ねごと「Hello!"Z"」EP(Ki/oon)

| | トラックバック(0)

negoto.jpg やっと日本から、こういうバンドが出てきた。今の若者って物事をシニカルな目線、シニシズムなスタンスで構えている人が多いように思う。それはそれで面白いことも起こりえるし、ひとつの観点としてはありだけど、今の日本では、そのシニシズムが「世界は良くならないけど、その世界で精一杯生きていくんだ」というところで止まってしまっているように見える。だから街を歩くと、停滞感にも似た、どんよりとした空気を感じるのかなと、個人的には思う。

 すべての曲で歌詞を書いている蒼山幸子の歌詞世界も("NO"と"夕日"では、それぞれベースの藤咲佑と、ギターの沙田瑞紀もクレジットされている)、現代の若者らしいシニシズムというのが垣間見えるが、それが内省的な方向ではなく、ちゃんと外に、ポジティブなエネルギーとして放出されているのが素晴らしい。若者特有の怖いもの知らずな勇気がそうさせているのかは分からないけど、とにかく前を向いて走り抜くような疾走感は、聴く者に爽やかな空気をもたらしてくれる。だけど、そんな爽やかさに対する影のように、「透き通る衝動」や「NO」という曲も存在している。これらの曲に潜む「危うさ」が、僕がねごとに興味を持ったキッカケでもある。それと、「ループ」の歌詞ってどう読んでもトリップについて歌っているように聞こえてしまう。まあ、それは僕の馬鹿な想像がそうさせるだけなのかも知れないが。「ワンダーワールド」のような遊び心も面白いけど、「夕日」をなぜ英語で歌ってしまったのか? 正直、英語で歌う蒼山幸子の声は微妙です。

 音は、スーパーカーやナンバーガールにソニック・ユースなど、本人達も好きと公言しているバンド達の影響が強い。正統派のギター・ロックを基本として、シューゲイザーに『GOO』期のソニック・ユース、浮遊感のあるエレ・ポップなど、鳴らしている音楽から察するに、音楽的教養なんかも高い気がする。しかも、年齢のわりにライブなどの場数も多く踏んでるから、サウンドがタフで、力強さがある。藤咲佑と澤村小夜子のリズム隊が鳴らす土台が安定感抜群。特に、藤咲佑が鳴らす存在感溢れるベースは、ねごとのグルーヴの中枢と言ってもいい。収録されている曲のほとんどが、ライヴで何度も演奏されている曲だということもあるんだろうけど、メンバー全員演奏能力は高いし、この先どんどん幅広い音楽性を見せてくれることを期待させてくれる。そんな輝かしいモラトリアムが、アルバム全体を覆っている。

 たぶんアイドル的なガールズ・バンドとして見られるだろうし、「全員平成生まれ」とか、そんなどうでもいい謳い文句も手伝って、しばらくはいろんな色眼鏡と戦うことになるかも知れないけど、ねごとは大丈夫だと思う。だって、彼女達は「生きている」から。彼女達は、日本では数少ないロックンロールの「ロール」ができるバンドだ。少なくとも、それができる大きな可能性が、「Hello!"Z"」には詰まってる。眩し過ぎて、聴くのにサングラスが必要かも知れない。瑞々しい輝きに満ちたミニアルバムだ。

(近藤真弥)

retweet

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: ねごと「Hello!"Z"」EP(Ki/oon)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://cookiescene.jp/mt/mt-tb.cgi/2392