オウガ・ユー・アスホール

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OGRE YOU ASSHOLE

"森ガール"...(笑)。僕らはいたるところで
"森ボーイ"って言われるようになりましたね

彼らの音楽は、決して明るくもないし暗くもない。でも、どちらかといえば暗いほうに傾いているのかな? と思っていた。そして彼らの音楽は「未来への希望」にも「徹底的な絶望」にも寄りすぎていない。希望も絶望も、両方備えている。

そんななか「希望」寄りの曲...たとえば「コインランドリー」とかが、筆者としてはとくに好きだった。コインランドリーで洗濯してるのに「未来への希望」ってのもヘンな話だが(笑)。そして彼らのニュー・ミニ・アルバム「浮かれている人」は、タイトルどおり、これまでになく明るい感じだ。「浮かれている」から明るい、というのも、なんか...(笑)。だけどそこには、明らかにある種の「希望」が、そこはかとなく感じられるのだよ。サウンドも含み、明らかに新機軸だ!

ここ最近の一連の作品同様、プロデューサーに石原洋、エンジニアに中村宗一郎という名コンビ(ゆらゆら帝国などで知られる)を迎えたこの作品は、どのようなノリで完成したのか?

さる8月後半にくりひろげられた、中心人物出戸とクッキーシーン伊藤のゆるい会話(笑)を「ほぼ完全ノーカット、最低限の編集しかしていない」状態で、お届けします。

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フジロック以来ということで。

出戸学(以下D):はははは、そんな遠くないすけど。

6月のレインコーツ(のライヴ)といい、最近はよくお会いしてる感じですね(笑)。フジは何か見ました?

D:けっこう見ましたね。

3日間ともいたの?

D:3日間ともいました

おおー(注:オウガ・ユー・アスホールは初日の早い時間が出番だった。ちなみに、フジロックでおこなわれたジョニー・マーとオウガの対談は、彼らの出番の1、2時間前に決行された。いわゆる「取材」のほとんどは、その日のうちに終了する。だけど3日ともいるということは...わりと重度な同時代音楽ファンということだ:笑)。

D:(笑)けっこう見ました、いろいろ。

何が印象的でした?

D:LCD(サウンドシステム)がやっぱりよかったっすね。なんか、愛らしいかったですね。

太ってても、よかったよね(笑)。自分も「太ってるの気にしなくていいか」ってちょっと思っちゃってさ。

D:はははは。あと、イアン・ブラウンに僕らのバンドのベースのヤツ(平出)がヒゲ褒められたのは相当面白かったですね。

そうなんですか? 平出さんが?

D:なんか楽屋に、僕とアジカンの後藤さんと彼の3人でいたら、こっちに手振ってきて「あれ?」と思って、「後藤さんと知り合いなのかな」って思って、「知り合いなんすね、すごいっすね」って後藤さんに言ったら「全然知らないよ」って(笑)、「初対面だよ」とか言ってて。そしたら、必死にこうやって(口の周りを指してる?)るんすよ。したら、平出が口ヒゲ生やしてるんすけど、それがめちゃめちゃいいよって寄ってくるんすよ(笑)。

笑えますね、それは(笑)。ジョニー・マーといい、イアン・ブラウンといい、オウガはベテランに大人気みたいな。

D:イアン・ブラウンはまったく関係ないすけどね(笑)。僕らがバンドマンかどうかすらわかんなかったみたいすけど。

ヒゲのみ(笑)。イアン・ブラウンは見ました?

D:結局、何かとかぶってて......トム・ヨークだ。トム・ヨークとかぶってて、そっちを見に行きました。

僕はイアン・ブラウンを見てた。ベルセバを見るためにずーっとホワイト・ステージにいて。あ、初日のオウガもよかったですよ。

D:ほんとですか? ありがとうございます。

ちょうどザ・クリブスを見るために、たぶん最後の曲とかの途中で行かなきゃいけなくなっちゃった感じだけど、素晴らしかったです。新曲もやってましたよね?

D:やってました。

「バランス」をやったんだっけ?

