ゴールド・パンダ『ラッキー・シャイナー』(Ghostly International / Yoshimoto R and C)

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gold_panda_lucky.jpg「暖かいな」。これが、ゴールドパンダのファーストアルバムを聴いて、心に浮かんだ言葉だ。CDショップとかに行くと、「ポスト・ダブステップのニューカマー」として紹介されていたりするけど、よく言われるように、ダブステップではないと思う。そういう意味では、よく比較対象にされる、スクリーム『Outside The Box』と比べるのは、無意味ともいえる。ゴールドパンダ本人は、ダブステップを好んで聴くようだし、アルバムにも影響は見られるけど、それ以上に、シンプルな4つ打ちが、ゴールドパンダの味付けで味わえる。

 僕が思うに、「ダブステップの新しい流れを作り出す」という一部の期待を裏切るアルバムになっている。それは、一部の人の期待を裏切ることになるだろうけど、僕みたいに、端からゴールドパンダをダブステッパーとみなしていない人にとっては、期待通りの痛快なアルバムになっている。すごくパーソナルで、自分のすぐ隣にある音。音のひとつひとつが歌っているような、そのひとつひとつの歌が交わるとき、聴く者の頭に懐かしいような、それでいて、心地良い風景が浮かんでくる。このチープで素晴らしい電子音は、ここではないどこかへと連れて行ってくれる。クッキーシーンに既に掲載されているインタヴューにもあるとおり、まともな機材はTR-808くらいで、あとは名もないチープな楽器や機材で作られているけれど、ゴールドパンダの場合は、そこを本人のセンスでもって、みごとにすべてを調和させている(ゴールドパンダは本当にユーモアのある人で、インタヴューでダブステップの話になったときにジョーカーを例えに出したジョークはかなり面白かった)。

 見た目や性格はかなり文系なゴールドパンダだけど、そのなかに潜んでいる熱やセンスというのは、かなりぶっ飛んでいる。特に、「India Lately」の展開なんかは、「僕もう我慢できない!」的な、駄々っ子みたいな展開で、微笑ましくもある。かと思えば、抜けの良い爽やかで繊細な「Snow & Taxis」もある。僕はこの振れ幅の大きさにある種の狂気を感じるのだけど、どうだろうか? ゴールドパンダは野心を抱えているように思う。でもそれは「世界を変えてやる」とか、そういうがつがつしたものではなくて、「目の前の景色を変えていく」という極めて日常的な、まるでベッドルームに根ざしたような夢がある。シーンをひっくり返すとか、そんな大げさなものではなくて、「あなたの隣に住んでいる天才」の誕生を祝う、そんなアルバムだと思う。

(近藤真弥)

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