バンド・オブ・ホーセズ

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BAND OF HORSES

日常生活でどんなに辛いことがあっても
前を向いて進んでいく、っていう


バンド・オブ・ホーセズが奏でるメロディはまるで星が瞬く宇宙のような包容力を持ち、私たちを希望の光が差す場所へと連れて行ってくれる。あのエディ・ヴェダーも絶賛する実力派バンドだが、今年リリースされた新作もすこぶる評判が良い。もはや彼らはある限られたカテゴリの人たちに熱心に聴かれるバンドではない。そのサウンドはノスタルジックでつい涙腺が緩んでしまうが、ただの逃避行に終わってしまわないのが彼らの魅力。前へ進むことはこんなにも切なく、美しいことなのだ。やたらと気の優しそうなドラマーのクレイトン・バーレット(外見は刺青だらけでゴツい)とギター&コーラスのタイラー・ラムゼイにインタビューした。

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私は前作であなたたちのことを初めて知って、それからすぐにサマーソニックのライヴを観て大好きになりました。前作では「Is There A Ghost?」と「Islands On The Coast」がつねに私のフェイバリットだったのですが、今作は前作をはるかに上回るアンセムの連発で、メディアやリスナーが大絶賛するのも当然だと思いました。音楽シーンにおいて自分たちの存在感がどんどん大きくなっているのは実感しますか?

クレイトン・バーレット(以下C):実際にライヴをする会場はどんどん大きくなっているから、そこで実感しているね。でも正直僕たちはアルバムの売り上げのことはあまり気にしていなくて、ライヴにどれだけのオーディエンスが駆けつけてくれるか、そっちの方を大切に思ってる。

道を歩いていると「あ、バンド・オブ・ホーセズのメンバーだ!」とか言われたりしません? 

タイラー・ラムゼイ(以下T):そうだね、テレビのショーなんかに出演したりすると声をかけられることはあるけど...。ぜんぜんクレイジーじゃないよ。時々さ。

親戚が増えたり?

C:たしかにね! 「君のおじさんだよ、覚えてるかい?」なんてね(笑)。

今作は総合チャートで7位に入りましたが、今年はナショナルも新作をリリースして各国でチャートのトップ10に入りました。バンド・オブ・ホーセズは次のR.E.M.だと言われていますが、コールドプレイと比較されることもあります。私はコールドプレイのファンなのでその言い方には大賛成なのですが、シーンの断片化が進むなかでバンド・オブ・ホーセズが次のメインストリームを担うと思いますか?

T:コールドプレイ!? 何てこった(笑)。

C:うーん、難しい質問だな。まあ、これで飯を食ってるわけだからメインストリームになること自体は全然悪いことではないんだけどね。ただ小さなヴェニューでプレイできなくなることは残念なことかもしれない。実はこの前までパール・ジャムと一緒にツアーをまわってたんだけど、何だかもう...ぜんぜん違う世界なんだよ。彼らは別格、っていう感じでさ。でももし僕らがそういう規模のバンドに今後なるとしたら、それはとても大きな変化であることは間違いないね。とにかく今は自分たちのしていることに対してハッピーだし、それに付随してくる何やかんやはボーナスみたいなもんさ。日本に来ることができただけでも凄いことだよ。

たぶん土臭いイメージを持っている人も多いと思うのですが、実際のサウンドは「悲哀に満ちた優しさ」に満ち溢れていて、私はバンド・オブ・ホーセズの曲を聴いていると分厚い毛布に身を包まれているような感じがします。リスナーにはどんな感情をシェアして欲しいですか? あるいはどんな風景を見てほしいですか?

C:ナイスな感想だね。例えば僕たちのライヴではクリストファー・ウィルソン(第6のメンバーとも言われ、これまでのアルバム・ジャケットはすべて彼が手掛けている)が撮った写真が後ろのモニターに映し出されるんだけど、そういう風景の場所にリスナーを連れて行くようなフィーリングはサウンドのなかにはあると思う。ただ基本的にはそれぞれのリスナーがパーソナルなものごとと結び付けて聴くのがいいんじゃないかな。

前の質問で「悲哀」というワードを出しましたが、決してペシミスティックな印象は受けません。むしろかけがえの無い小さな幸せを大事にするようなフィーリングが感じ取れます。あなた自身は、いま決して順風満帆とは言えない世の中に対して、悲観的になったり、それを曲にしてしまいたくなったりするようなことはありませんか?