D:そうですね、1曲目(「バランス」)と2曲目をやりました。

(2曲目)「タンカティーラ」とね。じゃあ、さっそくその新しいミニ・アルバム『浮かれている人」のお話をしたいなと思うんですけど、えーと...、いいですね(笑)。

D:ありがとうございます(笑)。

ライヴの時に見て「ポップになってるなあ」と思ったんだけど、もっと全然ヘンで...。

D:そうですね。

前のアルバム『フォグランプ』に入ってた「ヘッドライト」、ああいう感じのノリも...。

D:そうですね、使ってますね。

あれは「歌謡曲っぽい」っていうか、ちょっとそういうノリがあるって以前のインタヴューのとき話したと思うんだけど、そういう面もありますよね。

D:そうですね、面白がって作りました。

つうか、かなりヘンなレコードになってます。

D:そうですね、かなり(笑)。「今までこんなのないだろ?」くらいに思ってますけど。

僕もそう思います。「バランス」と「タンカティーラ」をフジで見たときは、前のアルバムの頭のほうっていうか、ちょっとヴァンパイア・ウィークエンドっぽいかとも思ったんだけど、でもレコードで聴くともっとヘン。そこが最高(笑)。

D:はははは、そうなんす。ライヴでは再現できないことがたくさんあって。

たとえば、1曲目の「バランス」とかもかなりいろんな楽器が入ってますよね。

D:かなり入ってますね。基本、コーラスワークが今回面白くて一番使ってて。

女性コーラスの導入は今回が初めてでしたっけ?

D:初めてですね、完全に。

けっこうヘンなコーラスもね、何曲目だ...。

D:2曲目?

それも。だけど3曲目「どちらにしろ」が一番ヘンじゃないですか(笑)?

D:ふはははは、コーラスっていうか、奇声ですよね(笑)。

「ウー」とか「ハァ」とか、なんかベースみたいに聴こえるので声だったりするのありますよね、「ウー、ウー」っていうの。

D:そうです、あれ声です。よくわかりましたね(笑)。

(笑)3曲目が全体的に最もヘンな曲かも。打ち込みで始まるところからして。

D:そうですね、完全にバカ全開ですね。

「バカ全開」(笑)。「ハッ、ハッ、ハッ」っていうのがあったよね、掛け声的なやつとか。

D:ありますね。

あと「ワジワジワジ~」とか(笑)。あれは何をやってたんですか?

D:ふざけてたんです(笑)。

(笑)ふざけていろんな声を上げてるのを録ってループしたりとか、一発だけ使ったりとかそんな感じですか?

D:ループはしてないです。

え? 「ウー、ウー」っていうベースラインっぽいのも?

D:全部生で歌ってます。

上手いですね! ヒューマン・ビートボックスというか...この曲はポスト・パンク的といえなくもない。

D:そうすね。

2曲目「タンカティーラ」でドゥーワップっぽいというか、♪ハッシュワリワリ~って入ってるじゃないですか(笑)。あれ、かなり衝撃的でしたけどね。

D:僕も衝撃的でしたけど(笑)。

けっこうデカく入ってるじゃないですか(笑)。

D:プロデューサーの石原さんが「かすかに聞こえるようなミックスじゃ、"ちょっとやりました"って感じになっちゃって面白くない」と。「あれが全面にこないと狂った感じは出ないだろう」って(笑)。それでミックスは僕のメインのヴォーカルが消えるくらいにして、それでようやく「これを入れた意味があった」っていう。中途半端にしてないすね、全然、ミックスは。

1曲目(「バランス」)も、ストリングス・シンセとかがわりと目立つっていうか、全体的にいっぱい入ってるよね。

D:そうですね、1曲目と4曲目(「レースのコース」)がわりと全編に入ってますね。

ちなみに、あれ(ストリングス・シンセ)とかはライヴでどうするんですか?

D:ライヴでは、ドラムのヤツが片手でドラムで、左手がシンセでっていう。

あ、前もやってた?

D:やってました。

気づかなくてごめんなさい(笑)。

D:フジロックでもやってました。あれ、誰も気づいてくれなかったんです(笑)。そっち(演奏とか機材とか)系の雑誌の人も気づかなかったみたいなんですよ(笑)。

まあフジロックは見づらいから...って言い訳ですね(笑)。

D:そう、「全然見えなかった」って言われました。

4曲目(「レースのコース」)では、それ(ストリングス・シンセ)がリリカルな、すごくいい味になってます。

D:そうですね、また違ったアプローチで。

ストリングス・シンセだけノー・エフェクトで取りだすと、まあこういう言い方したらあれだけど、普通のエイティーズの...たとえばジャーニーとかヴァン・ヘイレンとか(笑)?

