MAXIMUM BALLOON『Maximum Balloon』(Interscope)

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maximum_balloon.jpg デイヴ・シーテック。もしこの男がいなければ、00年代のポップ・ミュージック界はかなり違ったものになっていたかもしれない。ブルックリンの大御所バンド、TV・オン・ザ・レディオのギタリストとして、また、ヤー・ヤー・ヤーズやライアーズ、フォールズなどのプロデューサーとして、エポックメイキングな作品を世に送り出してきた。今のブルックリンの活況もデイヴあってのものといえるだろう。

 そんな彼が、初となるソロ・アルバムを作り上げた。名義はマキシマム・バルーン。TVOTRのバンドメイト、トゥンデ・アデビンペとキップ・マローン、カレン・Oにホーリー・ミランダ、それに注目の新人ラッパー、セオフィラス・ロンンドン、更にはデヴィッド・バーンまでがゲスト・ヴォーカリストとして参加している。そのメンツの豪華さはまるで、今年のゴリラズやマーク・ロンソンのアルバムのよう。しかも、共通しているのは、あくまで「裏方」であること。決して、自分自身がフロントにしゃしゃり出てくることはない。

 しかも、ヴォーカリストひとりひとりにベストなトラックを提供していることに驚かされる。そのハマり具合には恐れ入るばかりだ。例えば、艶やかに黒光りするトゥンデのヴォーカルにはゴシック・ディスコを、カレン・Oには『It's Blitz!』に通じる気高さを感じるシンセ・ポップを、デヴィッド・バーンには後期トーキング・ヘッズを彷彿させるミニマルなファンクを、といった具合だ。はっきりいって、各ヴォーカリストが実力を十二分に発揮できないはずがない。すべての曲で、デイヴのトラックとヴォーカルががっぷり四つに組んでいる。そのため、結果的に個性豊かな楽曲が揃うこととなった。

 全体的には、ナイル・ロジャース譲りのパーカッシヴなギターが印象的な、ソウルとアート・ロックを融合させたような作風が展開されている。TVOTRの最新作『Dear Science』での一大抒情詩的作風とは打って変わり、ダンサブルなビートを備えたフロア対応型のアルバムだ。だが、ベクトルこそ違えど、実験性とクロさ、ポップネスの3つを全く欠くことのないハイ・クオリティを誇っている。まだまだ、デイヴ・シーテックは時代のトップ・ランナーだ。彼は、そのことをこの作品で証明して見せたのだから。

(角田仁志)

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