パラエル・ストライプス at 新宿 MARZ 2010/09/20

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photos by Takanori Kuroda

 パラエル・ストライプスについては、既にEP「feyz」のレヴューインタヴューで「ライブが凄い」とさんざん強調してきたが、今の彼らはそれはもう本当に半端なく嘘偽りなく物凄い。≪凄い≫の乱発ほどウサン臭く安易で頭の悪そうな褒め方もないが、少し前に彼らのライブを観たときは圧倒されて口が半開きになってしまって喉から言葉が出てこなくなってしまったし、他の観客も「凄いねー、凄いねー」と、相手でなく自分に言い聞かせるかのように話をしていた。

「聴いた人にはもう説明は必要ない、残されたのはただ歌って踊るだけ」というのは「feyz」の資料で用いられているキャッチコピーだが、たしかに変に理屈をこねるのがアホらしくなるほど、ただただ凄いのだ。一度体験しているだけに期待値も相当高く、この日が来るのを一ファンとして本当に楽しみにしていた。そして、新作EPを引っ提げて福岡からはるばる東京へやってきた彼らのリリース記念パーティーは期待以上に充実した内容となった。聴いた人には説明の必要はないが、聴いてない人とも話はしたい。そういうわけで、当日の様子を時系列順にレポートしよう。

 この日は対バンも非常に充実していた。先に出演した3バンドについては簡単に触れるていどにさせてもらうが、それぞれが魅力溢れるアクトであったことはここで最初に強調しておきたい。

 

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 プリドーン(Predawn)は飛ぶ鳥を落とす勢いで話題となっているシンガー・ソングライター。今年のフジロックでもパフォーマンスを披露するなど、人気沸騰とともに貫禄もついてきたかと思いきや、支離滅裂な発言の連続に思わず「何を言ってるかわかりませんよね」と苦笑いするなど、MCのチャーミングな天然ぶりは相変わらず。一方で、「Suddenly」をはじめとした楽曲のもつ静謐で切ない響きをもった楽曲はとても胸に響いた。アコギ一本の飾らない佇まいがとても好きだ。


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 ブレーメン(BREMEN)は懐の深いダンス・ロック・バンド。最近の海外バンドならデロレアン辺りにも通じるバリアレックで"今"を感じさせる曲から、レイブ系直球だったり中南米音楽の影響を感じさせたり、アレンジの幅広さとポップなメロディ、ポジティブなムードが印象に残った。ちなみに、このレポの写真を撮影していただいた黒田隆憲氏は、紅一点ヴォーカルのエリーについて「(パフュームの)のっちみたいだ」とルックスを激賞していた。なるほど...。


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 Kuhは元ビート・クルセイダースのクボタマサヒコが率いるバンド。エレクトロニックとアコースティックのバランスがとても器用で、ポストロック的ともいえる繊細かつ工夫に富んだテクニカルな演奏と、クボタの透き通った歌声が重なると本当に気持ちがいい。プラネタリウムでのライブが今度控えているという話も実に「らしい」と納得。引き出しも多く、実に聴かせる。


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 そして、この日の真打ちパラエル・ストライプスが登場。幕が開くと(サポート・メンバーのドラマーを含めた)3人が蛙の被り物を着けた状態で構え、シンフォニックなシンセが鳴り、ギターを弦で弾きこなす(ふり)。おお、プログレだ。まさかの新機軸。どうしたらいいかわからずキョトンとしてしまったが(笑)、その仰々しい被り物を脱ぎ捨ていきなり「In Reach」! イントロのシンセ・フレーズが鳴った瞬間に客席も一気に大興奮。金髪に染め上げ見た目のイメージがずいぶん変わったヴォーカルのMarsも、ベースを弾き鳴らしながら忙しなくステージを動き回る。今の彼らを象徴する一曲である「Prototype」では「オッオッオッー」のコール&レスポンスがたまらない。もともとの楽曲がとてもアッパーなのもあるが、こうしてライブで聴くとフロアと一体化することを最優先させて曲が練られているのがとてもよくわかる。

   

 彼らの音源とライブでの最大の差は生ドラムの存在だろう。例を挙げるまでもなく、電子音と生ドラムは最強に相性がいい。サポートのりゅうじんのドラミングは実にパワフルで、バンドの演奏を力強く引き締める。Marsはロック・スターの伝統に則ったアグレッシブな動きで客席を煽りまくり、ギターの松下も巨体をのけ反らせながら弾きまくる。バンド結成からそれなりの年月を重ねているのもあり、演奏も巧くコンビネーションも抜群だし、とにかく動きまくるので客席から観ていて全然飽きない。エレクトロ系バンドの多くが抱える視覚的な退屈さと彼らはまったく無縁だ。

 英語でまくしたてたりヴォコーダーを通したりとMCでもクールでシリアスなMarsと対照的に、松下は「こんばんはー」「がんばりまーす」と発言がどれも朗らか。秋葉原で念願のAKBショップに行ってきたのにグッズが全部売り切れていた話などはまさしくオタクキャラの面目躍如。笑いました。2007年リリースの『Phirst Tense』からの「Blues」のようなナンバーも疾走感があってセットリストでの収まりがよく、続く「Take Down」「Musiq」もカオティックなまでの盛り上がり。インタヴューで「最高の一夜が終わってほしくない瞬間について歌った」と言及されていた「4th Night」では、キメのフレーズ"Don't stop that DJ!!" を叫んだMarsがDJブースを指さしていた。とにかくあっという間に駆け巡っていくものだから観ている今その瞬間が惜しくなってしまって、このまま終わってほしくないというのはこの日フロアにいたオーディエンスほとんど全員の総意だったと思う。それほどの一体感がたしかにあった。

 

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 アンコールでは"愛"について歌ったそのものずばりの「Love」と、ふたたび『Phirst Tense』からドラマチックで「Memory」を披露してライブは終了。ステージ両脇のスピーカーの上に立って熱唱するMarsのキレキレっぷりにも感動したが、いきなり愛についての4カ条を説き始めたり、「俺たち、音楽やっていなければただのクズなんで」とこぼした直前のMCの気まじめすぎる愚直さにより胸を打たれた。たぶん彼にとって「音楽やっていなければただのクズ」というのは本音中の本音なのだろうと思う。こんなに誠実な人たちの音楽や、ここまで熱狂的にさせられるパフォーマンスはもっと多くの人に届いてほしい。それこそフェスでも何でもいい。新宿MARZはとても素晴らしいライブハウスだが、もっと大きな舞台に立つ彼らの雄姿も見てみたいというのが正直な感想だ。すでに彼らはその準備はできているし、聴いた人は打ちのめされただろうからもう説明は必要ない。あとは一人でも多くの人のもとへ彼らの音楽とその魅力が届くことを願ってやまない。

(小熊俊哉)

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