エドウィン・コリンズ

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EDWYN COLLINS

レコーディングのやり方からも
本当にオリジナルな音が生みだされてきてると思う


日本では、元オレンジ・ジュースの中心人物ということから、いわゆる「ネオアコ」イメージでとらえられることの多いエドウィン・コリンズだが、正直「日本におけるネオアコ・イメージ」とオレンジ・ジュースは、相容れない部分も少なくなかった。たとえば今このサイトに掲載されているインタヴューだけでも、マニック・ストリート・プリーチャーズザ・ドラムスが嬉々としてエドウィンについて語っている...なんて事実からも類推されるとおり、彼が80年代以降現在に至るさまざまなバンドたちに与えた影響は、あまりに大きい。

90年代なかばには、傑作シングル「A Girl Like You」を含むサード・ソロ・アルバム『Gorgeous George』を世界中で大ヒットさせている。その曲が1994年から1995年にかけてのオン・エア・チャートを席巻しまくった本国UKやヨーロッパ(当時UKにいる機会が多かった筆者だが、本当にもうそこらじゅうでかかっていて、びびった)はもちろんのこと、アメリカでもバーナン(Bar/None)という極小インディーからのリリースでありながら全米トップ40に食い込み、ビルボードなど業界誌でも騒ぎになっていた。ここ日本でも、メジャー傘下ながら最初はインディー・ディストリビューションで数千枚を売り切り、少しあとにメジャー・ディストリビューションで数万枚単位の再発がおこなわれた(筆者=質問作成者がやっていたレーベルだし、数字的にもまったくウソはないですよ:笑)。

00年代に入ると、その90年代に自ら設立したスタジオでリトル・バーリーやザ・クリブスのプロデューサーとしても敏腕をふるいつつ新しいアクションが期待されていた。ところが今から数年前、突然脳出血で倒れ、存命さえあやぶまれていたのだが、ついに奇跡の復活をとげた。

そして最高のニュー・アルバム『Losing Sleep』を完成させた!

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まずは、すでにユーチューブにアップされている、アルバム・タイトル曲「Losing Sleep」のクールなモノクロ・ヴィデオ・クリップを見て/聴いてほしい。

この曲のレコーディングに参加した(リトル・バーリーの)バーリー・キャドガンも映っているようだ(彼らの音楽は好きだけどヘヴィーなファンではないので、はっきりわからなくて、すみません:汗)。そして、エドウィンの作品には『Gorgeous George』のころからずっと参加している(90年代なかばの、今のところエドウィンの最後の来日公演にも同行した)元セックス・ピストルズ、ポール・クックの勇姿も!

アルバム『Losing Sleep』全体には、ポールやバーリーのみならずザ・クリブスのライアン、同じく現ザ・クリブス/元ザ・スミスのジョニー・マー、ほかにもザ・ドラムスや(同郷グラスゴー出身で、オレンジ・ジュースの再発をドミノがおこなっていることを考えた場合レーベル・メイトともいえる)フランツ・フェルディナンドの面々、さらには盟友ロディー・フレイム(=アズテック・カメラ)といったキラ星のようなミュージシャンたちが参加して、エドウィンをいい形で盛りたてている(ちなみに、取材後にCD現物を見て気づいたのだが、元アズテック・カメラのドラマーでフリッパーズ・ギターの作品でも叩いていたデヴィッド・ラフィーも参加している。同名異人でなければ)。

というわけで、このアルバムおよびエドウィンの現状にせまるべく、電話インタヴューをこころみた。エドウィンと並んで、グレース・マックスウェルという女性も登場している。

彼女はエドウィンの「姉さん女房」的存在。エドウィンとにあいだにひとり息子がウィリアムがいる家庭内のみならず、ソロ・アーティストとなってからのエドウィンの音楽活動面もずっと仕切ってきたマネジャーだ。90年代に先述の大ヒットを飛ばしたあとも、エドウィンはビッグなマネジメント・オフィスとは契約せず、プライヴェート・マネジメント・スタイルで、DIY的に活動をつづけている。グレースは、公私ともにエドウィンのよきパートナーであり、脳出血後の最初は朦朧とした状態から始めてエドウィンが作りあげた新作『ルージング・スリープ』の、ある意味最も重要なスタッフといえるだろう。

