LEONARD COHEN『Songs From The Road』(Sony Legacy)

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leonard_cohen.jpg レナード・コーエンの歌。ジーザス&メリーチェインは「Tower Of Song」を覚めきった轟音で鳴らしていた。ジェフ・バックリィの「Hallelujah」はオリジナル以上に聞かれている1曲かもしれない。一時期、エコー&ザ・バニーメンを脱退していたイアン・マッカロクのソロ・アルバムには「Lover, Lover, Lover」が収録されている。そして90年代にはピクシーズ、ジョン・ケイル、R.E.M.など当時のオルタナティヴ/インディー系のバンドが参加した『I'm Your Fan』と、もうひとつ上の世代であるドン・ヘンリーやビリー・ジョエルなどのカバー・バージョンを纏めた『Tower Of Song』という2枚のトリビュート・アルバムが発売されている。

 カレッジ・チャートの萌芽から時を経て、オルタナティヴ・ミュージックがようやく音楽シーンの中で影響力を持ち始めた90年代。歌詞というよりも「詩」そのものである言葉とメロディ、キャリアの中で多少の変化を見せながらも一貫してシンプルなサウンド・デザインは、その唯一無二の歩みからもオルタナティヴの元祖として時代の空気にぴったりだったのかもしれない。崇高でありながらも、「自分にも歌える」そう思わせるという意味で、レナード・コーエンの歌はパンクと同じ力を持つ。そして、この『Songs From The Road』や他のアルバムを聴いてもらえばわかるように、彼はちっともテクニカルなミュージシャンではない。彼の作品の中で名曲と言われるもののほとんど全てをローファイと言っても差し支えないはず。だから一度聞けば、誰もがレナード・コーエンに憧れる。レナード・コーエンの歌が好きになる。それは10年代の今でも変わらない事実だと、僕は思う。エミー・ザ・グレイトの『First Love』で歌い込まれていたように「オリジナルのレナード・コーエン・バージョン」をよろしく。

 レナード・コーエンは1934年、カナダ生まれ。今年でもう76歳。もともとは地元カナダで詩人/小説家としてキャリアをスタートさせている。何を思ったのか60年代後半になってアメリカへ渡り、シンガー・ソングライターとしてデビュー。その時すでに34歳。初期はボブ・ディランやジョニー・キャッシュを手がけた名プロデューサー、ボブ・ジョンストンの腕を借りながらミュージシャンとしての知名度を上げていった。その後は大ヒットこそないものの、ほぼハズレなしのアルバムを3~4年ごとに発表しながら現在に至る。2008年にはしっかりと「ロックの殿堂」入りを果たしている。日本での知名度の低さにはガッカリだ。

 この『Songs From The Road』は2008年後半~2009年前半までのツアーをパッケージしたライブ・アルバム。もともと声量のないヴォーカルをバックアップするような控えめながら手堅いバック・バンドの演奏とオリジナルに忠実なアレンジが秀逸だ。代表曲はほぼ網羅されている。できれば「So Long, Marianne」と「Hey, That's No Way To Say Good Bye」も聞きたかったけれど、もう声が出ないのかもしれない。サマソニでホールのコートニーが「セックスの歌よ!」と言ってボロボロで最強のカバーを披露した「Take This Longing」も入っていない。でも、最高。特に「Waiting For A Miracle」(オリヴァー・ストーン監督の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のエンド・テーマ。音楽監修はNINのトレント・レズナー!)から「Hallelujah」までの流れは本当に素晴らしいから、シャッフルなしで聞こう。クレジットに目をやると「Hallelujah」はコーチェラ・フェスでの演奏だ。観客が熱狂している!

 クッキーシーンに載るミュージシャンでは最高齢かも。まだ聞いたことがなくて、「ライブ・アルバムはどうも苦手でね」と言う人には『The Best Of』というベスト盤がおすすめ。ブライト・アイズやキャット・パワーが好きなら、きっと気に入ると思う。『Songs From The Road』にも入っている「Bird On The Wire」を聞いて欲しい。AメロのコードはA/E/A/D/A/E/Asus4/Aのはず。間違っていたらゴメンなさい。歌詞はだいたいこんな感じ。

"電線にとまっている鳥のように 真夜中の聖歌隊に紛れ込んだ酔っぱらいのように
 僕は僕なりに 自由になろうとした
 死産の赤ん坊のように ツノが生えてる怪物のように
 僕は僕に近づくみんなを 傷つけてきた"

 レナード・コーエンの歌を聞いて、歌おう。

(犬飼一郎)

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