CALEXICO 『Live In Nuremberg』(Self-Release)

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calexico.jpg カリフォルニアとメキシコをマッシュアップした実在の町の名前を持つ2人組、キャレキシコ。オルタナ・カントリーの伝説的存在として20年近くに渡ってパンク、ガレージ・ロックにルーツ・ミュージックをミックスしたサウンドを鳴らし続けたジャイアント・サンドのメンバーが中心となって結成されてから10年以上がたつ。ジョーイ・バーンズ(ボーカル/マルチ・インストゥルメント)とジョン・コンヴァーティノ(ドラム)は、その名のとおり、アメリカとメキシコの音楽を様々なアプローチで混血させてきた。ブルース、カントリー、テックス・メックス、マリアッチ、そしてフォーク。「ルーツ・ミュージックや民族音楽は、ちょっと苦手だなぁ」という人も耳を傾けて欲しい。だって、このライブ・アルバムは無料でダウンロードできるんだから! ルーツ・ミュージックや民族音楽は、ストリートから生まれたサウンド。食わず嫌いはもったいない。身体に馴染むビートやメロディ、楽器の響きがきっと見つかるはず。

 キャレキシコは1st『Spoke』から現時点での最新作である6th『キャリード・トゥ・ダスト』までTouch & Go傘下のQuarterstick Recordsに在籍してきた。以前、僕が紹介させてもらったミ・アミは1stだけをこのレーベルからリリースして、2ndではThrill Jockeyに移籍していた。ということは、Touch & Goが閉鎖された今、キャレキシコはどのレーベルとも契約していないってこと? だからこのライブ・アルバムは「僕たち元気ですよ! ツアーに出ますよ!」って言う挨拶がわりなのかもしれない。バンドのウェブサイトには9月~10月のアーケイド・ファイアとのアメリカ/カナダツアーがしっかり告知されている。ひと安心。

 このアルバムは2009年にドイツのニュルンベルクで行われたライブをパッケージしたもの。バンドは中心となる2人にペダル・スティール、トランペットなどの奏者を加えた7人編成。観客との一体感や熱気を感じるというよりも、自分たちの音楽を真摯に演奏するバンドの姿が目に浮かぶようだ。全10曲中7曲が『キャリード・トゥ・ダスト』から。でもそのスタジオ盤に慣れた耳にも、この深さと広がりは新鮮で感動的だと思う。「Red Blooms」は、ディレイを駆使したポスト・ロック的な響きが強調されている。疾走感を増す後半でボブ・ディランの「シルヴィオ」が歌い込まれる「Victor Jara's Hands」も最高にカッコいい!ブルース・ハープとアコギ1本で、時にはバンドを従えてフォークからブルース、カントリーまで自由に歩き続けるディランの影がここまで届いていることにも納得だ。ディランの作品としては不遇の時代とも言える88年の『ダウン・イン・ザ・グルーヴ』からのピック・アップっていうのも素敵。名曲だから。

 さあ、このリンク先へジャンプして、ダウンロードを始めよう。スティーブン・ソダーバーグの『トラフィック』やコーエン兄弟の『ノーカントリー』の世界へようこそ。不気味なほど澄み切った青空とハイウェイ、不法入国、麻薬の取り引き、砂ぼこりと熱い太陽、そして夜の闇。ワイルドなんだけれども、人々の目はどこか覚めている。キャレキシコの音楽が鳴り響くここではない、どこかへ。

(犬飼一郎)

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