上野功平の場合は...

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2010.08.07 DAY 1

 実に7回目の参加となったわけだが、フジ・ロックのすぐ翌週というのはやっぱりキツい。サマソニ初日の一番のネックはリスト・バンド交換だけど、なんで高いカネ払っている通し券が「マリンのみ」の引き換えで、1日券がどちらでもOKなんだろうか? 幕張メッセからスタートしたい場合は本当に無駄足でしかないし、スタッフのやる気のなさといい、フジより高いドリンク代といい、インフラがいつまで経っても改善されませんね...。

 と、文句はこれくらいにして「せっかくなんで見たろか」と目論んでいた和製コートニーこと土屋アンナ様には当然間に合わず(ていうか、ここぞとばかりにスピン・アクアの再結成すればよかったのに)、わりと楽しみだったスリー・オー・スリーさえまさかの見逃し。しょうがないので、モデル風美女をガン見しながらメッセ方面へと踵を返す。というわけで、ソニック・ステージのイエス・ジャイアンティスで今年はサマソニ初めでした。圧倒されるような演奏スキルがあるわけではないけど、どこかノスタルジックな美麗メロディと朴訥とした佇まいに好感。後半3曲ぐらいしか見られなかったのがイタいなー。すぐさまシャトル・バスに乗り込み、マリン・ステージへ戻ってKREVAをチラ見。水着ギャルもB-BOYもイッサイガッサイ飲み込む余裕のパフォーマンスはさすが。

 そのまま日本のリヴィング・レジェンドこと矢沢永吉を前方で見る。10代前半の頃はファンである親の影響でドラマ『アリよさらば』を見たり、自叙伝『成りあがり』を読破したり、もちろん音源にも触れていたりしたものの、ステージを見るのは初体験。しかし、そんな一見さんのハートも瞬時に掴んでしまうパフォーマンスの数々には惚れ惚れしちゃいました。シャツからスラックス、ローファーまですべて白で統一した衣装でステージを右から左まで練り歩き、ハットや大判タオルなどの小道具も登場し、十八番のマイクスタンド回しも披露。そして何といっても、歳を重ねるごとに凄みを増す破格のヴォーカリゼーション。「時間よとまれ」などのお馴染みのナンバーから、最新作『Twist』の楽曲までコンパクトながら大満足のセット・リストで、「止まらないHa-Ha」におけるタオル投げなんかは、E.YAZAWAのロゴ入りタオルだけが飛び交う単独公演とは違ってバンドもカラーも多種多彩。これはやっぱり"フェス"ならではの光景でしょう。七尾旅人も「ワンマンに若い客が来てほしいから」という理由で積極的にフェスへ出演していると述べていたが、永ちゃんも同様に「もっと見たい!」と思っている10代、20代のファンが年々増えているはず(なんと、『Twist』の全国ツアーでは学割も用意している)。2004年のロック・オデッセイで大トリを務めた時のような"違和感"はもうないし、彼は数年かけてジェネレーションの壁をブチ壊すことに成功したのだ。あっぱれなワッケンロ~ルでした。

 続けて最前ブロックまで突入し、屈強なお兄さん達に囲まれながら見たナズはもうヒット曲連発のメドレー仕様で大盤振る舞い。1DJ&1MCスタイルかと踏んでいたら、しっかりバンド仕様で踊らせてくれました。よし、俺もニュー・エラ買おう。再びメッセへと向かうも、導線が不便でパッション・ピットには間に合わなかったので、腹ごしらえしてからソニック・ステージで行われたアーハ最後の東京ライヴへ。コテコテの80'sショウになるかと思いきや、鉄壁の演奏とフューチャリスティックなVJが素晴らしく、ホット・チップやメトロノミーあたりの若手とも余裕で張り合えそう。それでもやはり、ラスト「Take On Me」の盛り上がりは別次元。解散は惜しいけど、悲観的なムードは微塵もなくて楽しかった。もはやジェイ・Zまではガッツリ見たいアクトもいないので、ビーチ・ステージで友人と合流する前にマウンテン・ステージを覗くと、リチャード・アシュクロフトが坊主になっててビックリ。いざメッセから退場しようとしたら、飲食エリアにあるお笑いステージにびっしりと人垣が。何かと思えば、テレ東の番組『おねだり!! マスカット』から生まれた恵比寿マスカッツのライヴとのことだったので、もちろん拝ませていただく。フロントに位置するRioと吉沢明歩は、テレビで見るより可愛くて目の保養もバッチリです。口パクじゃなくてちゃんと歌っていたようだけど、ステージがステージだけに音はバキバキ(笑)。MCを背中で聞きながらメッセを後にする。

