ザ・コーラル

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THE CORAL

魔法みたいな瞬間をとらえる
ミステリアスな場所、って感じなんだけどね


しなやかさと力強さが同時に激しく増している。2008年のベスト・アルバム『シングルズ・コレクション』では、スタイルに左右されないザ・コーラルの「曲そのものの素晴らしさ」をあらためて痛感した。オリジナル・アルバムとしては2007年の『ルーツ&エコーズ』以来となる、彼らの新作『バタフライ・ハウス』には、誰もが一聴して耳(と心)をうばわれてしまうような、彼らのそんな魅力が最大限に発揮されている。とても風通しのいい形で。問答無用の気持ちよさではないか。

エコー&ザ・バニーメンやティアドロップ・エクスプローズ、アイシクル・ワークスから、ザ・ラーズをへて今に至るマージーサイド・ミュージックの豊穣さを、00年代から現在にかけて、誰よりも鮮やかに提示してきたのが彼らなのだ。一瞬の輝きを放って「伝説」になるバンドもいる。しかし彼らは、そういった者たちに勝るとも劣らないインパクトを各アルバムで残しながら、一歩ずつ着実に成長してきた。この『バタフライ・ハウス』は、そのあまりにも見事な証左となっている。中心人物ジェームス・スケリーに聞いた。

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今回はまず、片田舎のコテージにこもって曲を書きためたそうですが、その「合宿」はどんな雰囲気でしたか?

ジェームス・スケリー(以下J):そうだねー、あそこでは曲のリハーサルをしただけで実際のレコーディングみたいなことは全然してなかったけど、みんな同じ時間を一緒に過ごせたって感じられて、そこがすごくよかったよ。

レコーディング前に、ライヴでも結構プレイしてからレコーディングに入った、みたいなことも聞いたんですが。

J:そのとおり。デモを作ってから、ライヴでやってみた曲も数曲あった。

実際、そういう合宿からの影響は、どんな形でアルバムに反映されていると思いますか?

J:リハーサルしてたことも経験のひとつではあるけど、一緒に家に住んで同じ映画を見たり、同じ音楽を聴いたりしたってことも、大きな影響になってるんじゃないかな。うまく言えないけど...ああ、同じページの上に一緒に載っている、みたいな気がした。

ビル・ライダー・ジョーンズの脱退という悲しい出来事を乗りこえ、バンドが結束をさらに固めたという印象も受けます。そのあたりは、いかがでしょう?

J:うん、みんな前より結束が強まったんじゃないかな。最初はそうだったんだけど、それがちょっとずつ変わってもいった。でもまたここでまとまった感じ。バンドを去った人がいても、それはそれで、みんなは今ちゃんと同じ方向を向いていると思う。

数ヶ月前にフリー・ダウンロードされたアルバム・タイトル曲「Butterfly House」を聴いて、期待を高めていました。コーラス・ワーク/ハーモニーの美しさがたまらない、と思いました。もともと、ザ・コーラルのそれは魅力的と感じていたのですが、今回とくにそこに磨きがかかった気もします。こんな意見について、どう思いますか?

J:そうだね。ある部分、ギターが空いたスペースを埋めるためにも、ハーモニーを使っていったところはある。

それは意図的にそうしたんですか? それとも、自然とそう発展していった感じ?

J:元々ファーストではハーモニーを多用してたし、それに戻ったって部分はあるかも。

ですよね!

J:アコースティックのギグなんかもよくプレイしていたし、そこではハーモニーをもっと意識してたから、そういう要素をより多く使ったってことかもしれないね。

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"蝶がたくさん飛んでいる家"という、美しくミステリアスなイメージが、このフレーズ(Butterfly House)から広がります。ただ、プレス・リリースには、コンセプトは"ミステリーの死"と書いてあったのですが、そうなんですか?

J:アイディアとしては、いろんなアイディアやインスピレーション...、それに魔法みたいな瞬間をとらえる、とにかくミステリアスな場所、って感じなんだけどね。

「Green Is The Colour」という曲名は、自然賛美ととらえていいのでしょうか? ちなみにピンク・フロイドにも同名曲があるんですけど(『More』に収録された、アコースティックな小品にして超名曲)ご存知でしたか?

J:英語のメタファーなんだよね。嫉妬のことを、green-eyed monster(緑の目の怪物)っていうけど、嫉妬する寂しさと、欲望が孤独感を強めていくっていうようなイメージ(注:ピンク・フロイドの場合、green is the colour of our kindと歌っているが、聴きなおしてみると、たしかに彼らはgreen is the colour of our eyesと歌っているように聞こえる)。ある意味、男の最大の問題は欲望だし、女は嫉妬だと思う。そこが一番弱いんだ(笑)。それで結局、孤独になっていくっていう...。

ピンク・フロイドが影響になったわけではない(笑)?

