THE LIVING SISTERS『Love To Live』(Vanguard)

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liveing_sisters.jpg 好きとか、思い入れとか、それ以上の好意を示す言葉あるとすれば、それは愛という漠然とした言葉になるのかもしれないなと思う。ザ・リヴィング・シスターズのファースト・アルバムは、古きアメリカン・ミュージックへの愛情に満ちている。まったくこの柔らかさといったらなんであろうか。綿毛に包まれているような心地の良さ。フォーク、カントリー、ジャズを愛しているといわんばかりの音楽性は懐古的と言えばそうなのだけど、ふわふわしたサウンドにすっとオルタナティヴな響きが入ってきて品の良いスパイスみたいに香る。

 ザ・バード&ザ・ビーのイナラ・ジョージ、ラヴェンダー・ダイアモンドのベッキー・スターク、そしてシンガー・ソングライターのエレニ・マンデルの女性3人によるグループ。彼女たちの『Love To Live』、それはシェルダン・ゴムバーグとの共同プロデュース。再生した途端、体に暖かい明かりを灯してくれるウィスパー・ヴォイスやコーラスには甘い解放感があり、サックスもギターもさりげなく朗らかで眠りの昏睡に似た感覚がある。ベッシー・スミスとナンシー・ウィルソンのカヴァー2曲を含む全10曲。気付けばディスクが回るのをやめている。

 彼女たちにはこの作品を作らなければならない理由があったと思える。アメリカン・ミュージックをルーツとする3人それぞれのリヴィング・シスターズ以外での音楽活動を、自分で肯定できることを目指し、つまりは過去を肯定できなければ現在を肯定することはできないわけで、どの楽曲も肯定という名の愛情に満ち溢れているものだから、ああ、ほんとうに、彼女たちはアメリカン・ミュージックをリスペクトしているのだなという気持ちが音を通して伝わってくる。それが心地いいのだ。

 セクシャル・ハラスメントのつもりはないけれど、歌声にどこか処女性を感じさせるところがあり、清楚というかイノセントな響きが感じられる。なおかつロマンティックで瑞々しい美しさに意識が埃を払うくらい簡単にさらわれてしまうよ。それは甘美なトリップ感。歌声だけでも素晴らしいのである。伴奏も素晴らしく、職人的な巧さがある。遠近感を意識したミックスや間の取り方も絶妙だ。いわば自らのルーツ・ミュージックへのオマージュ的作品として位置づけできるのだけど、茶目っ気あふれるサウンド・エフェクト。重なっていく音の層。凝ったアレンジ。そのどれもが新鮮性に満ちている。より高みへ登ろうとする意識があって現在の音楽シーンから外れてはいるものの、それがなによ、という気質も窺えて聴いていて嬉しくなる。ぜひこのメンツでセカンド・アルバムも発表してほしい。やっぱり音楽に愛って大切なんだなあ...。

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