ダーウィン・ディーズ

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DARWIN DEEZ

荒さがあるからこそリアルな質感が生まれる

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「NME期待の新人」に選ばれ、NME Rader Tourへの参加が決定し、サマーソニック2010にも出演したダーウィン・ディーズ。



彼は超が付くほどの気分屋ポップ・シンガーだった。



跳ねるようなポップ・ソング・アルバム『ダーウィン・ディーズ』について、そして彼の素顔に迫った。



というより素顔そのままであった。
お寿司の味はどうですか?

ダーウィン・ディーズ(以下D):(ビントロをつまみながら)中々いけるよ。

えびも美味しいですよ。

D:うん。チャレンジしてみる。

僕はサマーソニックに行けなくて、あなたのライヴを観れなかったんですよ...。ライヴの感想は言えなくて申し訳ないのですが、サマーソニックはいかがでしたか?

D:良かったよ。日本のオーディエンスは良い意味でとてもクールだと思う。音楽をちゃんと聴いてくれて、曲が終わると拍手してくれて、歓声を送ってくれる。で、また静かに音楽を聴いてくれる。一所懸命、音楽を聴く姿勢は素晴らしいと思う。僕だけに限らずステージに立っているアーティストを尊重する姿勢も素晴らしいし、そのオーディエンスの姿に少し泣きそうになったんだ。思い入れや愛情を感じたよ。

行ってない僕は損をしてますね(笑)。

D:どうかな。はは。あれだけたくさんの出演者を全部観れるわけじゃないからね。でも僕はまた日本に戻ってきたいから、そのときは僕のライヴを観てほしい。普通のロック・ショウと違って踊りも加えるんだ、僕自身が楽しいから。自分をどう表現しようかってことも考えてて、成功する上で何がカギだろうかって考えた時に人と違うことをすることなんじゃないかと思ったんだよ。そう信じ込んできたからこういうチリチリした髪型にしているし、ライヴも違ったことをやろうと思ってる。でもどこの国のリスナーも、みんな同じような音楽好きだよね。

保守的、ということでしょうか。

D:まあそうだね。耳が慣らされちゃってるっていうか。でも、おかしなことやってても成功しているアーティストもいるから、自分のスタイルは間違ってないと思ってるよ。

photo by Hagino Tiger

Darwin_live_1.jpgアルバムを聴かせて頂きましたが、シンプルなんだけど、凝っているところもあって面白く聴こえました。

D:アルバムはほんとうに練りに練って、考えに考えて作ったんだ。ただ、偶発的に生まれることが多くて、何かと何か、別々のことをやっていて、たまたまそれが上手く合致したりすることもある。それが今作で歌詞の面でもサウンドの面でもけっこうあったね。

スペースとメロディをとても大切にされてますよね。ギターをリズム楽器として扱っていて、抑えるところでは抑えて、スペースを生みだして、歌のメロディが活きるようにしていると感じました。メロディのかぶりを極力なくしていると感じます。それが興味深かったです。この感想についてどう思われますか?

D:正解! 正解! 正解! いろいろなジャーナリストと接してきたけど多くの人たちは音楽を聴き過ぎているというか、たくさん聴かなきゃいけないってこともあるんだろうけど、1回聴いて、ハイ終わり、というジャーナリストが多い中、丁寧にそこまで聴いてくれたことは嬉しいし、君が挙げてくれたところがアルバムの一番良い部分だと僕は思ってる。もしかしたら、あまり音楽を聴いてない人たちにとっては理解するのが難しいところがあるかもしれないけど、何年も音楽を凄く丁寧に聴いてきた人には分かってもらえるアルバムだと思う。まさにそういうふうに言ってもらえて嬉しいよ。僕も長く音楽を聴きこんできたし、僕の哲学としては、よりシンプルに、とにかくシンプルにした方がいい。スペースを作ることで多くのことを表現できると思ってる。だけど、いまより多くの人にアピールできるものを目指していて、それこそ8歳くらいの子供から、音楽通の人たちまで楽しめるような音楽を作ること、それが僕の夢なんだ。それはちょっと難しいことかなあ、と思うけどね。ポップで聴きやすいという意味では今作はそれをクリアしていると思う。あとはどれだけ面白いサウンドをクリエイトできるかだね。アルバムの難点を言えば音が荒いところかな。だから中々受け入れてもらえないこともあったね。

でも荒さが良さという聴き方もできると思いますよ。

D:うん。荒さがあるからこそリアルな質感が生まれるとは思う。ただ、その上で音の質感を高めて、よりリアルにするのがこれからの課題だね。

ギター一本の弾き語りのアルバムも聴いてみたいなという気持ちがあります。

D:そういうアルバムを作るかどうか分からないな...。ただ、あまりにも凝り過ぎた音楽は作らないと思うよ。シンプルなことは重要だからね。

ストロークスと比べられることがあるんですが、それについてどう思われますか?

