!!!(チックチックチック)

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変わっていくことっていうのは
すごくナチュラルで、美しいことだと思う


バンドのハイ・エナジーをそのまま落とし込んだような作風から、ミニマルで、エディットがふんだんに盛り込まれた作風へと移行した最新作『Strange Weather, Isn't It?』を引っさげて、堂々フジロック初日、ホワイト・ステージのトリを飾った!!!。まだまだ新作からの楽曲は試運転段階のようだが、これまで以上にグルーヴィーな新しいバンド像を垣間見せる、貴重なステージだったと言っていいと思う。インタビュー中でニックが語っているように、10月の単独公演(こちらもご参照ください!)では新曲をより自分たちのものにし、さらに素晴らしいステージを見せてくれることだろう。今回のインタビューではフジロックや新作の話はもちろん、ダンス・バンドの流行から、はたまたイギー・ポップの是非まで、様々な話を聞かせてくれた。

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フジロック初日の出演お疲れ様でした。苗場には何日間いたのですか?

ニック・オファー(以下N):2日目までいたよ。

誰かのライヴを見たりしました?

N:ダーティー・プロジェクターズとジョン・フォガティー、あとロキシー・ミュージックは見たよ。

誰が良かったですか?

N:ダーティー・プロジェクターズは素晴らしかった。ジョン・フォガティーも良かったよ。ロキシー・ミュージックはあまり期待せずに見たんだけど、いい部分もあればつまんない部分もあったって感じかな。とにかくダーティー・プロジェクターズが最高だったね。

うん、素晴らしかったですよね。!!!も初日のホワイト・ステージのトリに相応しいライヴだったと思いますが、ご自身の感想は?

N:うーん、ちょっと難しいショウではあったね。「The Most Certain Sure」とか「Hollow」とか初めてやった曲が多くてさ、結構チャレンジだったんだよね。ロキシー・ミュージックのカヴァー(彼らは初期のシングル「Virginia Plain」をプレイした)も、もっと盛り上がると思ってたんだけど、みんなあんまりよくわかってないみたいだったし(笑)。

確かに新しいアルバムはこれまでのライヴ感のある作品とは違って、ミニマルで、エディット感の強い作品だったので、!!!のロック・バンド的な側面を求める人からすると戸惑いはあったかもしれません。ライヴをやる上での意識もこれまでとは違いますか?

N:いや、意識自体は変わらないかな。確かに今回のアルバムはハーモニーとかにも重点を置いてるから、他のメンバーもきれいに聞かせようと意識している部分があるかもしれないけど、でも、そんなにすごく意識してるってわけじゃないんだ。だからテクニカルな部分での変化はあるかもしれないけど、意識自体にそんなに変わりはないね。ライヴになったら全力でやるだけだよ。

じゃあ実際に新作の曲をライヴでプレイしてみて見えたことはありますか?

N:毎回ライヴをやるたびに学ぶことはあるよ。具体的に言えないんだけど、色々気づくことがあって、成長してると思う。だから10月に戻ってくるときは、きっと今よりいいものになってるんじゃないかな。

楽しみにしてます。では改めて新作のことをお伺いしたいのですが、そもそも本作での変化の最も大きな要因はなんだったのでしょう?

N:最も大きいのは多分...バーで友達と話していた時に、途中まで作ったものを試しに聴かせてみたんだよね。そうしたら「長すぎる、ジャムばっかり」っていう感じで全然ポジティヴな言葉が出てこなくてさ。それからというもの、曲を書いててもどうしてもそいつの声が後ろから聞こえてるような気がして(笑)。じゃあ作り方を変えてみようってことで、エディットをしたり、ミニマルの影響を取り入れたりして、これまでとは違うものになったんだ。

これまでのアルバムも素晴らしかったとは思うのですが、どうしても「!!!といえばライヴ・バンド」という評価が先に立ってきましたよね。それに対して、アルバムとしての評価を望んだという側面もあったのでしょうか?

N:基本的に、ライヴとアルバムは全く違うものだと思ってる。さっきも言ったようにライヴはとにかく自分たちのエネルギーを全て出すだけであって、余計な考えはそこにいらないんだ。アルバムはそれとは全く逆で、スタジオにいるから細かいところまでみんなで考えるし、直したりする。もちろん、アルバムがあって、そこからライヴをやるわけだけど、実際にライヴでやることは、アルバムを制作してる時に考えてることとは違うんだ。

!!!の登場以降、ダンス・ミュージックを演奏するインディー・バンドが非常に増えましたよね。そういう状況に対して、自分たちが一歩先を示すべきだという考えはありましたか?

N:基本的には「みんながこっちに行くなら、じゃあ自分たちは逆に行こう」っていう姿勢ではあるね。でも、まだ自分たちはダンス・ミュージックをやりきれてないと思うんだ。まだまだやりたいことがいっぱいあるから、たくさんフォロワーが出てきたとしても、これからもダンス・ミュージックに取り組みたいと思ってる。次のアルバムでいきなりジャズになることはないよ(笑)。

photo by Toru Yamamoto
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日本でもダンス・ミュージックを演奏するバンドって増えてて、日本ではシンプルに「ダンス・ロック」って呼ばれたりしてるんですね。でも、ロックンロールは元々ダンス・ミュージックだから「ダンス・ロック」っていう言い方には違和感があるっていう意見も多いんです。「ダンス・ロック」という言葉をどう思いますか?