基本的に「反保守派」であるエドウィンは、90年代なかばの段階でも、彼女との「籍」を入れていなかった。今はわからないけれど...というか、日本盤ライナーノーツ(無署名ではあるが力の入ったいい原稿。おそらく海外のライター氏によるものだと思う)によれば、エドウィンが脳出血で生死のあいだをさまよったあと、最初に発することができた言葉は「グレース」「マックスウェル」「イエス」「ノー」だけだけだったという。泣ける話ではないか。

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今回は(通訳者である)わたしをとおしてインタヴュー...って感じですが、質問作成者が、とにかく「よろしく!」と言ってました。あなたのCDも出させてもらっていた(彼が90年代にメジャー傘下で主宰していた)レーベルが親会社の都合でなくなってしまう寸前にクッキーシーンという音楽メディアを始め、彼は今もそれをつづけています。

グレース・マクスウェル(以下G):彼のことはよく覚えているわ。

エドウィン・コリンズ(以下E):うん、そのとおり。よく覚えてるよ。

G:彼に、「ハロー!」って言っておいて。

はい、伝えておきます! あれから、つい最近ツイッターを始めるまで、あなたに直接連絡できず大変失礼であったと深くお詫びしつつ、今度また是非直接お話ししたいと質問作成者の伊藤は申しております...。

G:そうね。今、何とかうまく日本に行けるように、調整しようとしているのよ。年明けあたりに行けたらいいんだけど。

E:うん、そうだね。行けるといいな。

それはうれしいニュースですね!

G:まだ決定してはいないのよ。でも、日本にエドウィンが行けるよう、できる限り努力してるわ。

我々も努力したいと思います! あなたが数年前倒れたときは、ケイゴ(・オヤマダ)をはじめ、日本のファンは本当にみんな心配していました。2007年にリリースされた前作『Home Again』は、その病気の前に録音されたものでしたよね? 今こうして、それ以降に制作されたニュー・アルバムが届き、内容も素晴らしく、本当にうれしいです! もうすっかりお元気、ですよね?

E:うん。曲としては「Losing Sleep」を最初に完成させたんだけど、すごく集中にいいと思ったんだよね。

この曲を聴いていると集中できるということ? それとも、曲を書いていたことが、あなたの集中力を養ったっていうことですか?

E:ぼくの集中力...って感じかな。最初は本当に大変だったから...。

G:仕事をすることは、エドウィンの回復にすごく役に立ったと思う。

E:うん、すごくよかった。

最初聴いてまず思ったのは、すごく若々しいというか、ラフな部分はラフなままで...みたいな勢いを強く感じさせるということです。こんな意見について、どう思いますか?

E:今はすごく、スピードの速い曲が気に入ってるんだよね。なぜって訊かれても、理由はわからないけど。スピードが速くて、荒々しい曲。シングルにもなった「Losing Sleep」は、ちょっとノーザン・ソウル・ミーツ・パンクみたいな曲だよね。自分がどこに向かっているのかをはっきりできたと思う。

若々しいといえば、9曲目「Over The Hill」の歌詞は、あなたがいつまでもいい意味で子どものような心を持ちつづけているというか、決して枯れないということの証明のような(笑)。

E:もちろんぼくは、Over The Hill(人生の盛りを過ぎた)じゃないけど...。

G:(笑)

E:むしろ、子供に帰ってきているというか...(笑)。

(笑)この冬に、ドミノからオレンジ・ジュースのボックス・セットが出るみたいで、それも楽しみにしているんですが。

G:7枚組のディスクセットになるのよ。DVDも収録されてるわ。今までリリースになったすべてが含まれたセットになってるの。ヴィデオのセッションなんかもね。すごく素敵なパッケージを作ってくれてるわ。前にはこういうものが出たことがなかったから、ファンにとってはすごくうれしい企画だと思う。

ちなみに、DVDってどんな内容なんですか?