D:彼らの、特にファースト・アルバムが凄いなと思うのは、どの曲を聴いても質が高いところだと思うし、僕も同じように質の高いものを目指したんだ。そして彼らが出てきたことで、ギター・ロックというものがカッコいいものだと再認識して、その意味で触発されたところはあるね。

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photo by Hagino Tiger

ひとりの音楽ファンとして純粋に思っていることなんですが、あなたの音楽を聴くとポジティヴな気持ちになるんです。

D:それはとても嬉しいよ。自分の両親がバーバー教の「とにかく心配するな、ハッピーでいろ」というのを凄く信じていて、両親に常に明るくいることが大切だということを教わったんだ。それをひとつの価値観として僕は大事にしている。音楽に関しては、ハッピーでいることが大切だっていうことを伝えたくて明るい音楽になったわけじゃなくて、実は18歳の頃に鬱状態になったんだ。酷く落ち込んだ時期だったね。ほんとうにいろいろなことがあった。鬱になっていた理由は音楽を作っていなかったから、というのもあるよ。その時期に悲しい音楽ばかり聴いていたんだ。悲しい音楽ばかり聴いていたら自分の行き場を失くしてしまった。だから一切、悲しい音楽を聴くのをやめて、ハッピーな音楽だけを聴いて自分の気持ちを癒していたんだよ。で、5年間くらい悲しい音楽を一切聴かなかった結果が、アルバムに明るい気分を含ませたんじゃないかな。

ライヴでダンスする、ということも無意識のうちにオーディエンスを明るくさせたいという、深層心理的なものかなと思ったのですが。

D:そういうところもあるかもしれない。変わったことをしたいという気持ちと、やっぱり楽しいものにしたいと思っているからね。

ミュージック・ビデオを拝見しましたが、とてもチャーミングでいてシュールなところもありますよね。

D:自分らしいものができたから凄く満足してる。僕はクリエイティヴな人で、楽しい人で、でも悲しいところもある人でっていうね、そういう自分がそのままが出ちゃってると思う(笑)。ミュージック・ビデオは表に出すイメージと違うからね。

お会いする前は破天荒な人だというイメージがあったんですが、あえて比較すれば知的な雰囲気を感じます。

D:破天荒だし知的だよ(笑)。気分にむらがあるんだ(笑)。感情がかなりフラットな人もいるよね。でも僕はその時その時で感情が全然違う。それはもうどうすることもできない(笑)。すぐ分かるくらい顔や態度に出ちゃうんだ。

その感情のむらを音楽に反映したものを聴いてみたいと思いました。

D:たぶん、そういう自分の性格を分かっているからこそ、ポップ・ソングを作る上で目指すべき頂点は、感情を聴き手に与えることに特化させるっていうことだと思うんだ。いろいろなやり方で、聴いた人が喜んだり、悲しんだり、怒ったりしてもいいから、何か人を動かすものがポップ・ミュージックの頂点だと思う。

では音楽を作る側ではなく聴く側として、以前は悲しい音楽を聴いていたとおっしゃっていましたが、現在はどのような音楽を聴いていますか。

D:少しズルをしているかな(笑)。ちょっとだけ悲しい音楽を聴いたり、ちょっとだけ楽しい音楽を聴いたり。ばらばら。気を付けなきゃいけないのは、何か特定の感情を強く与える音楽を聴くと麻薬のようにはまっちゃうからね、そういう音楽は避けてるかな。単に悲しいだけの歌を作るのは簡単なんだ。でも、どうだろうね。僕も悲しい歌を作るかもしれない。気分屋だから(笑)。今回のアルバムはテンポが速い曲が多いと思うんだ。それはゆったりした感じの音楽がつまらないと思っていたからなんだけど、実は最近ゆったりした音楽が好きだったりする(笑)。リズムの間隔が広いヒップホップとかね。君はヒップホップは聴くの?

聴きますが、有名なアーティストしか分からないんですよ。パブリック・エネミーとかマッドリブのヒップホップ・アルバムとか。

D:それは勿体ないな。いまラップのミックス・テープを作ってるんだ。ぜひ聴かせたいね。

ラップがお好きなのは意外でした。楽しみにしています。まだ早いですがオリジナルのセカンド・アルバムも期待しています。

D:んー、次のアルバムは新しいアイデアが出てきたら重い腰を上げて作ろうかなと思ってる。いまはアイデアがゼロの状態だからね。どうなるか分からないよ。気分屋だから(笑)。


2010年8月
取材・文/田中喬史
通訳/伴野由里子

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