ローカル・ネイティヴス

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LOCAL NATIVES

フリート・フォクシーズが出てくる前から
レコードに収められている曲は書きあげていたよ


野性的で熱のこもったサウンドと美しく息の合ったヴォーカル・ハーモニー、圧巻のステージングでロサンゼルスから頭角を現し、主要メディアから多くの音楽ファンまで絶賛を集め、早くも独特の地位を築いた新鋭バンド、ローカル・ネイティヴス(Local Natives)。インタヴューでは昨今のUSインディー勢に通じる知的さ/真面目さを印象づけられた一方、ファニーで初々しい一面もときおり垣間見せてくれた。大興奮のパフォーマンスが繰り広げられたフジロックの前日、キーボード/パーカッションを担当しステージでは中央を陣取る最年少のケルシー、インタヴュー中にずっと自分の手に落書きをしていたお茶目なベースのアンディ、愛くるしい童顔とパワフルな叩きっぷりのギャップが痛快なドラムのマットの三人に話を聞いた。

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前から気になっていたんですけど、皆さんイケメンですよね!

(三人、大笑いしながら)アリガトウ!!

今回が初来日ですよね。日本に来てみてどうですか。

アンディ・ハム(以下A):今のところ最高だよ。

バンド名からして素敵だし、シンパシーを覚えました。「Local Natives」というとても冴えたバンド名はどうやって生まれたのでしょう?

マット・フレイザー(以下M):君が共感したって言ってくれること、それが正にこの名前にした理由なんだと思う。僕らのバンドが持っているコミュニティ感覚とか、すごくオープンでファミリー的な感覚とか、バンドの運営の仕方、物事の運び方、そういうところにこの名前のもつ精神が息づいていると思う。それで僕たちもこういう名前をつけたし、聞いてそう思ってくれる人がいるのは嬉しいな。

昔は違うバンド名だったんですよね

(三人頷く)

大まかに結成に至ったのは2005年くらいと見なしてよかったのでしょうか?

M:そうだね。ケルシーとライアンとテイラー、この三人は四年半くらい前から一緒にやっていたけど、当時はみんな学生だったり仕事をやっていたりで、音楽はあくまでサイド、趣味的な部分でやってきた。自分探しとかバンドのアイデンティティみたいなものも兼ねて続けていたけど、二年ぐらい前にようやくバンドとして本腰を入れていくことになったとき「ちょっと状況を変えてみようか」ということで、名前も変えて出直そうとなって今に至るという感じかな。

色々と苦労もなさっていると伺ったのですが、今度のアルバム(『Gorilla Manor』)で世界的にも一躍ブレイクしましたよね。当時と今で環境の違いも相当なのではないですか?

ケイシー(K):たしかに今振り返ってみれば...ってそんなに昔の話でもないけど、最初はただ楽しければいいや、あとはぜんぶオマケと思っていた僕たちが本腰を入れて音楽をやろうということになると、やっぱり大変なこともついてくる。でも、そこで楽しめる要素がでてくると「これはご褒美だ」って思えるようになったことが今と昔の大きな違いかな。二年前、本気でバンドをやり始めたときに一番優先的にやりたいことは何かなって考えたとき...音楽を作ることだなって。今はバンドも軌道に乗ってそのことがずっと続けられそうになってきているし、それが一番嬉しい。でも、今そう思えるようになったのも最初にいろんな思いをしたからなんだろうな。

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photo by Toru Yamamoto

あなたたちの音楽を聴いて、ダイナミックな演奏と美しく重なる歌声のハーモニーにノックアウトされました。こういった音楽性はどのように生まれたのでしょう?

