ヘラジカ「Herajika Test 01」CDR(Babyboom)

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herajika.jpg 「ヘッドホンをすれば現実は夢になる」。そういうことなのだろう。ロマンチストだろうとなんと言われようとかまわない。音楽は時として魔法に成りうる。なんて言ったところで陳腐な言いとして受け止められるのがオチだけれどもやっぱりあるのだ。綺麗事だと捉えられそうな言葉を、音によって説得力を持たせ、表現してしまう音楽が。東京を拠点に活動し、インディーズ・シーンで話題になっている男2人女3人の5人組のヘラジカ(herajika)。彼らの音楽を聴くと確信を持ってそう思える。本作「Herajika Test 01」は、3曲入りのデビュー盤。ディスクユニオンの通販では発売日に完売した。

 エレクトリック・ギターやアコースティック・ギター、ドラムに加え、トイ・ピアノやピアノ、メロディオンなど様々な楽器を扱う箱庭的音楽性はトクマルシューゴと比較される。けれどもトクマルシューゴよりも良い意味でわずかに土くさく、洗練されていないがゆえの素朴さが、ちいさいスタジオで、あるいは部屋で演奏されているような身近な雰囲気を醸し出し、同じ目線でやさしく耳に入ってくる。あえてジャンルで言えばフォークということになるかもしれない。
 
 アコースティックを基調とした本作は大袈裟なところはなく、お高くとまらず背伸びもせず、コロコロと鳴る可愛らしいトイ・ピアノの音色も手伝って聴き手を童心に帰してしまう。いわゆるおもちゃ箱をひっくり返したような音楽だけれど、ひっくり返したというよりは、箱に詰まったおもちゃを一つひとつ丁寧に取り出し、見たこともないおもちゃに驚かされるような音が鳴る。また、美しい音を寄せ集め、音楽を創出するのではなく、いくつもの何気ない音と音をハーモニーによって茶目っ気たっぷりな音にしてしまうところがこのバンドの真骨頂なのだと感じる。例えばノイジーなエレクトリック・ギターが入る場面であっても、そのギターはフェミニンな歌声によって中和され、攻撃的なところも耳障りなところもなく、さらりとした質感に変わり必要最小限に鳴っている。さほど工夫していないコーラスも演奏と一体になればとてもキュートな色を含み、違和感が全くない。どんな音もぴたっぴたと、はまっていて、職人的気質すら窺がえるのだ。

 ヴォーカルもメロディの中核として存在感が広く、聴き手に安堵の心地を与え、その心地が聴いていくうちに染み込むように広がっていく。そうして見えるヘラジカの音楽を通した景色。それは些細に彩られた日常の楽しさ。視点を変えれば目に映る風景は変わるとはよく言われる。それは音楽を聴けば感情が変わるからだ。ヘラジカはあらゆる音が持つ可能性を可愛らしさとして創出する。それはたぶん、ヘラジカのメンバーに見えている風景はとても素敵でカラフルで、どんな種類の音であろうと音を認めているからだと思える。いわば演奏で、たとえ荒削りな音であろうとなんであろうと、音というものの全てを認め、音を取り込み洒落た感じにしてしまう。要はどんな音も肯定する音楽をやっている。そして遊び心に溢れる音が、聴き手をも肯定する。その循環が感情をプラスの方向へ向けてくれる。だからこの音楽を僕は信じる。そして聴いてほしいと強く思う。

 何かの映画で「音は心の中で音楽になる」という言葉があった。「ヘッドホンをすれば現実は夢になる」という言葉もあった。そんなふうに、音楽を聴く行為とは、音楽から何を受け取っているのか、ということが最も重要でもあるのだ。ヘラジカが鳴らす音は聴き手を傍観者にしない。常に気持ちをふわりと浮かばせる。驚くほどあっさりと浮かばせる。

(田中喬史)

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