MAGIC KIDS『Memphis』(True Panther Sounds / Matador)

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magic_kids.jpg 今年のUSでは「夏」ムードのアクトがひしめいている。その多くは、いわばビーチ・ボーイの子供たち。特に、ザ・ドラムスやベスト・コーストなど、シーンを代表するバンドはシンプルなサウンドと甘いメロディでノスタルジアを演出しているものが多い。

 このテネシー州メンフィスの5人組、マジック・キッズもきっと同じムーヴメントにくくられるのだろう。彼らの曲を聴いて、まっさきに思い浮かぶのは間違いなくビーチ・ボーイズのはずだ。コンパクトながらスウィートなメロディとキャッチーなコーラスワークが曲の中心になっているのだから。

 だが、彼らの手法は異なる。ゴージャスで躍動感があるのだ。このデビュー・アルバム『Memphis』は、もし『Pet Sounds』『Smile』(当時は完成しなかったけど)のあとにブライアン・ウィルソンが作品を作っていたとしたらこんなじゃないだろうか、と感じさせる作品だ。つまり、実験性とポップネスが絶妙のバランスで同居しているということ。スフィアン・スティーヴンスやスコット・ウォーカーを思わせるオーケストラや、フレイミング・リップスのサイケデリアなど、多彩な要素をふんだんに盛り込んでいる。リヴァーブがかったドラムが刻むビートはオモチャのようでイノセンスを感じるし、あまたの楽器のレイヤーを分厚く重ねたサウンドには角がない。いわば、オモチャ箱をひっくり返したような楽しさがある。

 例えば、「Hey Boy」でのフィル・スペクター風の桃源郷の2分間に、「Superball」のバロック・ポップぶり、「Good To Be」での初期エルヴィス・コステロに通じる軽やかにドライヴするリズムなど、一貫してレトロな雰囲気が漂う。だが、ただのコピーから更に一歩先に進んだオリジナリティがある。だから、肩肘張らずにみずみずしい恋愛を描いたリリックが活き活きと伝わってきて、何度聴き返しても新鮮に輝きだす、そんなエヴァーグリーンな魅力をもった作品だ。たった28分ながら、あまりに美しく若々しい、メンフィス流の「夏」がここにある。

(角田仁志)


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