A:とりあえず、昔から今のスタイルじゃなかったことはたしかだね(笑)ライアンとテイラー、この二人は本当に昔からいっしょにやっていた仲間で、そこにケルシーが入って、数年経ってマットが入って僕が入って...という流れでこのバンドは出来あがった。そのあいだには当然、人間としてのメンタル的な部分もソングライティングの技術も向上してきていると思うし、当初ライアンとテイラーが二人でやっていたことと比べれば、今やっている音楽は劇的に違うと思う。二年前にバンド名も含めて全部一新しようとしたときも、その≪違い≫を意識したからだと思う。そこで一旦余計な荷物を降ろして出直そうっていう。今の僕らは全員がコントリビュートする形で音楽を作ってきてるけど、それ以前はとにかく何でもアリ。曲としてすら成り立っていないようなかんじ。いわゆる試行錯誤の時期っていうのかな。

そういった音楽性について、グリズリー・ベアやフリート・フォクシーズといったバンドに多く比較されていますよね。とっくに聞き飽きている質問かもしれないですけど、それらの比較についてはどう思いますか。

(三人、「聞き飽きている」という箇所に爆笑)

K:もちろんそれぞれ素晴らしいバンドだし、比較してもらえて鼻の高い思いなんだけど、まあ本当に面白いものだよね。みんなが僕たちをどういう人たちと比較し、どういうふうにみているのかって。その意見に対して不平不満をもったり腹を立てたりしても何の意味もないよ。

M:出始めのバンドは何かと比較されざるをえないよね。今まで全然聞いたことのないバンドがポコっと出てきて、どういうふうに説明しようかとなったとき、そういう比較は必ずついて回るものだよ。

ちなみに、その二つのバンドはお好きですか?

(三人、声をそろえてオーバーな身振りを交えながら)もちろん、もちろん!

K:比較されるのはさっき言ったとおり全然OKなんだけど、あたかも僕たちが彼らの音楽を聴いて影響されてこういう音楽性になったと思われるのはイヤだな。今みたいなハーモニーを強調するスタイルはずっと前からやっていたからさ。フリート・フォクシーズが出てくる前から、レコードに収められている曲は書きあげていたよ。むしろ彼らより先にこういう音楽をやっていると思う。

M:「比較してくれてもOK! マネしているわけじゃないし!」と強く言える自分たちであることが一番大事だよね。

そういったあなたたちの音楽性のもつオリジナリティのなかでも、僕はマットのドラムに特に興奮させられました。凄いパワフルですよね。すばらしい!

M:アリガトウ!

図太いリズムが日本人も古来からもつ祝祭的というか神秘性ともリンクしていると思うんです。そういえば、「Airplanes」ではお箸が歌詞に出てきますよね。

K:うんうん。あれば僕のお爺ちゃんについての曲で...といっても、僕はお爺ちゃんとは早くして別れてしまったからあまり記憶がなくて、父親から話を聞いたんだけど、そのお爺ちゃんというのは日本で何年か英語を教えていたそうなんだ。そのとき買ってきてくれた日本のお箸を僕は今でも持っていて、それでお爺ちゃんのことについて曲を書こうとなったとき、お箸(Chopstick)という単語を歌詞に入れてみたんだ。

日本のバンドでお気に入りっていますか? 僕はあなたたちの音楽性からボアダムズ辺りをちょっと連想しましたが。

K:あー、ボアダムズ。詳しくはないけど名前は知ってるかな。ブロンド・レッドヘッドは日本人の女の子が歌ってるよね。でも、あまり日本のバンドのことはよく知らないな。

M:メルトバナナなら知ってるよ!(全員が爆笑)僕らの音楽とは結構かけ離れてるよね...。

K:友達のザ・アウトライン(The Outline)ってバンドが前に日本のバンドと一緒にライブしたのは知ってるんだけど、名前が思い出せないな...(*あとで調べてみたところ、noodlesのことでした)

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photo by Toru Yamamoto

ところで話は大きく変わりますが、みなさんが初めて買ったCDやレコードってなんですか?

A:ホワイトゾンビの『La Sexorcisto』だね(笑)12歳くらいのときじゃなかったかな。(ジャケットに)スカルがいっぱいついてて、デビルっぽいし。色合いもサイケでキラキラしていてそれに惹かれちゃったんだ。買っただけでいっぱしのワルになった気分だったよ!