D:そうすね(笑)。逆に、僕ら作ってる時はトラックだけできた瞬間は「ダサすぎる」ってみんなで言ってて、「これはヤバいだろう」って言ってて、だけど一周まわって「いい」みたいな感じ、自分たちのなかで。「今のこの時代にこの曲やってたら面白いんじゃないか」っていうか、同世代でこれ今やってるのってあんまいないような気がして。しかも自分たちの感覚ともうまくハマって、ちょっと笑いの要素ももちろんあるんだけど、それが聴いてるうちに普通にかっこよく聴こえる瞬間とかも出てるのが自分でも面白いなあと思ってて。

いや、マジ新鮮でかっこいいですよ。以前インタヴューで、「オウガは笑えるところもある」って話をしたけど、今回はそれがより見えやすくなってるような気もします。1曲目(「バランス」)では、もっと奇妙なアナログ・シンセっぽい音が、どっちかのチャンネルでウニョウニョいってたりもしません?

D:します(笑)。

「なんじゃこりゃ!?」って。凝ってますよねー。

D:"CDはバンドで再現できないことがおこなわれててもいいや"感が今までで一番出てるっていうか、CDはCDで表現したいことが突き詰めれるまで、やれるとこまでやって、バンドの形にとらわれないようにはしましたね、今回。

ひとまわりした、って感じなんですかね。

D:あとなんか、前回のアルバムの時に作ったCDの音源からわりとアレンジをちょこちょこ変えたりしてて、それが自分たちとしては楽しくて、ライヴで演奏するのも新しい気持ち、クリエイティブな気持ちでライヴができるっていうか、「どんどん変えてける」っていう感覚があるから、ライヴでできないようなCDを作っても、それをまたライヴでできるように自分たちでもう一回曲をアレンジし直すっていう作業が楽しみになるし、それでもいいやってことで。

「どうせそれをやるんだから、レコードはレコードで...」みたいな感じだよね。

D:はい(笑)。

といいながら、1曲目のタイトルは「バランス」になってる。バランスがいいのか悪いのかよくわかんないっていう(笑)。

D:悪いですね(笑)。

いや、悪いようでいいようで悪いみたいな(笑)。2曲目、「タンカティーラ」って言葉の意味がよくわかんないんですけど。

D:意味はないです(笑)。よく聴くと女性コーラスが「タンカティーラ」って言ってるんですよね。それでそのまま。

なにそれ? テキトーに歌ってるの?

D:そう(笑)。それがレコーディング中に出てきて、それが面白かったんで、そのまま「タンカティーラ」に。仮タイトルがそのまま本チャンになっちゃったみたいな。

素晴らしい! ファンカラティーナとか(いうジャンル用語が)昔あったような気がするけど、それに(言葉が)ちょっと似てる(笑)。あと"タンカ"ってね、「啖呵を切る」ってあると思うんだけども、さっきの♪ハッシュワリワリ~が、啖呵っぽく聴こえるっていう(笑)。

D:はははははは。

まあ「楽しい」「笑える」ってところがありつつ、4曲目(「レースのコース」)5曲目(「真ん中」)とかは、"真面目"というのはヘンですけど。

D:4曲目で「僕らもちゃんとできるんだぞ」ってとこを見せて(笑)。

何を今更(笑)。

D:はははは、そういう曲ですね、4曲目は。

これ、バンド演奏から湧き出てくるようなメロディーっていうよりは、そうではあるんだけど、よりメロディーが立ってるような気がするんですけどね。

D:そうですね。これは曲作りが、僕が弾き語りでメロディー作ってきて、それをギターのヤツがアレンジしてくれたみたいな曲で、今までと作り方がまったく違った感じの曲だから。

新境地っぽい感じはあります。ストリングス・シンセも合ってますね。でも、ぼくからするとポスト・パンクっぽいと思える音処理もたまらないというか、いろんな話し声とかワーッて入ってきてかっこいいよね。

D:僕らを初めてライヴハウスに出してくれたマキノさんて人がいるんすけど...。

長野の人ですか?

D:松本の人です。その人の結婚式の会場で僕らがフィールド・レコーディングしちゃったっていう(笑)。結婚式場で、パーティー中に録りました。

ハッピーな感じもあるんだけど一方では...、シリアスといえばシリアスですよね、歌詞とか。

D:そうですね。

さびの部分かなりぐっとくる。<きみ>が<浮かれてると言った>わけですよね、<レースのコースを見て>。

D:はい。

つまり、レースの人たちはすげぇ真剣に走るような場所だけど、端から見たら浮かれてるように見えるとか、そんなようなニュアンスなのかな?