 去年のゲリラ豪雨で無念のキャンセルだったタヒチ80は、潮風の気持ちいいサンセット・ビーチというシチュエーションでリベンジは大成功。「Heartbeat」だけでも聴けてよかったー。その後のイールズには相当後ろ髪を引かれつつも、今年のサマソニのテーマはヒップ・ホップ or 90年代オルタナと決めているので、またもマリン・ステージの前方へ突入。スクリーンに浮かぶカウント・ダウンの終了と共に暗転し、サマソニのロゴ入りTシャツ(これはダサかった)とサングラスを身に着けたジェイ・Zが登場すると、割れんばかりの大歓声。ツイン・ドラムでオール黒人男性というバンド編成は、昨年の奥様ビヨンセとは好対照か。リアーナやアリシア・キーズの飛び入りといったサプライズこそなかったが、「Run This Town」、「99 Problems」、「Empire State Of Mind」、「Young Forever」...などなど、惜し気もなく披露されるキラー・チューンの完成度の高さには改めて舌を巻く。ハイ・クオリティのVJも手伝って、気分はニューヨーカー。惜しむらくは、オーディエンスがもうちょっと英語の理解力があればさらに盛り上がっただろうになあ。というか、この手の大物アクトは多少危険でも本国で見るべきかもしれませんね。

 マリン・ステージ終演後の定番である花火を眺めながらメッセへと猛ダッシュ。スマッシング・パンプキンズとオービタルそれぞれのアンコールは間に合ったのだけど、特にスマパンは「Tonight Tonight」が生で聴けてホクホク。そしてドラマーの男の子が超若くてお肌ツルツルでした。正直帰って爆睡したかったものの、やたら豪華なミッドナイト・ソニックは見逃せない。しかも、アーハに負けじとペイヴメントも東京での最後のライヴになるかもしれないのだ(スマパンの直後に見られるって凄いよね)。そんなこんなで、「Cut Your Hair」のゆるゆるコーラスで幕開けした彼らはやっぱりいつも通り飄々と、でも楽しそうに約1時間半のライヴをやり切った。あれ? でも、「Summer Babe」やってなくない?? しばし小休止した後、奇跡の再結成&翌日のデッドマウスの代打含め東京で3夜連続のライヴを敢行したアタリ・ティーンエイジ・ライオット。アレック皇帝のお腹まわりはちょっと貫禄ありましたが、BPM200超えっぱなしの超高速デジタル・ビートでモッシュ・エリアはとんでもないことに。クラウド・サーフをしながら、ファンお手製のフラッグを掲げた皇帝はまるでドラクロアの絵画みたいでした。

 初日のシメとなったのがピーター・フック(元ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダー)、アンディ・ルーク(元ザ・スミス)、マニ(元ストーン・ローゼズ/プライマル・スクリーム)という英国きってのベーシスト達が集結したスーパー・バンド、フリーベース。深夜ということですでに酒が回っていたのだろうか、酔っ払いが酒場でクダを巻くようなヘロヘロの演奏はマンチェスター万歳。遠くから見ると、どう見てもクリブスのライアン君にしか見えないヴォーカリストがかなり善戦していました。マニによるメンバー紹介では、「イチバンスケベジジイ」としてフッキーを呼び、自分のことは「No.2スケベジジイ」と。そこを譲るなよ(笑)。デビューEPはスルーしていたのだけど、ラストで披露されたジョイ・ディヴィジョンの「Transmission」と「Love Will Tear Us Apart」の2連発はいくなんでも反則!! 色んな意味で貴重なライヴだったなーと、これを書きながら考えていたら、どうやら先日アンディ・ルークが脱退してしまったようです...。ライヴの「一回性」を体現するようなスペシャル・アクトに拍手! 

2010.08.08 DAY 2

 ほぼシャワーと着替えのためだけに戻った自宅から、トンボ帰りして2日目。今年話題の"サーフ系"アクトのひとつサーファー・ブラッド(物販のTシャツがまんま『Unknown Pleasures』だった)では見事に爆睡。ふらふら移動してオリアンティちゃんを幕張メッセ内のスクリーンで済ませることにより、本日メッセから出ないぞ宣言。6月のワンマンに引き続き満員御礼のドラムスは、噂の江頭2:50ダンスはもとより、ベースレスであれだけグルーヴをしっかり構築できることに感心した。1曲1曲のオーディエンスからのリアクションも凄まじかったが、終盤で披露された「Let's Go Surfing」はやはり格別。まだまだファンが増えそうです。

 フジ・ロックと違ってステージ移動がラクなので、ビッグエルフやコヒード・アンド・カンブリアといったクッキーシーンとはあまり縁のなさそうなラインナップのマウンテン・ステージも、ちょこちょこつまみ食い。元ハノイ・ロックスのマイケル・モンローは、ギャグすれすれで痛快だったが1曲でギヴ・アップしてソニック・ステージのバンド・オブ・ホーセズへ。今やパール・ジャムのオープニング・アクトという大役まで任されるようになった彼らだが、2年前とほぼ同じ条件での出演なのが勿体ないかも。ただ、前回は用意されていなかったスクリーンに世界各地でのツアー・ドキュメント映像などを流すことで、牧歌的で"アメリカン"な世界観が強まっており、演奏も完璧。キングス・オブ・レオンやインターポールみたいに人気格差が開きすぎる前に、一刻も早く単独ツアーを!

