ラ・ラ・ライオット『ジ・オーチャード』(Barsuk / Only In Dreams)

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ra_ra_riot.jpg ボーカルのウェス・マイルスがヴァンパイア・ウィークエンドのギタリスト兼キーボーディストのロスタム・バトマングリと、ディスカバリーというエレクトロ・ユニットで活動していることなどでも注目を集め始めていた彼ら、ラ・ラ・ライオット。しかし、それも一部の熱心なUSインディ・リスナーに限られており、まだまだ日本では無名の存在だったが、ここにきて、彼らへの関心の幅はどんどん広がっている。それは、ひとえにASIAN KUNG-FU GENERATIONが企画するイベント、NANO-MUGEN CIRCUITの前座として全公演で彼らが抜擢され、各地で名演を繰り広げたことと、そのアジカンのフロントマン、後藤正文による新レーベル、only in dreamsによるファースト・アルバムの国内盤がリリースされたことが大きいだろう。間違いなく、このチェリストとバイオリニストを携えたニューヨークのバンドは日本にじわじわと浸透していっている。

 勢いが増していっている中、満を持してリリースされるこのセカンド・アルバム、『ジ・オーチャード』は、彼らが出演したシアトルのライヴレポでも書いたように、前作『ザ・ランバ・ライン』より、よりダイナミックなサウンド。10曲中、9曲をデス・キャブ・フォー・キューティーのクリス・ウォラが、1曲を先のロスタム・バトマングリがミックスを担当している。
 
 前作より豊満になったサウンドではあるが、それはふくよかさといった表現のそれとは少し違う。このアルバムのサウンドを例えるなら、誰もいないキャンプ場、夜の闇が深まったロッジの中で、窓からその闇が濃くなるのを眺めている感じ、だろうか。要するに、前作より豊満になったのは、妖艶さだ。確かに、「Boy」などのアッパーなチューンもあるが、アルバム全体を覆う空気はどんよりとしながらも頭を冴えさせるような暗がりのトーン。特にそれが表れているのが、中盤の「Massachusetts」や「You and I Know」といった場面だろう。これらのムードは確実に、新たに彼らが獲得したものだ。
 
 そして僕は前作を聴いた限りでは、彼らの楽曲はそれぞれ曲単位で、どこかスロー・スターターというか、盛り上がりどころが少し遅れているんじゃないか、と思う部分もあったのだが、このアルバムの楽曲はどれもコンスタントに盛り上がっていて(あるいはコンスタントに盛り下がっていて)、それもクリアしていて良い。しかし、前作に比べると、アルバム全体を通して聴くと平坦で、どこか物足りなさも感じてしまうところもある。彼らの世界観が徐々に構築し始めている事を存分に感じられる作品であるだけ、そこは少し残念だが、それも含めて彼らの道程なのだろう。ここから向かう先に期待しつつ、彼らの躍進をチェックしていたい。

(青野圭祐)

*日本盤は10月27日リリース予定。その前に、彼らの最新インタヴューが10月20日ごろにはこのサイトにアップされる予定です!【編集部追記】

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