overtime」もいいよね。

JE:「Sgt. Rock Is Going To Help..."You"」だっけ? ああ違う違う、"Me"だ(苦笑)。すごいギター・プレイしてるよね、あの曲。

なるほど、どれも初期の曲ですね。皆さんはまだ世代的にはお若いのに、実に多種多様な音楽の影響が垣間見えます。R&Bにヒップホップにロックに...。プログレもお好きらしいですよね。

JO:たしかにいろんなものが好きだね。重要なのはメインストリームのポップも、プログレみたいな奇妙でレフトフィールドな音楽も分け隔てなく聴いているということ。どちらも違いがないというか、音楽であるという点において同じもののように思えるんだよね。

その捉え方は興味深いですね。

JE:そういう聴き方に対しては、イギリスの音楽ファンや...特にプレスの人間たちは同じ見解ではないだろうね。彼らはクールなものとそうでないものを凄く区別したがるけど、僕らにはそんなの関係ないことだよ。

日本だと、多くの音楽ファンやミュージシャンがレディオヘッドをきっかけにしてレフトフィールドな音楽に対しての理解を深めていきました。あなた達も彼らのファンだと伺ってますが、実際どのような掘り下げ方をしていったのでしょう?

JE:うん、やっぱりレディオヘッドが出発点だね。特に『Kid A』。あれにはいろんな音楽の要素が入っているよね。たとえばマイルス・ディヴィスみたいな変わったエレクトリック・ジャズとか、エイフェックス・ツインやクラフトワークのようなエレクトロニカから...。あの作品がそういった音楽を聴いていく入口になったとも言える。

JO:あとはアメリカのポスト・ロックが大好きなんだ。スリントにトータスに。あとはイギリスのバンドだけどモグワイとか。大学で音楽を学んでいたのもあって、勉強でも音楽、趣味でも音楽、もう四六時中音楽漬けみたいになっていてさ。やっぱりそういう環境になると、次々にあれもこれもって手当たり次第に聴いていくわけで、そういう実験的な音楽についつい深入りしていくものだよね。

今挙がったのはさっきの話でいうところの「クール」な音楽ですよね。先ほど、クールなものもそうでないものも分け隔てなく聴くと仰ってましたけど、どのようにしてそのようなアティチュードを抱くようになったのでしょう?

JO:音楽について学んで、周りをミュージシャンで囲まれて。そうなってくるとスタイル云々でどれがクールでどれがグッドとかじゃなくて、すべてOK、音楽としていいか悪いかって感覚になってくるんだよね。

JE:アメリカのR&Bミュージシャン...R・ケリーやデスティニーズ・チャイルド。最初は彼らを聴くことに対してちょっとバカらしいイメージを勝手に抱いていたけど、いざ聴いてみると気づかされるんだ。なんて凄いリズムだ、メロディーだ...、ってね。あれはもう奇跡的だよ。

JO:ポップはアホらしいって言う人もいるけど、僕たちはどの音楽も同じ"音楽"として同じ耳で聴いている。そういう音楽から実際に影響を受けているしね。

そういったスタンスで音楽を聴きこんでいくなかで、どうして今の、どちらかといえば技巧派寄りなスタイルを選択するようになったのでしょう?

JE:自然に、だね。

JO:うん、自然にそうなってしまったとしか言いようがない。たしかにポップ・ミュージックのもつ繰り返し方、常套句の盛り込み方、公式...みたいなものも好きだし。ポップへの愛は抱きつつ、つい惹かれちゃうんだよね。ストレンジな要素を入れちゃうことに。そうすることで初めて僕たちが音楽活動にエキサイトできるんだと思う。


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日本限定でリリースされたミニアルバム「Schoolin'」についてお聞きしたいのですが、収録曲をざっと見渡して、どの曲もおおよそ普通のポップっぽくないタイトルなのがまずは興味深かったです。

JO:このミニアルバムには最近作られた曲もけっこう昔の曲も収められているんだけど、他の誰かが産み出すものとも違う斬新なアイディアを取り入れて、唯一無二なものを作りたいという意識は今も昔も変わりない。そういうスタンスで曲作りをスタートしていって、楽曲自体は最終的にポップで聴きやすい方向に落ち着いても、歌詞に関しては割と一番最初に決めたアイディアが最後まで残ってしまうもので。だから、奇抜な要素がそのまま通っちゃうんだよね。でもさ、「アイラブユ~」とか「太陽がデカくて綺麗だね~」みたいなこと歌っていてもバカらしいし退屈だろ(笑)? 出来あがったCDを誰かが手にとって曲名を目にしたとき、「なんじゃこりゃ!」「何歌ってるんだコイツら!?」ってなったほうが面白いじゃん。そういうのを目指していきたいね。

「Luddites And Lambs」における"Luddites"という言葉の用い方がとても興味深いです。「怒りの労働者!」みたいな意識があなた達にもあるんですか?

