RATATAT 『LP4』(XL)

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ratatat.jpg 邦題を付けるなら、やっぱり「インコ大集合!」でしょう。ヴァンパイア・ウィークエンドの1stアルバムに付けられたトホホな邦題をあえて引用してみたくなる。そんなジャケットが素敵なラタタットの4thアルバムは、その名も『LP4』。前作が『LP3』だから当然なんだけれど、投げやりなのか周到に練られたコンセプトなのか、今のところ謎だ。1、2、3、4、...総勢11羽。覚めた目のインコたちがシンメトリーを描くジャケットの裏には「LET YOUR BIRD EAT ITS BEAK」の文字が踊る。「お前の鳥にくちばしを食わせろ」って、謎が深まるばかり。

 ヒップ・ホップのビートに乗っかるマイク・ストラウドの歌っているようなギター・リフとエヴァン・マストによるビンテージ・シンセのキャッチーなフレーズが相変わらず気持ちいい。今までは、ダフト・パンクに影響された「人力エレクトロニカ」という感じだったけれど、この「インコ大集合!」ではなく『LP4』では、よりアレンジの幅が広がって表現力がアップした。音を聞いていてイメージできる世界が本当にカラフル。だからライブやクラブで大音量で聞くと楽しいと思う。そして、ヘッドフォンでじっくり聞くのにもおすすめ。

 アルバム全体がちょっとユルめのBPM。アコギ、パーカッション、アナログなハンド・クラップなどが飛び交うサウンドにストリングスが奥行きを持たせる。サンプリングにも遊び心がいっぱい。虫の音や映画の台詞(ヴェルナー・ヘルツォークだって)、そしてインコたちの可愛らしいさえずり。音のレイヤーが本当に美しい。繰り返し耳を傾けていると実験的、というよりも音を楽しんでいる感じが伝わってくる。ライブで盛り上がりそうな「Drugs」では、泣きのギターとビュンビュン唸るシンセが炸裂。トロピカルなメロディの「Mahalo」(ハワイの言葉で「ありがとう」の意)は、なごみ系の小さな曲。アルバムは後半になると、どんどんトライバルでポップになる。ラスト3曲「Bare Feast」から「Grape Juice City」、「Alps」への流れが僕は大好きだ。この辺りが次のアルバム(LP5?)の布石になるのかな。

 ラタタットが鳴らす音楽には歌詞がなく、曲名も記号的。ビジュアル・イメージは極端にミニマル。テクノ/エレクトロニカのアーティストには多い手法かもしれないけれど、彼らの場合はどこか無邪気で人懐っこい。歌詞はないけれど、曲を聞けば思い浮かぶ風景や色がある。ニューヨークの賢くて意地悪な2人組は、僕たちのイメージを刺激する。しかも、踊れるんだから最高だと思う。でも、やっぱり11羽のインコたちが意味することって何だろう?それを思い描きながら聞くのも楽しい。

 僕がこのレビューを書いている今日は9月11日。あの出来事から9年がたった。偶然にも今こうして、ニューヨークから鳴らされるサウンドを聴きながら色々なことを考えた。忘れないこと。 

(犬飼一郎)

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