G:Dada With (The) Juiceってタイトルの1994年のライヴ映像や、BBCのTV番組に出演したときの映像、それにPV。すごくいいボックス・セットになってるわ。

ということは、日本では昔LD(レイザー・ディスク)として発売されていたものも入ってるんですね! これはやっぱり買おう、とりあえず一応日本のDVDプレイヤーでも見られるかリージョン・コードなどを調べてから...(笑)。

E:ニューヨークのドミノの人が企画してるんだけどね。

なるほど! いい話だ...(質問作成者より補足:ドミノはオレンジ・ジュースのレア音源を00年代に再発してきた。ちなみに、90年代にエドウィンのCDを出していた日本のレーベルは、ドミノともライセンス契約を結んでいた:笑)。で、ニュー・アルバム『Losing Sleep』に話を戻します。これはあなたのすべてのソロ・アルバムのなかで、オレンジ・ジュースのファンに最も歓迎されるものとなっているのでは? と思ったそうです。

E:本当?

はい。「音楽的にオレンジ・ジュースっぽい」というよりも、どういうわけか若々しい勢いがあるという意味で。

E:うん、そうだと思う。シンプルで、それで強力な感じ。

G:確かに、それですごくフレッシュなアルバムになったわね。

大ヒットしたソロ・アルバム『Gorgeous George』(1994年)のころから前面に出はじめた「ストレンジな」サウンド作りも、今回すごくいい塩梅で発揮されていると思います。いかがでしょう?

E:うん、そのとおり。すごく奇妙(ウィアード)なアプローチを採り入れてる。たとえば、最後の曲...何だったかな...。

G:「Searching For The Truth」?

E:違うよ、『Gorgeous George』のだよ。ああ、タイトルが出てこない...。

G:ごめんなさい、思い出せないわ(笑)!

E:うーん、なんだったかな...(しばし考え込む)。ああいう変わったサウンドっていうか。


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 ここで解説しておこう...というか、ぼく(質問作成者)もタイトルを失念していたので(汗)再確認した。『Gorgeous George』ラスト・トラックは「Subsidence」(当時ぼくがつけた邦題は「沈滞」)。

 この曲は基本的にアコースティック・タッチのものだったけれど、たしか途中から変なノイズが入ってきて、まるで(いわゆるクラウトロックの)カン(Can)のような雰囲気になったような...。ぼくも記憶が定かでなかったため、エドウィンの勘違いだったらどうしよう、とか妙な心配をしつつ(?)先ほど当該CDを発掘して聴いたところ、やはりそうだった。2分30秒くらいのところから、その「奇妙なパート」が始まる。

 ちなみに、そのアルバム『Gorgeous George』の1曲目「The Campaign For Real Rock」も、かなりワイルドかつウィアード。『Losing Sleep』における「ラフな」音作りのイメージは、この曲の雰囲気に近いところもある。ちなみに、これは(言葉で書かれた...「大文字」の、もしくはヒッピー世代の)「リアルなロック」イメージを、徹底的に揶揄した曲だった。ヘヴィーかつ痛快。今久々に聴いて盛りあがってしまった!

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もうひとつ、オレンジ・ジュース云々と言ったのは、なんか今回は微妙に「バンド」っぽいな...と。『Losing Sleep』では、いろんな人たちと、ソングライティングや演奏でコラボレーションしています。それが「新しい」種類の...もしかすると今の時代にふさわしい「バンド」っぽさを醸し出しているのかも、と思いました。だから「決まった人たちと始終顔をあわせてて、いつも同じ人たちと音楽を作る」わけじゃないけれど、いろんな人たちの才能が溶けあって、エドウィン・コリンズ(という「バンド」)の世界を盛りたてている、みたいな...。

E:そうだね...。エンジニアのセブ(本名はセバスチャン・ルーズリー。エドウィンとは『Gorgeous George』以来のつきあいとなる。彼については、『Losing Sleep』日本盤ライナーノーツに詳細が)は、すごくエキサイティングで強烈なエネルギーを生み出せる人なんだ。...もちろん、ぼくもそうだけど(笑)。

ですよね(笑)!

