デトロイト・ソーシャル・クラブ

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DETROIT SOCIAL CLUB

もしデヴィッド・リンチの電話番号をご存知だったら
「僕がスコアつけますよ」って伝えてもらっていい(笑)?


UK北部のニューキャッスルから現れた大型新人バンド、デトロイト・ソーシャル・クラブ。アルバム『Exitence』のもつ音の黒さにサイケデリックなムードと重く崇高な演奏はすでにスタジアム・バンド級の貫禄で、NMEなど現地マスコミやオアシスを初めとした大物バンドの支持を得て早くも人気爆発の兆しを見せている。

デトロイト・ソーシャル・クラブはバンドという体裁をとっているが、ヴォーカルのデヴィッド・バーン(超有名なアチラのデヴィッド・バーンとはスペルが微妙に違う:笑)の実質的なソロ・プロジェクトである。フジロックで魅せた正にロックンロールな激しいステージングと、英国ロックの伝統のひとつである不良っぽい佇まいにインタヴュー前は正直若干ビビっていたが、実際に話してみると実にイギリス人らしい、気さくでよく喋るお兄さんでイメージとのあまりのギャップに面喰ってしまった。サービス精神とユーモラスなへらず口(いい意味で!)も一級品だが、アートについての教養の深さも垣間見せる好人物な彼とのインタヴューをお届けしよう。


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フジロックでのパフォーマンス、よかったです!

デヴィッド・バーン(以下D):ああ、僕らも最高にエンジョイできたよ。

唐突ですけど、他アーティストのライブはご覧になられました?

D:残念ながらあまり見ることは出来なかったんだ。金曜(7/30)の夜にミューズは少しだけ観ることができたけど、僕以外のメンバーが先に帰国するスケジュールになっていたから、土曜は自分たちの出番が終わったらバスに乗って帰らなくちゃいけなかったから。MGMTと、あとはマッシブ・アタック、エールは可能であれば観たかったね。

今回が初来日ということで、バンド結成のいきさつを伺いたいです。あなたのスタジオ・プロジェクトからバンドはスタートしたと聞いています。

D:世界のコッチ(東)側に来ること自体が初めてだったよ(笑)。イングランド北部のほうで僕はかつてスタジオをやっていて、地元バンドのレコーディングを手伝っていたんだ。バンドが使ってないときは自分が入って、曲を書いたりアイディアを出したり音をいじくったりしていたんだけど、それで作ったものをMySpaceにアップしたらマネージメントやレーベル関係者に興味をもたれて、それもあってバンドを組みたてていった。だから(デヴューまでの)流れとしてはオーソドックスなものとは逆なんだよね。でもある意味、そのやり方でよかったかなと思うのは、普通だったらバンドができて、それからどういう音楽を作るか考えて曲を作っていくんだろうけど、僕らの場合はとっかかりとして既に僕が作ったデモがあったので、サウンドとしてどういったものを目指したいか目標がハッキリしていたから結構やりやすかったかもしれない。

あなた以外のメンバーはどのようにして集められたのでしょう? バンドは6人編成と聞いていたので、今回のライブでステージに立っていたのが5人だったから少し驚きました。

D:僕を含めたオリジナルの6人のうち、僕以外の3人は前々から仲のいい友人で、そこに若手ふたりが加わってラインナップが形成された。その若手ふたりは僕のスタジオに前から出入りしていて、僕もいろいろと手伝ったバンドのメンバーだったんだ。さっき話したような、僕の音楽が音楽業界に興味をもたれているぜってネタも、説得力があるし彼らを引き抜くいい口実になったんだ(笑)。君の指摘どおりでごく最近メンバーがひとり抜けたんだけど、5人になって初めてに近いギグが今回のフジロックだったんだ。新しいスタイルをぶっつけ本番でやってみるには非常に大きなステージが巡ってきてしまったけど(笑)、いい形でやりこなせたと思う。ちなみに、抜けたメンバーとも友達関係は保てているよ。

