アッシュ『A-Z Vol.2』(Atomic Heart / Yoshimoto R&C) [reviews]

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ash_2.jpg 2週間に1曲リリースし続けるという「A-Z」シリーズでは、いまのアッシュが持つサウンドのパターンみたいなものを確認することができる。まずはこの企画の口火を切った「Return of white rabbit」、今回の「Vo.2」に収録されている曲のなかでは「Binary」「Instinct」に代表される電子音の大胆な導入。決してエレクトロ方面へシフトしたわけではなく、例えばキーンの「Everybody Changing」に使用されていた程度の丁度良い塩梅。ティムの声との相性のよさも際立ったし、ダンサブルなチューンはフロアでも威力を発揮した。もうひとつはいくつかの曲で採用されている比較的長い尺のエモーショナルなギター・ソロ。彼らは永遠に純粋なギター・バンドなんだ、と安心できるし、年月を経ても大人の渋いバンドにはならず、いつまでもティーン("心は"ティーン、の人も)を熱狂させ続ける身近なヒーローの役割を買って出たような印象も受ける。もちろん「Change your name」のようなアコースティック・バラッドだって涙が出るほど素晴らしい。

 ウィーザーも最近新作を短いスパンで出して元気だし、イギリスでもアメリカでもこういうバンドが存在感を失わない、というのは何というか、健全という気がする。だって、ややこしいことは抜きでさ、こういうキャッチーでノリノリでクールなバンドはみんな好きだよね(そういえばウィーザーだけじゃなくて、フィーダーもシャーラタンズも、長い間頑張ってきたバンドたちがいま再びモチベーションを上げてきている、というのは頼もしい事実だ)。

 今回の「Vol.2」で一応シリーズは完結したわけだが、最後までテンションを落とすことなく本当に「シングル・レベルだけ」をリリースし続けたのは、まさにネット時代のパイオニアと呼ぶに相応しい。そして彼らは普通であれば何年も悩んでやっと一枚のアルバムを作ってツアーをまわって築き上げていくようなバンドの新しいアイデンテティを、こんな短期間で手にしてしまったのだ。次が楽しみで仕方ない。もはやアッシュ・ファンにとって共通のアンセムが「Shining light」ではなくなってしまったかもしれない。今回の「A-Z」シリーズでアッシュの大ファンになった若いファンも大勢いるだろう。アルバムというフォーマットの可能性を信じ一枚で素晴らしい物語を演出するバンドもいる一方で、アッシュはそれに早々と見切りをつけた。かつてビートルズやモータウンのグループが奇跡のようなシングルをリリースし続けた時代に想いを馳せ、誰もが口ずさめてハートがキュッと締め付けられるようなポップ・ソングを書き続けた。素敵じゃないか。

(長畑宏明)

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このページは、伊藤英嗣が2010年10月11日 16:50に書いたブログ記事です。

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