マニック・ストリート・プリーチャーズ『ポストカーズ・フロム・ア・ヤング・マン』(Columbia / Sony Music)

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manic_street_preachers.jpg 常に時代の真逆へと舵を切っているマニックス。今作『Postcards From A Young Man』でも、時代に逆らうようなアルバムを作ってきた。良い意味で売れ線なのだ。そして、かなり王道的な音になっていると言われたりしていたけど、前作の『Journal For Plague Lovers』の余韻を引きずったような曲もあるし、「まんま『A Design For Life』やん!」な「Postcards From A Young Man」のような曲もある。

 僕自身『The Holy Bible』がマニックスのディスコグラフィーのなかで一番好きだし、どうしてもそのときの「ポストパンク・リバイバルを先取っていた音」のイメージが拭い去れない。そして、リッチーの創造力溢れる歌詞。良くも悪くも、マニックスにはリッチーという存在が付きまとっていた。もしかしたら、今作に収録されている「Auto-Intoxication」での「俺ってラッキーなんだよな/生き残ったんだよな」という一節なんかは、「『The Holy Bible』期のマニックスとリッチー失踪について?」と世間では思われるかも知れない。でも、『Postcards From A Young Man』にリッチーは付きまとっていない。正確には、マニックスの中にリッチーは生きているけど、リッチーを引きずっていないという感じ。今作に対する引き合いとして、『Everything Must Go』や『This My Truth Tell Me Yours』といった彼らが過去に発表したアルバムが挙がるけど、『Everything Must Go』の「とりあえずの応急処置」や、『This My Truth Tell Me Yours』の「手探りで彷徨う姿」というのはここには見られない。むしろ、絶対的な確信に満ちている。それは前作『Journal For Plague Lovers』で、歌詞という形ながらも、リッチーと向き合った影響があるのかもしれない。

『Postcards From A Young Man』でのマニックスは、多くのマスや観衆を求めている。それでも、インターポールの最新作みたいな安っぽさを感じないのは、マニックスの行動が常に批評精神に基づいているからだと思う。今の時代というのは、アンダーグラウンドに留まりつつ(若しくは、その精神を保守的なまでに守りつつ)、少しずつ支持を得ていきながら活動するというのが主流になっている(まあ、そうせざるえないという一面もあるけど)。もしかしたらマニックスは、旧態的な音楽ビジネスの良い面である「音楽のカオスと躍動」が好きなのかも? だから、クイーンだったり、久保憲司さんの言うところのカーティス・メイフィールド、つまり、ハード・ロックだったり、アーバン・ソウルだったりするのだろうか? そうだとしたら、僕からすると、単なる「おっさんの戯言」に聞こえてしまうけどね。でも、マニックスの凄いところは、その戯言でさえ批評として成立してしまうところ。だから僕は、マニックスが大好きなんですね。

 僕としては、このアルバムが現在の音楽シーンの幻想を取り払ってくれることを期待している。つまり、「音楽ビジネスそのもの」を否定して、ある種のナルシズムに陥り、「否定」が自己目的化してしまう罠。現在の音楽シーンって、そんな罠にはまって退屈な音を鳴らしている輩が多いと思うので。DIYな活動で注目集めているアーティストやバンドだって、やっていることは、従来の音楽ビジネスの人達がやっていたことと、ほとんど変わらないですからね。ただ、その使い方を自分なりにアレンジしているだけ。要は、「どう使うか?」ということです。
 
 マニックスは、音楽ビジネスの仕組みを上手く使いこなせるから、どんな方向性に行っても支持され、注目されるんだと思う。そして、自分の主張や表現を曲げずに実行する。これは相当なタフネスと知性がないとできないことだし、それを20年近くも第一線でやり続けているのには、マジで尊敬です。解散してしまったオアシスとの差は、そこだと思う。そして『Postcards From A Young Man』は、そんなマニックスのひとつの集大成であり、新たな始まりだと僕は思う。

(近藤真弥)

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