J:いや、違う(笑)。『スワンプ・シング(Swamp Thing)』っていうマンガがあるんだけど、それが影響になった部分はあるかな。歌詞に自然のメタファーをよく使うようなのはそこから来てる気がする。

長尺のラスト・ナンバー(ボーナス・トラック除く)「North Parade(After The Fair)」、とても感動的です。"祭りのあとも旅...キャラバンは進む"というイメージを、この曲から受けるのは、間違ってないでしょうか?

J:かつて人里離れた海辺の町だった場所...。そこに男の子が訪れ、やがて成長していって、そこが魔法の国みたいなところだったわけじゃないことに気づいて、過去のものとして新しい場所に向けて旅立っていくような...。夢みたいな何かが終わって、そこから進んでいくような感じ。

ある意味、メランコリックなエモーションの曲なんでしょうか?

J:まぁ、例えば昔すごく栄えていたころの写真を見て、今町が荒廃しているのを見るような部分はあるとは思うけどね。

先ほど"ミステリー"に関してお話を伺いました。実際"どこか秘密めいた"雰囲気がこのアルバムにはあふれているのと同時に、"ポップ・ミュージックとしての強度"というか、曲それぞれのキャッチーな魅力も大幅に増している気がします。こんな意見について、どう思いますか?

J:そうだね。俺たちは3分のポップ・ミュージックをプレイしてる。シンフォニーみたいなんだけど、3分間で(笑)。まぁ、必ずしもポップ・ミュージックと呼べないのかもしれないけど、構成的にはポップ・ミュージックをやってるとは思うんだよね。

質問作成者は60年代前半生まれなんですが、子どものころ...つまり60年代後半から70年代前半にかけて、ラジオから流れてくる、とにかくいい曲をたくさん聴いた記憶があるんですが、このアルバムを聴いて、当時のそんなわくわくするような気持ちが蘇ってきたそうです。そんな感想については、いかがでしょう?

J:そうだね。音楽はいろんな時代や場所に人を連れていくものだし、彼が音楽を聴いてその時代に感じた感覚を思い出すこともあると思うよ。それって、音楽ができる最高のことだとも思うし。

このアルバムのサウンドには、それこそ今言ったような時代のソフト・サイケデリック・フォーク・ロックにも通じる風通しのよさを感じます。そんな意味も含めて、コーラル史上最も「オープンな(開かれた)」アルバムという言い方はできると思いますか?

J:うん、そうだね。そう思うよ。すごく開かれていて、音が広くてオープンなアルバムだと思う。ある部分、民話みたいな要素もあるよね。そういうのも取り込もうとしたんだ。

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ジョン・レッキー(注:初期マガジンやストーン・ローゼズのファーストなどを手がけたことで有名)とザ・コーラルの組みあわせ、素晴らしいと感じました。彼を起用しようと思った経緯は?

J:彼にデモを送ったらすごく気に入ってくれてね。すごくはりきってスタジオまで来てくれたよ。

それって、最初にあなたたちが彼を選んでアプローチしたって感じだったんですよね?

J:まぁ、普通はそうだよね(笑)。ただ、デモを送った人は数人いたんだけど、彼が一番いい反応を示してくれたんだ。それでね。

素晴らしい! 彼との作業はいかがでしたか?

J:すごく楽しかったし、本当に自然にできたよ!

音がすごくキラキラしていて、"ミステリアスな感じと、キャッチーな魅力が並立していること"に関して、彼がもたらしてくれたものは小さくない、と言えるでしょうか? 彼のアルバムへの一番大きな功績はなんでしたか?

J:彼は俺たちに"バンド"でいさせてくれたんだ。ライヴでプレイさせてくれたしね。すごく楽しみながらレコーディングできた。すごく自分たちのやってることに、自信を持てるようになったレコーディングだった。

なるほど。

J:曲はほとんど出来上がっていたからね。デモはほとんど完璧に出来上がっていた。それをいかに魔法みたいな生っぽさを残しながら、レコードにするかっていうのが課題だったんだ。

とにかく、このアルバム、見事な最高傑作! と言えるのではないんでしょうか? 旅はまだまだつづくにしても、ついにここへ至った、みたいな...。あなたは、どう思いますか?

J:そうだね。ファーストを出して、それからずっと進みながらここまで来た。またセカンドに戻ってセカンドみたいな曲をやりたい、とか思ってしまうこともなくね(笑)。今はこういう音楽をやりたいと思ってるし、そうやって進んでいけたらと思う。

今日はありがとうございました。今後の予定を教えてください。

J:ヨーロッパとUKのツアーがつづくけど、来年1月ぐらいには日本に行けたらと思うよ。楽しみに待っててほしいね!


2010年8月
質問作成、文/伊藤英嗣
取材、翻訳/中谷ななみ

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