ゴールドムンド『フェイマス・プレイシーズ』(Western Vinyl / p*dis)

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goldmund.jpg キース・ケニフのピアノ・ソロ・プロジェクトであるゴールドムンドの3枚目のアルバム。過去2枚のアルバムといえば、ポーンと鍵盤を叩いたらそのまま5秒間は無音が続き、その余韻を味わうような、音と音の間をすくい取る作品であった。それに対し本盤は、メロディを味わえる程度には音数が増え、ノスタルジーな空気感、匂いはそのままに、曲調に明るみが帯びている。
 
 音楽性でたとえるなら、アンビエントに近かった過去の作品よりも、純粋にポスト・クラシカルとしての側面に重心を傾けている。そして、よりクラシカルな詩情を携えているにもかかわらず、潤沢なラップトップ・サウンドは以前にも増して空気中を舞っている。
 
 本盤では、寂しさと明るさが見事に調和を成し、共存している錯覚に陥る。錯覚というのは、実際には共存しているわけでも中庸に立つわけでもなく、未だ言語化されていない感情がたまたまそれに酷似していただけにすぎないような気がするからだ。文字通り、悲しくも喜びに満ち、矛盾しつつも美しい。静かな教会でのびのびと子守唄を弾くような、パーソナルなアルバムだ。
 
 息子が生まれたから明るいアルバムになったというのは面白いことだ。仕事に私情を堂々と挟んでいるし(そもそも仕事という括りもどうかと)、そうやってパーソナルなアルバムを作ると、私のような人間達から大絶賛される。奇妙な界隈だ。

(楓屋)

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