D:そうですね、そういう状況はあるような気はしますね。

それは自分でもよく感じます。極端に言えば、音楽とかやってるのって、普通の人から見たらたぶん浮かれてるだけっていう感じだけど、けっこうレースっぽいところもあったり大変なところもあったりとか、そんな解釈もいいのかな。

D:はい、ひとつの解釈としては。今回のCDを作ってバンドマンのみんなに渡すと、かなりの確率で(ミニ・アルバム全体の)タイトルの「浮かれている人」っていうのを見て「これ俺のこと?」って言う人相当いるんすよ(笑)。

俺もミュージシャンではないけれど、そういう感覚になったんだと思う(笑)。編集者とか音楽ライターとして。まあ、みんなそう思ってるんだねってことだよね。

D:はい。

でもほんとに3曲目まではかなり浮かれてて(笑)。

D:そう、僕らもかなり浮かれてたし(笑)。

それって...、春に長野に戻られたじゃないですか、バンドのみんなで。そうすると、まあ長野も(しばらくバンドのベースにしていた)名古屋とそんなに変わんないのかもしれないけど、周りの普通に生活している人たちとのギャップっていうか。

D:ああー。まあ、周りの人がいないんで(笑)。長野、ほんと人がいないんすよ。人がいなくて、全然友達とかと会わなくて、親とかとは実家が近くなんで。

あとは、話はしないけど近所の人とかは、まあそんなに近くはないかもしれないけど、いるよね。

D:いますけど、ほとんど会わないですね。家の周りから全然家がないんすよ、森で。だから、友達はほんとにちょこっと会うくらいですね。

そういうの聞くと仙人っぽい音楽になる感じがしちゃうけど、全然そうではない(笑)。あ、でもね、最後の(5曲目)「真ん中で」が"すごい森っぽいな"と思ったんですけど。森ガールじゃないけど(笑)。

D:森ガール(笑)。確かに森っぽいですね。でも海っぽくもあるというか。

ああー、そうだ、<真ん中で><溺れる><浮かぶ>って歌詞の言葉は海のイメージ。長野に戻ったという情報に引きずられすぎ、"森"って思いすぎたかも(笑)。

D:はははは、まあ確かに。いたるところで"森ボーイ"って言われるようになりましたからね、急に。

森に住んでるからね。暮らしやすいですか?

D:暮らしやすいですね。夏は温度が、ヘタしたら東京と10℃まではいかないかもしれないけど、7、8℃は違いますね、たぶん。すごい涼しいすよ。冬は厳しいんすけど。

ちなみに、みんなは? 他のメンバーの人たちは? 別にみんな森の中に住んでるわけじゃないよね。

D:だけど近くすね。(ドラムの)勝浦さんは森の中すね。もっと森すね(笑)。ベース(平出)は農村くらいで、で、(ギターの)馬渕は湖の近くに住んでます。

5曲目「真ん中で」のヘンさっていうのが、別にそういうふうに単純に語っちゃったら面白くないけど、アニコレ(アニマル・コレクティヴ)とか...。

D:ああー、その場所で録るみたいな感じすか?

うん。アニコレもすごい森っぽいじゃん。

D:確かに(笑)。でもアニコレは肉食な感じしますよね。

たしかに。アニコレよりもっとぼーっとしてる感じだよね。あそこまで怖い感じじゃないっていう。

D:怖い感じじゃないですね。

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自然の中の感じっていうのは反映されてると思います?

D:どうなんすかねぇ。なんか、今の都会の空気感みたいなのが僕らに伝わりにくいっていうのはあるかもしれないですね。だからなんか「自分たちのなかで面白いことやればそれでいいや」ってなっちゃってる部分は多いかもしれないっていうか。これ作ってる時はお客さんのこととかも考えないくらいかなり無責任な感じで作ってました。自分に何も課してないっていうか。

いい意味で、そんな印象を受けます。

D:「オウガの今までとか関係ない」みたいな、そういう感じで作ってました。何も枠がなかった状態で作ってたというか。ミニ・アルバムだからわざとコンセプトも最初に設けないで、「できたやつ5曲」みたいな感じすね、今回は。

でもすごくいい流れになってますね。まあでもそれはできたものを並べてってことだと思うけど。

D:「たまたまできたらよかった」みたいな感じすね。

(この記事に掲載されている2点の写真の、最初に出てきたほうのやつを指して)森の中って、こういう感じなんですか?

D:まさに、家の一部ですね。

これは合成ですか?