 マリンのア・トライブ・コールド・クエスト(以下、ATCQ)はめちゃくちゃ見たかったのだが、この人と被ってしまっては仕方ない。大本命のコートニー・ラヴ率いるホール。やや開演が押したために最悪の事態を想定していたが、真っ黒なドレスに白いレースを纏ったゴスな彼女が降臨すると、女子ファンからも黄色い声が飛び交う。最新アルバム『Nobody's Daughter』を中心にヒット曲も織り交ぜ、MCでは「ワカラナイ、チキチキ~」と謎の日本語を連発するなどサービス精神も旺盛。素人同然だった2004年のソロ名義でのフジ・ロックに比べて、歌声も演奏もバッチリだったのではないか。隣では新恋人にして元ラリキン・ラヴのミッコ・ラーキンがスカした仕草でギターをかき慣らしていたけど、ロック・バンドとしての大事な要素=ヴィジュアルに大きく貢献。後半で披露された名曲「Celebrity Skin」は、イントロのリフ1音だけで場内の温度が急上昇したほど。コートニーはたしかに、永遠の「Skinny Little Bitch」でした。

 今一度ソニック・ステージに戻り、メンバーの変わったブラック・レベル・モーター・サイクルクラブを2曲ほど聴いて、お隣のダンス・ステージへ。この日というか、サマソニ2日間で一番のお楽しみ、南アフリカの変態ヒップ・ホップ軍団ことダイ・アントワードは絶対に見逃し厳禁だろう。オリジナル・メンバーのDJハイテックは飛行機恐怖症とのことで不参加だったが、板前さんみたいな髪型のニンジャと、超絶キュートなヨーランディ・ヴィザーのダブルMCが死ぬほど盛り上げてくれた。スマイル.dkの「Butterfly」からサビを拝借した名刺代わりのトラック「Enter The Ninja」、ヨーランディのラップがセクシーな「Zef Side」を筆頭に、クリス・カニンガム的なグロめのVJも相まって"猥雑"かつ"お下劣"な世界観はとにかく最高。全面にグラフィティがプリントされたスウェットとマスクを脱いだかと思えば、ニンジャはトランクス(もちろんピンク・フロイドの『狂気』柄!!)一丁で息子をブランブラン揺らし、ヨーランディはもはや下着同然の姿で男性陣を悩殺。というか、最初は「小学生か?」と思ったぐらい小柄な彼女だけど、ニンジャとの間に子どもがいるとか(結婚はしていない)、1974年生まれのニンジャと幼馴染みということはアラフォー!? などなど、後から知った情報だけでも驚愕すべきことばかり。ヴォコーダーなのか肉声なのか判別できないヴォーカルも唯一無二で魅力的です。はじめは100人ちょっとしかいなくてヒヤヒヤもんだったオーディエンスも「何やらヤバいことが行われている!」と感づいたのか、終盤にはもうビッシリ。見逃したあなた、一生後悔してください。

 またもや隣のソニック・ステージに戻り、シガー・ロスのフロントマンであるヨンシーのライヴ。壮大でドラマチックな映像とシンクロしながら、あの天使のような歌声と磐石のサウンドが、すべてをなぎ倒すように轟音になっていく終盤は鳥肌もの。年末のジャパン・ツアーも楽しみだ。そして、マウンテンのトリであるドリーム・シアターの化物みたいなドラム・セットに圧倒された後、スティーヴィー・ワンダーは捨てて当然ピクシーズで締める。インスト・ナンバー「Cecilia Ann」で幕開けしたセット・リストは、アンコールでの「Here Comes Your Man」に至るまでファン感涙のベストすぎる選曲。終始サングラス着用だったブラック・フランシスの喉も絶好調である。なんだかんだ再始動から6年以上続いているリユニオンだけど、メンバー同士の軋轢はもう修復したんじゃないかと思えるほどアットホームなステージングでした。とはいえ、そろそろ新作を聴かせてほしいもんです(その点、ダイナソーJr.は偉いよなあ)。

 ロラパルーザやロック・イン・ジャパン・フェスティバルと丸被りしてしまったのもあり、動員面ではかなりの苦戦を強いられてた今年のサマソニ。しかしながら、先述の永ちゃんや解散発表後のビート・クルセイダース(しっかり満員札止め)から、ペイヴメント&スマパン、故マイケル・ジャクソンと所縁のあるスティーヴィー、スラッシュ、オリアンティといったビッグ・ネームの出演、ATCQやホールの奇跡の来日などなど、洋邦共に注目すべきトピックが盛り沢山だったのは特筆に値する。ただ、やはり体力的に限界なので、来年はまたフジの2週間後開催でお願いします!

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