快快(faifai)『Y時のはなし』DVD(Headz)

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faifai.jpg 批評家・佐々木敦氏が代表を務める「HEADZ」の演劇/パフォーミング・アート作品をリリースする新レーベル「play」の第一弾リリース作品の快快(faifai)『Y時のはなし』のDVDについて。

 まずは彼ら快快(faifai)について。2004年結成(2008年4月1日に小指値(koyubichi)から快快に改名)、メンバー10+サポートメンバーによる東京のカンパニー。ステージやダンス、イベントに楽しく新しい場所を発信し続けるパフォーマンスカンパニーであり、日本という枠をとっくに飛び越えて海外でもそのパフォーマンスを展開している。

 作風としてはまずは多幸感、そして祝祭性がある。極めて今の時代のポップさがあり身体性があり、ゼロ年代に対するカウンターあるいはアンチテーゼとして機能するカラフルでハッピーなポップさが咲き乱れている。 そんな彼らについたあだ名は「Trash & Freshな日本の表現者」「現代の蜃気楼、ファイファイ」というもの。今月の9月4日にはスイスのチューリッヒ・シアター・スペクタルにて『my name is I LOVE YOU』がWinners of the ZKB Patronage Prize 2010を受賞する快挙を成し遂げている。

 僕が初めて舞台で観たのがその『my name is I LOVE YOU』だったのだが、感想としてはかわいいとかっこいいが混ざり合っている、そして身体を使い、舞台をめいいっぱい使いダンスなどで身体性が発揮されている。観る側の視覚で捉える身体性が示す物語、台詞は英語なんだが、まるで英語がサウンドトラックのように聞こえた。

 舞台をまるで観ないというわけではなく、大人計画などの小劇場出身の舞台を観に行ったりすることはある僕だけども、彼らの動きや物語に孕まれている多幸感というハッピーさは初めて味わう感じだった。そして毎日という平凡な日常の中にある祝祭性を感じれた。それらの感覚<多幸感/祝祭性>はネガティブなものが支配したゼロ年代を吹き飛ばしてしまう素晴らしさがあった。くよくよしても変わらない世の中に対してわたしたちはいくらでも楽しむ事ができるのだという明確な意思表示、カラフルに彩られている世界への気づきが彼らのパフォーマンスにはあり、観ている者をそちら側に振り向かせてくれる。

 DVD化された今作『Y時のはなし』は二年前の日本初演時にも大反響を巻き起こした『R時のはなし』をタイトルも新たに、さらにアイデアを盛り込み長編としてリマスターしたもの。夏休みの学童保育を舞台に、子どもと大人、人形と人間、夢と現実が、子どもの頃に一度は夢見たスペクタクルと夏の終わりの悲しみが鮮やかに交差する物語。本編にもカエルだったり宇宙人だったり三人一組を一人で演じたりと怪演している天野史郎によりアニメーションが重ねられているので実際に舞台を観た時とまた違った『Y時のはなし』に仕上がっている。

 この作品は役者が人形を持って演技をする、つまりはある種の人形劇でもある。人形を持っている役者ももちろんそのまま映し出され演じている。時折人形ではなく彼ら自身が人形の代わりにもなる。人形というデフォルメと人間という身体性が混ざり合っていく、人間の肉体では不可能な事を人形では行なえる。身体で表現できるダンスや躍動感が対比と言うよりはそれらがプラスされて世界を広げていく。小道具もその使い方はポップであり時にはバカバカしくて自然と笑みが溢れてしまう。楽しんでいるというのが画面を通してでも伝わってくる。

 舞台上で流されている映像も、実際の景色やファミコンのドット画像なんかが僕らの幼年期の原風景と重なっているような感じを受ける。それらのものが合わさってお互いの輪郭を薄くして全てものがそこにあるのが自然な雰囲気になってくる。でも、どことなくワンダーランドであって多幸感が溢れ出る。

 ある人が観れば子どもの遊びの様に感じられるかもしれない。真剣に「かめはめ波」を放つ人間を観た事が君はあるか? 大人になっても真剣に楽しんで遊ぶ事の正しさと幸福さ、そこに巻き込まれてしまう事の心地よさ。それは世間に世界に社会にある問題に背を向ける事ではない、きちんとこの世界でどれだけ「play」できるかという挑戦だ。何もしなくても世界が変わらないのならまずは僕たちがわたしたちが、まず出来る限り楽しんで世界の色彩を変えてしまえばいいのだと彼らの舞台を観ていつも思う。

 そして彼ら快快はA.T.フィールド(『新世紀エヴァンゲリオン』の監督・庵野秀明氏は「A.T.フィールドは心の壁のようなもの」と言っている) を張らずに多くものを受け入れるキャパシティがあり、観ているもののそれを取り払ってしまうし、軽々と越えて入ってきてしまう。だから彼らの多幸感や祝祭性が僕らの中に芽生えていく。

 このDVDを観たらきっと生で彼らのパフォーマンスが観たくなるだろう。舞台で観ればもっと違ったものが。

 真剣に「かめはめ波」を放つ大人に僕らもなればいい、ポップな散乱銃でカラフルな風景がこのテン年代(by 佐々木敦)に広がればいいと思う。快快は世界中を走り回って祝祭を与える。

(碇本学)

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