D:合成です(笑)。

素晴らしい特撮ですね。馬渕さんが木にぶら下がってるみたいでちょっと危険(笑)。

D:みんなに「首吊ってるように見える」って言われて(笑)。怖いっすね。これで馬渕とかが死んだりとかしたら、絶対この写真が言われますよね(笑)。

(60年代の)ポール・マッカートニー死亡説みたいな(笑)。そのへんに録音スタジオとか作っちゃって...とかそういうことは考えないんですか? ゆくゆくは。

D:今は練習スタジオくらいなんすけど、結局(エンジニア、プロデューサーといった)"人"じゃないすか。だから僕らのバンド・メンバーに誰かひとり、そういうのができる人がいれば作ってもいいすけど、なかなか(笑)。

今素晴らしいところでやっちゃってるぶん、よけいそうだよね(笑)。ミニ・アルバムにを戻すと、歌詞もいい意味でかなりとっ散らかってます。

D:ふはははは、そうすね。まとめてわかりやすくバキッとする歌詞があんまり好きじゃないのかもしんないすね。

もともとそうだよね。でもさらにいい感じに入り組んでるなあという。

D:はははは。

ポジティヴともネガティヴとも言いきれないような。そんなかでも4曲目が一番わかりやすい感じですかね?

D:ああ、そうかもしんないすね。「ちゃんとできるぞ」感を見せたかったし(笑)。

いや、すっげーできてますって。5曲目はどういう感覚が込められてるといえるのでしょうか? さっき海の中って言ってたけど。

D:5曲目はどっちかっていうと、情景的には、こっちがめちゃめちゃ溺れてるのに遠くから見てる人が溺れてるのかわかんないけど、そのもがいてる自分を見てめちゃ笑ってるみたいな(笑)そういう感じすね。こっちは真剣に「助けて!」って言ってんだけど、向こうで笑ってるくらいな感じの距離感。ちょっと離れると、必死にもがいてる人って笑えるじゃないですか。そういう感じの感覚みたいなのはありますね。別にそれが僕にとっては溺れてる側でも笑ってる側でもないんすけど。

両方を捉えてる。

D:はい、その"状況"っていう感じすね。

いいですね...。最後の曲とかも暗くなる一歩手前っていうか。

D:そうですね、"絶望"とかはやりたくないです(笑)。

全然そんな感じになってないですよ。(フジロックに出演したトム・ヨークの)アトムス・フォー・ピースじゃないんだから(笑)。すげぇ暗くなかった?

D:すごい暗かったっすね。怖かったっすね、ちょっと。

僕はずっとホワイト・ステージにいたから見れなかったけど、LCDのあとでトイレに行ったら、ブオォォォ~!ってすごいのが聞こえてきて(笑)。

D:(笑)照明とかもすごかったです。

そういう怖さはないよね。あと、とくに1曲目と4曲目と5曲目で思ったんですけど、ベースラインが意外にファンキーな、♪ドゥー、ドゥドゥ、ドゥーみたいなさ。

D:はははは、確かに。

そのへんも面白いなと。

D:今回、曲作りも僕とギターのヤツがほとんど作ってるんですよ。リズム隊も今までは自分の楽器は自分で作ってたんすけど、今回わりとふたりで作ることが多くて。

アレンジも?

D:アレンジもふたりでやったんで、今までのリズム隊の感じとはちょっと違うかもしんないすね。

いわゆる"ダンサブル"じゃないんだけど、聴き直してベース聴くと「このベースライン、ファンキーじゃない?」っていうか(笑)。

D:ああー、だけど踊れなくもないですね(笑)。1曲目と5曲目くらいで12インチ出したいんですよね、これの。

いいですねー! 1曲目とか、ちょっと変えるとすげぇファンキーになるっていう。で、5曲目もさっき言ったみたいにちょっと森っぽくて、まあちょっとアコースティックなじゃないんだけど、そういう感じがあって、もちろんいろんな音が入っててクワイエットな曲って言えなくもないんだけど、実はベースはファンキー、みたいな(笑)。そのへんがアニコレっぽいと思ったのかも。

D:ああー、そうかも。

だから昔のオウガと、..."昔"っていうか、こないだまでのオウガも含めて、ほんとに何にも似てないですね。

D:何にも似てないすね(笑)。作ってる時に「これ、どう捉えられるんだろう?」って思いながら自分でもよくわかんなくて面白かったんで、何て言われるのかなってすげぇ楽しみでした。

(打ち込みのリズムが大活躍している)3曲目とかは、さすがにライヴでできない?

