スクリーム『アウトサイド・ザ・ボックス』(Tempa / Hydra)

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skream.jpg このアルバムは、スクリームを多くのリスナーに触れさせることになるかも知れない。ダークな2ステップだった頃も含めると、ダブステップもそこそこ長い歴史があるけど、『Outside The Box』はそんなダブステップというジャンルの現時点での集大成がある。6月にリリースされたラスコのアルバムでも聴けるけど、最近のダブステップは、ドラムンベースやヒップホップ回帰していたり、ダブステップにとってのルーツな音が目立ってきている。ダブステップというのは、ほんとに様々な音楽性を取り込んできたし、今もスクウィーなどサブジャンルという形で、広がりを見せている。『Outside The Box』は、そんなダブステップの可能性と魅力が存分に詰まっている。

 そして、このアルバムのもうひとつの魅力は、スクリーム自身の幅広い音楽的嗜好とポップセンスだと思う。特に、「Where You Should Be」「How Real」「Finally」の3曲は、優れた「歌」として機能している。ダブステップの歌モノって、ラップになりがちだけど(基本ダブステップはヒップホップですからね)、スクリームの場合は、アンダーグラウンドよりもラジオ・ヒット曲に近いものになっている。意外とスクリームって、マニックスのようなポップジャンキーなのかも? さらにはアルバムの構成も優れていて、序盤はゆっくりと始まって、4曲目の「Where You Should Be」から盛り上がり始めて、「I Love The Way」でピークを迎える。それ以降は、徐々に熱を下げていって、最終的には「冷めた高熱」というなんとも不思議な感覚に陥る。特にアルバム終盤は、ラ・ルーが参加している「Finally」がキーになっている。彼女の祈りにも似た、囁くようなヴォーカルは、『Outside The Box』に決定的な「ナニカ」を与えている。僕自身ヴォーカリストとしてのラ・ルーの魅力に気づいたのも、「Finally」だ。アルバムとしての流れでは、「Where You Should Be」から「I Love The Way」までの展開は、圧巻の一言。この辺りは、かなりフロアチックな展開になっていて、盛り上がる。

 前作が、フロアの空気を意識した、かなり力任せなジャイアン的なアルバムだとしたら、今作は、スクリームのプロデューサーとしての審美眼とアーティストセンスが同居した余裕のあるアルバム。フロアの外に出たダブステップの多くが、安易なポップの流用でエッジを失っていくなか、スクリームの『Outside The Box』は、ポップ・ミュージックが本来持っているエッジを取り込みながら、スクリーム自身のエッジをさらに鋭くしている。ダブステップで、ここまで心を揺さぶってくるアルバムは、初めてではないだろうか? もしかしたら、ダブステップはあなたの隣に居るのかも知れない。

(近藤真弥)

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