G:エドウィンのスタジオはすごく独特なスタジオなのよ。(質問作成者の)伊藤さんも何度も来てたけど。だから彼には思い出せるでしょう(伊藤より:この下のほうで使われている「アーティスト写真」は、そのスタジオの一角で撮られてるっぽいけど...。違うかな?:笑)。彼が来てたころより、もっといい機材ががんがんに増えたって伝えておいてね。(マネジャーとしては)困ったことに、壊れやすいヴィンテージの録音機材でいっぱいになってるわ(笑)。そういうヴィンテージ機材からの影響もあったんじゃない?

E:そうだね。デジタル・スタジオにはない音になった。

G:レコーディングのやり方からも、そういう本当にオリジナルな音が生みだされてきてると思う。

E:うん、そのとおり!

参加した人たちについて、ひととおりうかがってもよろしいですか? まずはザ・ドラムス。彼らの音楽性からしても想像できたのですが、彼らは本当にあなたのことを尊敬してて...、まるで「子どもたち」みたいな感じじゃないですか? 今から20年前に、フリッパーズ・ギターがオレンジ・ジュースがそうだった以上に...。

E:「In Your Eyes」ってタイトルの曲だったね。ぼくとドラムスのジョナサンは、いったんその"瞬間"をとらえてからは、あっという間に曲を作りあげたよ。ぼくと彼らザ・ドラムスでいっしょに書いて、演奏した曲。次のシングルは、もしかしたらこのザ・ドラムスの曲になるかもしれない。

以前あなたがプロデュースも手がけたザ・クリブスのライアンやリトル・バーリーの人は、直接いっしょにやってきたという意味で、やっぱり子どもたちみたい? もっと悪ガキっぽいですが(笑)。

E:(リトル・バーリーの)バーリー(・キャドガン)はギターとベースですごく助けてくれたね。

G:バーリー? 彼は本当にすばらしい人ね。ツアーでも助けてくれてるし。

仲間って感じですか?

E:(笑)ライアンは2曲で参加してくれてるね。

G:彼らは、もうファミリーよ。ファミリー(笑)。

E:うん、そうかもね。

「子どもたち」云々と言ったのは、あなたの活動やこのアルバムから、いい意味で「いろんなことを新しい世代にひきつぐ」という感覚がうかがわれるからです。質問作成者も40代後半で(編集者&ジャーナリストとして)そう思って活動しているところはあるし...。でも、まだ若いもんには負けん、と思ってるところもあるとのことで...(笑)。

E:ぼくもそうだね(笑)。バーリーにもフランキーにもライアンにも。

G:えーっ、みんな若いわよ(笑)。

E:このアルバムは、ぼくにとってはセラピーみたいなところもあったかな(笑)。

なるほど、若い頃って、なんか一種のセラピーみたいにして音楽を作るところはあるじゃないですか。だからこのアルバム、素晴らしいって面もあるのかも...。で、今は若者にまじってクリブスにいる同じく中年(笑)ジョニー・マーの参加にも驚きました。

E:「Come Tomorrow, Come Today」だね。ジョニー・マーはすごく音楽に対して真摯な人だよ。彼が弾いてくれたソロはたったの1テイクだった。それが最高のソロだった。フェンダーのジャガーで弾いてたね。びっくりするようなソロだった。

G:あれはジョニーが書いてくれた曲なのよ。そこにエドウィンが歌詞とメロディーを載せたの。ジョニーがタイトルつきの曲をくれて、そこからエドウィンが歌詞を発展させた。

E:あの曲では、彼がコーラスも入れてるんだよね。


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 エドウィンがプロデュースしていたザ・クリブスつながりで、ジョニー・マーが参加するのも自然といえば自然なのだが、オレンジ・ジュースやザ・スミスの時代を知っている(当時から愛聴していた)者としては、おおいに感慨を覚える。レコード・デビューの時期を考えると、オレンジ・ジュースのほうがザ・スミスより数年早い。もしジョニーが(つまり、ザ・スミスが)オレンジ・ジュースに「影響を受けていた」という言質がとれるとおもしろい(笑)。というわけで、フジロックの際におこなわれたジョニー&オウガ・ユー・アスホール対談のあと、ちょっとテレコを再始動させつつ、単身ジョニーに尋ねてみた。