今までの話で少し納得する部分もあったのですが、ライブの音とレコーディングの音には結構違いがありますよね。

D:僕が音楽について一番ガッカリさせられるのは、気に入ってライブを観に行ったバンドのライブがCDとそっくりだった...、ってパターンなんだよね。それだったら家のステレオで大音量で聴くのと大差ないわけだし。これは僕らの考えだけど、ライブにおいては、レコードにあるスムースで丸くてうまくまとまった音じゃなくて、もうちょっと尖ってささくれたった、エッジが効いてラフな音、その瞬間ならではの音。言うなれば、音のジャーニーだね。そのときでなければ辿り着けない地点というものをライブでは聴かせたい。その点、たしかにレコードのほうは割とカチっと仕上がっているところがあるかな。その辺はどちらも違うものとして、それぞれ区別して考えるよう意識しているよ。

では先にライブについて更にお尋ねしますが、あなたのパフォーマンスから相当ソウルフルなものを感じました。白いスーツの着こなし方から唄いっぷりまで、まるでエルヴィス・プレスリーのようでした。

D:Oh! ホホホン...(エルヴィスの真似をしだす)。どちらかというと白いスーツはグラム・パーソンズだよね(笑)。でも実はあれ、まだ二回しか着てないんだ! あれを初めに着たのはT In The Park(*スコットランドで毎年行われている巨大野外フェス)だったんだけど、日曜日なのに天気が悪くてみんな泥だらけになっているところにピッカピカの白いスーツを着た僕がノコノコ出てきたものだから「うげー! なんだよアイツ、あんなの着て」ってブーイングみたいな反応で迎えられたから、僕は「どうだい!」ってここぞとばかりキメてやったよ(笑)!

それはカッコいい! レッドマーキーがビッグなスタジアムになったかと錯覚するような素晴らしいアクションでしたよ。

D:ありがとう、そんな風に言ってもらえると嬉しいよ。ちょっと前でのインタヴューでもライブに必要なものについて質問されたんだけど、やっぱり精神状態、心構えが大事だと思うからさ。もちろん思い切り大音量でラウドに聴かせるっていうのも大事だけど、ステージに登る前から自分で自分を煽るようにしているし、フェスなんかだと他のバンドへの(客席からの)反応を聞いて自分たちを盛り上げている。いざ出るときには準備はもう万端、すぐにでも踊り出せるようにいつも心がけているんだよ。

観客席からの視点としては、映画を観るような特別な体験であってほしいという意気込みも伝わってきました。

D:そうだね。僕も好きなバンド...たとえばフレーミング・リップスなんて一番いい例だと思うけど、音楽以外のものもいっぱい提供してくれるショウをやっているでしょう。バンドといっしょに自分たちが何かを体験した、作り上げたという気持ち...、というかな。僕たちのライブを見てくれたみんなもそういう気持ちを抱いて帰ってほしいと思っている。で、地元のイングランドだと照明もいろいろ凝ったことしているんだけど、フジにはさすがにそれは持ってこれなかった。ホントはそういう照明を使うと、あの白いスーツがもっと映えるのさ(笑)。

よく考えると(リップスの)ウェインも白いシャツを着ていましたよね。

D:そうそう、そうだね! 血まみれにしてね。洗うのがめんどうだからやめたって話を聞いたよ(爆笑)。グラム・パーソンズのスーツには刺繍が入ってたよね。カウボーイっぽいやつとか。僕も挑戦してみたかったんだけど、縫ってくれる人も見つからないし予算もないから断念だよ! 血の演出ならケチャップでいけるかな(笑)?

ウェインもそうだしエルヴィスもそうですが、デヴィッド・リンチ的な...陰鬱なんだけどポジティブな空気があなたのバンドの音楽にもあるように感じました。

D:そうだね。自分では意識したことがなかったけど、言われてみればとてもよくわかる比較だ。本は好きで、そのなかでも実存主義的な書かれ方をしたもの、一人称で書かれていたり、そういうのを好んで読むんだけど、特に自分が経験した悪いこと、辛かったことを曲にするとき、そういう事柄をハッピーで朗らかなで陽気な音楽に乗せるというのは自分にはピンとこなかった。デヴィッド・リンチと比較されて自分がピンときたのは、全体の雰囲気で何かを伝えようとしていたり、催眠状態にさせられそうな資質をもった映画を彼は作っているから。そういう点では凄く通じるものがあるのかな。