M:僕とケイティーは一緒なんだ。9歳のときに買ったブッシュのデビュー・アルバム(『Sixteen Stone』)。なんで持ってるのか今となっては謎だけど(笑)

K:そうそう。僕もカセットで持ってるんだよね。

ブッシュの話で思い出しましたが、先にイギリスでブレイクしましたよね。

K:そうだね。僕らの場合はブッシュとは逆にでイギリスで先にウケたけど、今はアメリカでも凄く盛り上がって、とてもいい感じのバランスになっているんだ。

イギリスの音楽からの影響も色濃さそうですよね。

K:ライアンはもともとブリット・ポップが一番大好きなんだ。ブラーとか聴いてたタイプ。

M:それから、僕たち全員レディオヘッドの大ファンだよ。

A:好きなのを挙げたらキリがないね。

K:ゾンビーズの『Odyssey & Oracle』やビートルズの影響は当然ある。

アルバムではトーキング・ヘッズの「Warning Sign」をカヴァーされてますよね。僕もトーキング・ヘッズが大好きで、あのカヴァーをライブで演奏する光景をYouTubeでたまたま見つけてあなた達を知ったんです。

M:そうだったんだ。それは嬉しいね。

K:実は僕たち、デヴィッド・バーンと5月にNYのショウで会ったんだ。凄くエキサイティングだったよ! 本当にいい人だったな。あのカヴァーはとにかくライブでやってみたかったから、自分たちなりにアレンジして演奏したら観客の反応もとてもよくて。それでアルバムにも収録しようってことになったんだ。で、バーンのパブリシスト宛に「僕たちは取るに足らないバンドですが、あなたの曲をやっているんです」みたいな断りの手紙を送ったら、一年くらいして彼が僕たちのショウを観に来てくれたんだ。本当にナイス・ガイだったよ!

それもあって、僕はあなたたちの音楽を聴いたとき、(「Warning Sign」も収録されているセカンド・アルバム)『More Songs About Building And Food』を連想しました。トライバルな音楽性の一方で、歌詞についてはとても現代的なものを感じさせられますが、何か目指しているテーマみたいなものはあるのでしょうか。

K:その喩えは嬉しいね。でもたぶん、そういったテーマみたいなものを設定することは将来のアルバムに向けての課題になると思う。今回のアルバムについては数年前からアルバムを制作した一年ちょっと前までのあいだに作られた曲が収録されていて、曲単位で、そのときどきで取り組んで書かれたものばかりだから、一貫したものというのは何も見えていないし、歌詞の内容についてまでは正直、そんなに詰めてはいないよね。次のアルバムに向けて六週間とか八週間とかのあいだに20曲くらい作って...ていう作業になってくれば、歌詞を通じて言いたいことがテーマとして見えてくるかもしれないし、一貫性みたいなものも出てくるかもしれない。

「Cubism Dream」の歌詞はスカイプでのチャットや通話についてを題材にしていますよね。

A:スカイプの宣伝ソングだよ(笑)

K:あの曲では遠距離恋愛、それも現代となるとネットも含めていろんなツールがあるし、そういうことを題材にして歌っている。別にスカイプに限ったものというわけでもないけどね。

そういった話も含めて、インターネットについてはどう思いますか?

K:僕らの世代というのは、特に音楽に関しては「ネットのない時代」というのを知らないわけだよね。間違いなく自分たちの利益になるような形で使えていると思う。レコードの売上にどう響くかとかいった話では、たぶん80年代や90年代を経験しているバンドと僕らみたいな若いバンドとは考え方がまるっきし違うかもしれないけど。僕らは単純に音楽を発表するための手段だと思っているから、誰かがタダで音源をダウンロードしたりしても、そのことでイチイチ落ち込んだりしないよ。そういうことをする人がいたとしても、それでも「音楽を持っていってくれたんだ」ということをむしろ、重視する世代なのかもしれない。
(*実際、彼らは自身のサイト上でアルバムを全曲試聴できるようにしてある)

なるほど。では、最後に日本のファンと読者に向けて一言お願いします。

K:今、僕たちのオフィシャル・サイトに「Stems」っていうページがあって、4曲フリーで音源があがっているんだ。それをダウンロード(*要メールアドレス入力)してもらって、リミックスして僕らのほうへ送り返してもらって...ていうのをイギリスとアメリカでここ二カ月くらい募集しているんだけど、日本からもぜひ投稿してほしいな。よろしく!


2010年7月
取材、文/小熊俊哉
通訳/染谷和美

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