N:ダンス・ミュージックの人たちが考えてるのって、どうやってクラブで映える音を作るのかとか、どうやって他のレコードと混ぜ合わせるのかとか、ロックの人たちと考えてることが全然違うと思うんだよね。ロックの人とジャズの人が違うようにさ。だから、その全く違う二つが「ダンス・ロック」っていう一つの言葉になってるのは、理解できるよ。全く違うものを掛け合わせて新しいものを作り出そうとする動きっていうのは、とても自然なことだと思うから。

ダンス・ミュージックを演奏するバンド以外も含めて、ここ数年のインディー・バンド全体の盛り上がりに対してはどのような印象を持っていますか?

N:僕らがバンドを始めた頃のインディー・バンドは全然面白くなかったね。僕が聴いてたのはトータスとステレオラブぐらいで、ヒップホップやR&B、ティンバランドとかをよく聴いてたんだ。でも逆に今は面白いヒップホップがなくて、インディー・バンドの方が間違いなく面白いと思う。

誰がお好きですか?

N:新しいWavvesのアルバムはすごく良かったよ。あとはLCDサウンドシステム、M.I.A....ホールのはあんまりよくなかったな...ジョアンナ・ニューサムはよかった。あとはやっぱりダーティー・プロジェクターズだね。君は今年のフジロックで誰がベストだった?

ええと、僕もダーティー・プロジェクターズかも。

N:ロキシー・ミュージックもジョン・フォガティーもいい曲はあるし、ファンも一緒に歌ってるんだけどさ、なんか博物館にいるような気分になっちゃうんだよね(笑)。ダーティー・プロジェクターズは彼らの人生そのものが音にこめられてるような気がしてさ、すごく新鮮だし、エクスタシーを感じたよ(笑)。あ、LCDサウンドシステムは見た?

いや、ちょっとだけ。アトムズ・フォー・ピース見に行っちゃいました。

N:ああ、まあしょうがないね。LCDサウンドシステムはアルバムはちょっと退屈かなって思ったんだけど、去年の夏に見たライヴは素晴らしかったんだよね。まあ、ダーティー・プロジェクターズにしろLCDサンドシステムにしろ同世代っていうのは大きくて、もうちょっと世代が上の人だったらロキシー・ミュージックを博物館とは思わないよね。でも僕からすると、ダーティー・プロジェクターズとかLCDサウンドシステムはすごく「発見」があるんだ。同じものをシェアしつつ、新しい発見ももたらしてくれるっていうのはすごく興奮するし、感動するよね。

確かにそうですね。

N:例えばイギー・ポップってロックの基本とされてて、神様のように扱われてたりするけど、僕からすればショウを見ても全然面白くないんだ。彼がホントにすごかったのは、200人ぐらいしか入らないようなクラブとかでやってた頃で、グラストンベリーで大勢のオーディエンスの前でやってる今の彼を見るよりは、僕はダーティー・プロジェクターズやLCDサウンドシステムを見たいね。まあ、実際にイギー・ポップに会ったらこんな感じだろうけど(と言って腰をかがめて手を差し出す)。

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photo by Toru Yamamoto

(笑)じゃあアルバムの話に戻すと、今回はそのLCDサウンドシステムとも関わりの深いエリック・ブルーチェックが共同プロデューサーを務めてますよね。結構ぶつかり合いもあったそうですが、どんな点でのぶつかり合いが多かったのでしょう?

N:うん、彼との作業は難しかったね。新しいメンバーが一人増えるようなものだったから。メンバーそれぞれ自分がどうするべきか、アルバムをどうしたいか考えてるわけで、それが一人分増えるんだから、まあ大変だよね(笑)。しかもエリックはこれまでに一緒にやったことのない完全に新しい人で、プロデューサーっていう立場もあったから先生みたいでさ。自分たちがやりたいことをエリックに反対されて「なんでだよ!」みたいな(笑)。でも、毎回アルバムが完成した後に思うのは、それぞれ「ここは俺が合ってただろ」って部分があるのと同時に、「この部分は君が合ってたよ」っていうのがあるってことで、結果としては良かったと思ってる。エリックとも制作中はぶつかったけど、人柄はすごく良くてさ、一緒にご飯食べに行ったり遊んだりしてるよ。

ジャスティン・ヴァン・ダー・ヴォルゲンは脱退したものの、本作でもミックスを手掛けてるんですよね? 彼とは今もルームメイトなんですか?

N:うん、今日の朝にメールで猫の話をしたよ(笑)。

彼は今もっとダンス・ミュージックに特化した音楽活動をしているそうですね。

N:リー・ダグラス(Lee Douglas)とTBDっていうプロジェクトをやってるよ。あとはゴルフ・チャンネル(Golf Channel)っていうレーベルと仕事をしたりもしてる。

では、最後の質問です。新作のタイトル『Strange Weather,Isn't It?』には、困難や悲しみを乗り越えて前に進んでいくという思いが込められているそうですが、前に進んでいくための現在の最大のモチベーションは何なのでしょうか?

N:変わっていくことっていうのはすごくナチュラルで、美しいことだと思うから、それに対して僕はポジティヴなんだ。乗り越えていくっていうのも変わっていくことと同じだから、やっぱりすごく自然なことで、今回のアルバムも自分たちにとっては自然な変化だったと思う。次の作品がどうなるかはまだ全くわからないけど、今後もそういう姿勢自体は変わらないと思うよ。


2010年8月
取材、文/金子厚武

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