「以前オレンジ・ジュースのライヴに、本当によく行ってたんだよね(注:ザ・スミスのレコード・デビューは、オレンジ・ジュースが解散して間もないころ。つまり理論的には彼らのレコード・デビュー前から、よくオレンジ・ジュースのライヴに顔を出していたことになる)。ファーストからサードまで、全部素晴らしいアルバムだったよね! とくに『What's Presence!?』(という曲)とか、大好きだったよ(注:マニック・ストリート・プリーチャーズのジェームスもこの曲が好きだと言っていた。ちなみに、これはサード収録曲。でもって、ぼくはサードが一番好き。サード・アルバムはジジイ向き?:笑)」

 ずばり、彼らに「影響」されましたか? と尋ねると...。

「(ちょっと"腐れジャーナリスト"を警戒するような表情で:笑)いや、それはないかな...。というか、ぼくらは同じころにバンドを始めて、同じような音楽に影響を受けてきたって感じかも」

 同世代の仲間、みたいな?

「そうそう! まさにそんな感じ(笑)!」

 あと関係ないんですが、先ほどエドウィンが「バーリーにもフランキーにもライアンにも」と言っていた、まんなかの「フランキー」というのは、フランキー&ザ・ハートストリングス(Frankie & The Heartstrings)のメンバーのことではないかと思われる。

 彼らも、なかなかおもしろい...非常にいい若手バンドだ。彼らの日本編集ミニ・アルバムが某レーベルからリリース予定。そのうち1曲(ミニ・アルバムのタイトル曲にもなっている「Ungrateful」)のプロデュースを、エドウィンが手がけている。近々レヴューもしくはインタヴューという形で、このサイトでも紹介します。

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ザ・マジック・ナンバーズのロメオや、フランツ・フェルディナンドのアレックス&ニックは、ジョニー・マーほどのベテランじゃないですけど、あまり若者って感じでもない(笑)? というか、これもうれしい組みあわせでした。

E:アレックスが参加してくれた曲...(歌い出す)。すごく気に入ってるんだ。すごくオネストでシンプルな曲になったね。

G:ロミオも本当にすばらしいアーティストだと思うわ。すごくカジュアルにスタジオに立ち寄って、短い時間でみんな協力してくれたの。リラックスして、すごく楽にね。

元アズテック・カメラであるロディー・フレイムの参加は、またちょっと違ったニュアンスを持っていませんか? 彼とはもう30年来の仲間同士って感じで...。

E:「All My Days」って曲だね。ぼくがヴォーカルを入れて、彼がギターを弾いて、ぼくの息子のウィリアムがドラムを叩いている。モーリン・タッカーっぽいドラムかと...。

G:ヴェルヴェット(・アンダーグラウンド)のね。

なるほど! いい意味で素人...ポスト・パンクっぽい、トライバルなドラム! それにしても(90年代なかば、エドウィンたちミュージシャン、およびマネジャーとして同行したグレースらといっしょに、不可抗力で5歳くらいのころ来日した際は、質問作成者が子守をつとめていた:笑)ウィリアムが...。

G:それにしても、ロディー、素敵なギターを弾いてくれた!

E:グレッチで、最高のギターを弾いてくれたね!

ラスト前に置かれているその曲から、ラスト曲「Searching For Truth」に至る流れは、あまりに真摯かつ素直な歌で、涙が出るほど感動してしまいました。とくに「Searching For Truth」とか、あなたの曲で、これほど赤裸々なまでに素直なものはなかったのではないか、というくらいに...。変な言い方かもしれませんが、これはやはり「生命の危機を乗りこえた」者ならではのもの...と言えるのでしょうか?

