ヴァーサス『オン・ザ・ワンズ・アンド・スリーズ』(Merge / &)

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versus.jpg 一昨年の奇跡の再結成・来日に感涙した方も多いであろう、ヴァーサスの実に約10年振りとなるニュー・アルバムがここに届けられた。 

 最初に、ヴァーサスについて簡単に説明しておこう。ヴァーサスはリチャード・バルユットを中心に1990年に結成されたバンドで、ティーンビート、キャロライン、マージといったレーベルから5枚のアルバムと多くのシングルをリリースし、90年代のUSインディー・ファンの間で高い人気を博した。2000年に大傑作『Hurrah』をリリースした後にバンドは解散。メンバーはそれぞれ個々の活動を始める。ちなみにヴァーサスに在籍していたリチャードの弟のジェイムス・バルユットは自身のユニット、プラス/マイナスで精力的に活動、00年代を代表するUSインディー・バンドの一つとして高い評価を得ることになる。 

 10年振りとなる本作『オン・ザ・ワンズ・アンド・スリーズ』でも、ヴァーサス・サウンドの根幹となる部分はほぼ変わっていない。絶妙な男女ヴォーカルの絡みに、どこか不穏な雰囲気を醸すコード進行、そして無二のグッド・メロディーの連続。静かに始まり徐々に盛り上がり豪快にバーストする「Invincible Hero」で幕を開け、「Afterglow」EP辺りに近い、暖かい雰囲気を持つ「Gone To Earth」など、ヴァーサスにしか書けない楽曲が並んでいる。往年のファンには懐かしく、若いファンには新鮮に響く、そんな作品になっているのではないだろうか。 

 2000年代に入って10年。多くのバンドが現れ、ジャンルは細分化され、いくつかのムーヴメントが沸き起こっては淘汰されていった。シーンは大きく様変わりしたように見えて、そんなに変わっていないようにも思える。良いものはずっと変わらずに、私たちの耳と心を捉えて離さないだろう。

(山本徹)

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