なるほど。

D:もしリンチの番号をご存知だったら「僕がスコアつけますよ」って電話で伝えてもらっていい(笑)?

photo by Toru Yamaoto

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(笑)実存主義といえば、アルバムのタイトルも『Existence』(存在)ですよね。

D:アルバムのアートワークも写真集から引用したものなんだけど、その本には実存主義を含めたいろんな主義をレペゼンする写真がひとつひとつ掲載されていて、そのなかから選んだんだ。

そういった、平たくいえばダークな世界観はあなたが生まれ育ったニューキャッスルという土地柄によるものも反映されているのでしょうか?

D:それはたぶん違うかな。ニューキャッスルってとても活気のある街だもの。工業地帯ってイメージはたしかにあるだろうし、イングランド北部ってあまりお金がある地域ではないけど、だからこそお互いが頼りあう、助け合う仲間意識やコミュニティ感覚が息づいているともいえるし、僕はそういったところをポジティブに捉えている。むしろ、僕の作風のそういった部分に影響を与えているのはルネッサンス・アートだね。カラヴァッジョの作品にある光の明暗、濃淡みたいなものが際立っているところとか。そのカラヴァッジョに影響を受けた、20世紀初頭のアメリカのカメラマンにラルフ・ミートヤードという人がいるんだ。写真でそういったものを表現するって非常に難しいことだと思うんだけど、とても賢明な形で彼はそれを実現した。僕らのアルバム・ジャケットの写真にも通じるトーンの美しさというものを彼の作品はもっているし、音楽にもフィットするのかな。彼の写真は光のコントラストのみならず、さまざまな矛盾するものを組み合わせた面白さを持っている。子供の頭にモンスターの頭をくっつけちゃうような。

あなた達のMySpaceには尊敬を受けたアーティストや曲名の名前が実にズラリと並んでいますが、そのなかでもデ・ラ・ソウルやDJシャドウ、UNKLEなどヒップホップ系のミュージシャンが多く並んでいることが興味深かったです。あなた達の「Silver」という曲の出だしもラップの影響を感じさせますよね。

D:ヒップホップに関しては僕はエキスパートとは言えないんだけど、当時ブリット・ポップ全盛で音楽シーンがストレートなギター・バンドで溢れかえっていたなかでベックが登場して、彼のビートに僕は惹かれていった。そこからDJシャドウとかも聴くようになったし、さらに興味をもってデ・ラ・ソウルなどはあとから掘り下げていったクチだね。デ・ラ・ソウルでドラムのオーガニックな部分、いわゆる生ドラムの活かし方とかそういう面白さに目覚めていって、それでUNKLEの『Psyence Fiction』や、他のアブストラクト・ヒップホップのレコードにも触れていって...という流れだね。DJシャドウやデ・ラ・ソウルの音楽は、今まで聴いていたのはギターとヴォーカルが主導で引っ張っていくものばかりだったなかで、ドラムやビートが歌詞と同じくらい音楽の推進力となりうることを僕に教えてくれた。そういった影響にインディー・ロック的なものをミックスして僕らの音楽性は成り立っているんだろうけど、それによる不幸はカサビアンと比較されがちになってしまうことだろうね(笑)。

ノエル・ギャラガーがあなた達のことをずいぶん気に入っているみたいですね。彼の音楽ファンとしての「耳」はとても信頼できると思います。

D:そうだね、僕もそう思う。特にオアシスとしての最後のツアーを僕たちいっしょに回ることが出来たのは光栄だったね。実はオアシスの音楽自体はずいぶん前から聴かなくなってたんだけど、94~95年に育った人間としては、彼らってとても大きな存在だったし、そういう人たちが僕らを知ってくれて、インタヴューで名前を出して言及してくれるというのは凄いことだよ。

あなた達が彼らと同じくらいビッグなバンドになることを願ってます!

D:はは、まあ僕もそうなることを祈ってるよ(笑)。


2010年8月
取材、文/小熊俊哉
取材/伊藤英嗣
通訳/染谷和美

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