JE:いやいや(笑)。イギリスではもともと、産業革命のときに機械を破壊する労働者を指す言葉だったんだけど、今は少し違う意味になっているね。

JO:モダン・テクノロジーを好んで使いたがらない人たちに当てはまる言葉というか。僕みたいなね。

JE:僕は違うけどね!コンピュータとかバリバリ使ってるよ、ちょっと苦手だけど(笑)。

「Riot On The Ward」におけるアカペラは、聴いていてビーチ・ボーイズにおける「Surf's Up」を連想しました。

JE:いい曲だよね...。その喩えは驚いた。フンフーン...(「Surf's Up」のフレーズを鼻歌しだす)。

JO:声が好きなんだよ。クワイア・ミュージックもそうだし、デスティニーズ・チャイルドやビートルズのもつポップなコーラスの重ね方もそう。そういうヴォーカルで表現することへの興味を最大限に発揮してみたら面白いかなって思って取り組んでみたんだ。

「Everything Everything」といえば、アンダーワールドにも同名のライブ・アルバムがありますが、このバンド名にはどんな思いが込められているのでしょう?

JO:実はそんなアルバムがあることを知らなかったんだよね。あとで気づいて。本当に偶然! でも今は彼らのこともそのアルバムも好きだよ。

JE:言葉のもつ字面や響きが気に入ったっていうのもあるけど、オプティミスティックで肯定的で、どこにでも行けるような無限の可能性も感じられて。そういう感覚が僕たちの名前には込められていると思う。

アンダーワールドもいまやクラブ・ミュージックの大御所ですが、あなた達も自らの楽曲のリミックスをたくさん収録していますよね。手掛けているリミキサーたちのことについては正直詳しく知らないのですが、おそらく彼らも若くて才能溢れる方たちと推測しています。あなた達とクラブ・ミュージックとの関係、繋がりについて教えていただけますか?

JO:自分たちの音楽にクラブ・ミュージック的な要素を入れるのって実はそんなに得意じゃないんだ。だからリミックスによって曲に激しく踊れるような要素を入れてみたいというのもあるし、他人の解釈によって僕らの曲が刷新されることにも興味がある。そういうのって興奮するよね。

JE:作り込んでいく過程で曲を聴き込んだりするでしょ。そうしていると飽きちゃったりするからさ。そこで外部から新鮮な意見を取り入れて、自分たちでも「これ面白いね!」ってなったりね(笑)。

JO:リミックス・バージョンのほうが気に入ったりすることもあるし。

JE:(「Schoolin'」EPにリミックスが収録されている)Visions Of Treesは元からの友達だし、ロンドンのInvisibleってバンドにお願いしたこともあるんだけど彼らも友達。といっても、いつも知人友人に頼むわけでもなくて、面識はないけど気になる人たちにメールで依頼することもあるよ。

待望のフルアルバム『Man Alive』もリリースされますが(注:インタヴュー時点ではまだリリースされてなかったが、輸入盤は既にリリース済み。国内盤も12/8にリリース決定!)、どういった内容になっているのか教えてください。

JO:ああ、いいのか悪いのか知りたいの(笑)?

いやいや(笑)! いいのはわかってますっていう前提で。

JE:「Photoshop Handsome」も含めて、過去のシングルが結構入っているね。あとは、よりアップビートな感じになっていたり、古めかしかったり新しかったり、様々な要素が入っているし。あと、学生のころから曲作りに関しては完璧に作り込もうとするところが多かったけど、今回はインプロヴィゼーションの一発録りみたいなことにも挑戦したりね。自分たちにとって新鮮ではあったけど、正直怖かったってところもある...(笑)。ラジオで流れている僕らの曲から想像するものよりずっとシリアスな面もあって、みんな結構驚くんじゃないかな。楽しみにしていてよ!

 

2010年8月
取材、文/小熊俊哉
通訳、質問作成協力/伊藤英嗣

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