T:それは確かにある。でも僕たち自身はまったくペシミスティックではないよ。基本的に僕たちの音楽は希望を象徴したものだと思う。日常生活でどんなに辛いことがあっても前を向いて進んでいく、っていう。

このアルバムが何かの映画のサウンドトラックになるとすれば、それはどういうストーリーのものになると思いますか?

C:うん、君の言わんとすることはよく分かるよ。これは何となくひとつの映画のようなアルバムだからね。

T:おれは自分で映画作んないから分かんないな。

C:(笑)まあ、そうだな、バイクに美しい女性に...トーキング・ドッグは必要だね(トーキング・ドッグって何!?)。とりあえずラストはハッピー・エンディングだ。

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photo by Hagino Tiger

私はいまのところ「On My Way Back Home」が大のお気に入りです。ビデオも良くて。「Dilly」のような軽やかなポップ・ソングもとても気持ちが良いですね。偉そうですが、こういう曲が中盤で出てくると「そうだよ、やっぱりこのバンドはわかってる!」と思ってしまいます。アルバムを聴きなおしてみて、改めて「良い曲だな」と思う曲はありましたか?

T:自分たちはあまりにもアルバムに関わりすぎているから、曲順に関しては外部の意見を積極的に取り入れることにしてるよ。

C:僕はドラマーで曲作りにはそんなに参加していないから、比較的アルバムを客観的に聴くことができたかな。もちろん出来には満足してる。

T:日本へ来る飛行機で聴くものが限られてて、そのリストのなかに自分たちのアルバムがあって、「おっ」とは思ったけど、結局『トワイライト』のサントラを聴いちゃったな。あれはグレートだった(笑)

実は今日、第6のメンバーであるクリストファー・ウィルソンが手掛けたアルバム・ジャケットの世界観を踏襲した「プラネタリウム・ライヴ」をおこないますよね。実際、ロケーションでライヴの雰囲気はガラリと変わりますし、とても素敵なイベントだと思います。

C:そうだね、アコースティックで7曲くらい。君は来るの?

いや、チケットの抽選に外れちゃって...。

C:じゃあ、招待するよ! どうせそんな長くやらないからたぶん入れるだろう。

ほんとうに!? ありがとう(なんだか申し訳ない...)! さて、サマーソニックは2回目ですが、日本のフェスは海外のフェスと比べてどんな印象がありますか? 

T:違いはたくさんあるよ。とてもオーガナイズされているし、食事も素晴らしいし、あと、オーディエンスがみんな静かだよね。アメリカだとライヴ中ずっと叫び続けてる奴もいるけど(笑)、日本では曲間にステージ上でメンバーと普通に会話できるし。

C:バンドに対する扱いもこっちはすごく丁寧だよ。ちゃんと世話してくれるチームがいるんだ。

同じくサマーソニックに出演するバンドのなかで誰かチェックしておきたいアーティストはいますか?

T:よく知らないんだけど...。

ヨンシーとかペイヴメントとか...。

C:ヨンシーか! シガー・ロスはすごく美しいライヴをするよね。あと僕たちはみんなペイヴメントの大ファンなんだ。前回のサマーソニックはあまり他のバンドを観ることができなかったから、今回はちょっと楽しみたいね。

いよいよ今週末サマーソニックのステージに立ちます。日本のファンは熱烈にバンドを迎えてくれると思いますよ。単独での来日も実現することを祈っています。

C:そうだね、いますぐツアーの交渉をしなきゃ(笑)!

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 このあと王子でおこなわれたプラネタリウム・ライヴ(ライヴで行ったのは初めてだった!)は、それはもう感動しまくった。市民会館みたいなところでバンド・オブ・ホーセズのライヴ、というのはなかなか違和感があったけれど、こういう近い距離感がしっくりくるバンドだな、とも思った。平和だ。もうこれでさらにバンド・オブ・ホーセズの大ファンになってしまった。


2010年8月
取材、文/長畑宏明
通訳/中谷ななみ

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