E:実際、この曲は病院で書いたものなんだよ。

G:この曲以外は、3年ほど、全然作曲していなかったの。このメロディーの最初の半分だけ、まだ病院にいるころに頭の中で書いたのよ。病院を完全に退院する2日前、車に乗っていたら突然彼がこの歌を歌いだしたの。すごくオネストな曲よね。

「What Is My Role?」「Do It Again」「Come Tomorrow, Come Today」「It Dawns On Me」など、悩みながら、戦いながら生きている人たちへの賛歌みたいな歌詞が多くないですか? 少なくとも、ぼくはそう思い、深く感動してしまいました。そんな意見について、どう思いますか?

E:え、どの曲のこと?

G:いや、だから、アルバム全体の話よ。悩みながら生きている人たちを励ますような歌詞が多いって。

E:うん、そうだね。

G:普遍的なメッセージよね。

ソウルフルなポップ性も素晴らしく、これはズバリあなたの最高傑作と言えると思うんですが、いかがでしょう?

E:本当? すごくうれしいよ。すごく速くて強力なアルバムを作りたかったんだ。

G:すごく激しいレコードをね。他とはちょっと違うサウンドだとは思う。みんなが気に入ってくれたのは、すごく面白いことだと思うけど。

E:うん、そうだね。すごくうれしいけど。

そのうえ、エドウィンならではの、人間的な優しさ(ヒューマン・カインドネス)みたいなものも、すごく感じられます。

G:ああ...。実際(質問作成者の)伊藤さんはエドウィンのレコードを本当によく全部わかってくれている人だから、彼からのそういうコメントは、すごくうれしいわ。

E:うん、本当にありがとう、って伊藤さんに伝えておいて。愛と感謝をこめて。

いや、そんなこと聞くと伊藤は完全に恐縮してしまうと思いますよ...。弱っちいやつだから、うれしくて泣いちゃうかもですね(笑)。まあ彼のことはほっといて、最後に、今後の予定を教えてください。

G:ロンドンでギグをした後、またスタジオで別のバンドとレコーディング。それから11月にUKとヨーロッパ・ツアーに出るけど、最初に言ったように、来年はぜひ日本に行きたいわ。2月って今提案してるんだけど、みんな、お祈りしていてね。最後に日本に行ったのは、いつ?

E:...うーん、10年くらい前かなあ?

G:もっとかもよ(笑)。でもここ3年は何度も、「いつ日本に行けるのかなあ」って言ってたから、そろそろ行かなきゃね(笑)。

そうですよ、みんな待ってます!

E:うん、今日は、きみたちに...そして、日本のみんなに、本当にありがとう!

G:エドウィンにまだなるべく無理させたくないし、エドウィンはもともとインタヴューがあまり得意じゃないから(伊藤より:それは90年代の担当者としての経験で、ぼくにもわかってます:笑)、わたしがたくさんしゃべっちゃって、ごめんね。とにかく、ありがとう!

いえいえ、恐縮です。こちらこそ、ありがとうございます!

E:じゃあ、またね!


2010年9月
質問作成、文/伊藤英嗣
取材、翻訳/中谷ななみ


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エドウィン・コリンズ
『ルージング・スリープ』
(Heavenly / Hostess)
10月6日発売


*「Losing Sleep」のヴィデオ・クリップですが、バーリー・キャドガンもちゃんと映っていることが、リトル・バーリーの日本盤をリリースしているレーベルからの情報で確認できました! また、オレンジ・ジュースの7枚組ボックス・セットについているDVDは、残念ながらPAL方式で、日本の家電DVDプレイヤーでは再生できない、とのこと。しかし! パソコンではもちろん再生可能なはず(念のため、お持ちのパソコンでPAL方式DVDが再生できるかご確認ください!)。円高の現在、ドミノのサイトから買えばかなりお値打ちだし、送料を考えればアマゾンでもそれほど変わらない値段で購入できる。ちなみに、現状、このボックス・セットの日本盤リリース予定はない。しかし、輸入盤がなるべくきちんと日本の輸入盤店に流れるよう、できるだけ幅広いディストリビューションがおこなわれる予定とのことです。【10月4日(月)追記】

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