やはりオウテカはリスナーを愛している。だが同時にあまのじゃくだ。彼らの音楽を語る際、その複雑性ゆえに難しく捉えられること多々。僕もまた難しく捉えるひとりではあるけれど、今年発表された『Oversteps』同様、本作「Move Of Ten」EPも、リスナーを戸惑わせることなく00年代の作品より親しみやすい。つまり、よりポップなのだ。ミニマル・テクノもマントロニクスのようなリズムもカジュアルに着こなしているところがクール。迫ってくるのではなく音の全てが個別に耳に入ってくるシンプル性があり、それが一つひとつの音が持つ表情の豊かさを聴き手がはっきり感じ取れるものとして働いている。
『Oversteps』に比べ、本作はビートが効いた楽曲が並ぶが、ダンス・ミュージックを意識しているオウテカなりの、人を踊らせるリズム、サウンドがある。徐々にビートの弾力を変化させるところや音の質感を変え、ファズを効かせたように歪ませるのも、聴き手を飽きさせたくない、驚きを常に与えたいというリスナーへの愛情として僕は受け取った。特にストリングスで不穏な空気を醸し出したかと思うと、次の瞬間、ぐっと絞られた電子音にスカッとし、協和音も不協和音も躍り出てくる。その瞬間的に移り変わる音色が聴き手の感情を揺さぶり、時に乱れさせ、清々しい音と危険性を感じる音を交互に、または同時に鳴らしてしまうのは彼らのひとつの特徴だ。本作でそれを押し出し、乱れ、踊ることの快楽を与えられることに興奮する。
それはディファ有明で行われたライヴでも窺えた。スリリングでいて馴染みやすく、踊れる。彼らの核にあるものはダンス・ミュージックであると、ライヴを体験し、本作を聴くとより強く感じる。本作「Move Of Ten」EPは、『Oversteps』ほど音そのものの情報量が豊富だとは感じなかったが、ライヴ盤感覚で聴ける作品でもあると思う。
それにしてもメロディを重視した『Oversteps』を発表した後でリズムを強調した本作を短いスパンで発表するところに「僕らはメロディ志向になったわけじゃないんだよ」というメッセージが透けて見える。メロディ、あるいはリズムといった側面だけではなく、あくまでも多面性のある音楽をやりたいしやっているんだ、というオウテカの意志があるのではないか。オウテカは『Oversteps』と「Move Of Ten」EPで、彼らが持つ多面性の中で、メロディとリズムという2面性を分かりやすく提示した。それはオウテカにとって音楽性を整理するという意味もあったのかもしれない。そうだとすれば「人間の脳を刺激したい」と言うオウテカだ。このまま終わるはずがない。むしろ創作意欲は脂ぎっている。まだまだ早いが彼らが次にどうでるのか楽しみだ。それまでの間、『Oversteps』とともに本作「Move Of Ten」EPを楽しもうじゃないか。無論、この作品そのものも格好良い。
オウテカ「ムーヴ・オブ・テン」EP(Warp / Beat) [reviews]
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