D:いや、だけど「やろうかな」って言ってて、なんかいろいろ考えてます。

「タンカティーラ」ってフジのライヴでも、♪ハッシュワリワリ~って言ってた?

D:言ってないです(笑)。だけどCDを聴いてくると、脳内補正で自分たちでやっててもなんか聴こえてくるんですよね。

お客さんもそうかもね。今回のツアー初日の千葉はネハンベースと。

D:久々に、1年ぶりですね。

で、ツアー2日目の横浜がゲラーズ。あとは完全ワンマン?

D:あとは全部ワンマンすね(詳細は、こちら)。ネハンとゲラーズは昔からの友達。バンド始めて1年くらいでもう出会ってましたね。両方ともちょっと活動休止してた感じだったんで、これを機会にもう一回。ネハンとかはこれを機会にって感じで、ほんとに重い腰を上げてもらったって感じですよ、ネハンは(笑)。

もっとやってほしいよね。

D:そうすね。

で、それが終わったらウルフ・パレードとUSツアー...の日程はもう決まったんだっけ?

D:そうですね、ウルフ・パレードと11月の3日から18ヶ所くらい。

クリスマス前くらいまでって感じ?

D:11月いっぱいで終わりますね。

じゃあ、かなり連チャン(笑)。

D:そうなんすよ。最後に1本だけカナダのトロントでやって、あとは全部合衆国で。

18ヶ所はどんな感じでまわるんですか?

スタッフ:ニュー・ヨークのちょっと下のモントクレアってとこから東海岸をブワーッとマイアミまで行って、南部のジョージア州からシカゴに向けて上がってって...(詳細は、こちら)。

なるほど。

スタッフ:たぶん最後は相当寒いんだろうなあと。

D:だから今日もちょっと新宿のアウトドア用品売ってるところで「なんかいいジャンバーないかな」って探してました(笑)。軽くて暖かい服がほしくて。マイアミとかでは、まったくいらないじゃないすか。

持ち運ばなきゃいけないもんね。

D:逆にアメリカで買うっていうのもアリすよね、寒くなったら。

それが一番いい(笑)。

D:しかも、今$が85円になってるし。

そうだよ、向こうで買ったほうが絶対いいよ。

D:そうすね。そうしよ。

俺も昔スコットランドとか行くと、夏とかも寒いからそこで買ってっていうふうにやってたの思い出した(笑)。楽しみですよね、それは。

D:楽しみですね。初海外なんで、個人的にも。初海外アメリカ・ツアーってすごいすよね。

それも18カ所もウルフ・パレードとできるなんて恵まれてますよ。またその話とか聞きたいですね。

D:来てくださいよ、アメリカ。

お金と時間が(笑)。ニュー・ヨーク市はないんですか?

スタッフ:ニュー・ヨーク市はなかったですね。最初のモントクレアがニュー・ヨーク州なんで。

でも、逆にそういうほうがいい。合ってる感じがする(笑)。いい意味で。

D:確かに(笑)。

道中、長野よりもっと森の中を通るかもしれない。

D:あるかもしれないすね(笑)。楽しみだ。

この新作の弾けた感じとかはアメリカでウケるような気がするけどね。

D:ほんとですか?

わかんないけど(笑)。物販でCDとか売ったりするんですか?

D:一応レコードを、セカンドのレコードを再発するんで、それを持って行こうかなっていう。「レコードしか売れない」って聞いたんで。

ああ、たしかにアメリカのライヴ・ハウスの物販だったらアナログ盤のほうがベターな気が。

D:そうですそうです。

セカンドはあれだよね、名曲「コインランドリー」も入ってる『アルファベータ vs. ラムダ』。

D:はい。

それは日本のファンも是非って感じで。そしてこの新作、アメリカ人にも聴いてもらいたい...。あと、聞き忘れたことは...(ここでもう一度曲名リストに目をとおしながら)、そうそう、さっき「バカ全開」って言ってた(笑)3曲目の「どちらにしろ」ってタイトルはかなり投げやりでいいですね。

D:ははははは、確かにそうすね。投げやり(笑)。

この歌詞の内容は、投げやりというか...、達観した感じですか?

D:そうすね、まあ「どっちでもいい」っていうことすね(笑)。ほんとにそういう曲です。

このミニ・アルバム「浮かれている人」全体が、そういった幅広い解釈を聴き手に許すような作品になっているといえませんか?

D:そうかもしれませんね(笑)。


2010年8月
取材、文/伊藤英嗣



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オウガ・ユー・アスホール
「浮かれている人」EP
(Vap)

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